機械人形の名
───茜は胸辺りから圧迫される感覚で目を覚ました。
敵襲!? しかも、こんなに近くまで………!!?
油断大敵、見張りのアマルは? 武器は寝袋に入る時、何時も手元に一緒に持っている。
思考の羅列を順次飛ばしながら、茜は意識を覚まし、状況に対応しようとする。
寝る前に作ったテントの中、特にテントの中は荒らされておらず、テントの外側からも特に慌ただしい気配は無し。
であれば、寝起きの勘違いか、と思ったが、意識がしっかりして尚、胸からお腹にかけて重みがあるから勘違いではない。
現に寝袋の私の胸の辺りから膨らんでおり、寝袋からはみ出た所に特徴的な水色の髪がはみ出ており───はみ出ておりーーーー?
「…………」
茜は無言で内側の手を動かして寝袋のジッパーを下げる。
するとぴょこんと水色の髪のアホ毛が飛び出て揺れる。
寝袋の上にいると思ったら、わざわざ服の中にまで入って胸の間に入り込んで眠っているミノムシがいるのを確認し、一度すぅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーと息を吸い、とりあえず自由になった両手を拳の形にして、胸の間にいるミノムシをがんっと拳同士で挟んだ。
男ならとんでもない幸福の形かもしれないが、中にいるミノムシは挟まれた衝撃でぐえーと鳴るのであった。
※※※
アマルは朝になってショボショボしそうになる目を開ける為の珈琲を飲んでいると相棒が不機嫌そうに片手に水色の髪の機械人形の少女を猫の首を掴んで持ち上げる様にしてテントから出てきたのを見てきた。
「何でそんな悪ガキを懲らしめてるみたいな形で現れたの」
「エロガキを懲らしめている形で出てきたからそうなったのよ」
そうなの? という風に水色の髪の少女に視線を向けると本人はくぁ~~と欠伸をするだけであった。
正しく猫のようと思って事情を聴いて、ふぅんと相槌を打ちつつ
「同性且つ子供だからいいじゃない。可愛らしい悪戯と思ったら?」
「私だって同じ寝袋に入るくらいなら言わないわよ! わざわざ服の中にまで入る必要ある!?」
んーーと適当に考えていると横を通り過ぎる少女。
あっ、と茜が自分の手を無意識に見ると何時の間にか茜が掴んでいる物が何故かガチモンの熊の毛皮になって、思わずうわぁ!! と慌てて放り出す光景を視界にとらえつつ、水色の髪の少女はちょこん、と私が作っていた珈琲を勝手にどこかから取り出したマグカップに入れて、その後、マグカップを手で蓋した後、直ぐに手をどけたと思ったら、珈琲がどう見ても珈琲ではなく匂い的にぶどうジュースに変貌した。
それをうまうま、と飲んで空いた片手で袖口に手を差し込んだと思ったら、何故かサンドウィッチが出てきた。
何を言っているのか分からん光景だが、どれも事実である。
「…………何かどうでもいい光景の中に凄い勢いで不思議が多発してる気がするんだけど」
「残念だけど、どれも事実」
結構容易く色んな事をマイペースにかます光景を見る限り、少女は自分の異能は便利なものとして頓着せずに扱っているらしい。
しかし、現状見る限り、異能の正体が分からない。
鎖、十字、そして今、マグカップとかサンドウィッチとか物質創造的な事もしたよね…………
となると少女の異能は昨夜襲撃してきた男のような物質創造と支配系だろうか。
頭で回しつつ、茜と目を合わせ、昨夜は色々と起きたせいで出来なかった事をする為、少女を中心に座り直すと少女は何時の間にか取り出した七輪の上で焼いている鰻の匂いをパタパタとうちわを取り出して攻撃してきた。
「ぐぉっ………! あ、朝っぱらからタレ付き鰻の匂いとかヤッてるわよこの子…………!!」
「見て! 茜! あの子、そのままおにぎりを取り出して醬油をアホ毛が塗り始めた! ───焼きおにぎりまでするみたい!!」
「こ、この世界で何てリッチな朝飯をかますなんて………! 流石100年前ベースの子供………!! というかそのアホ毛動くんかい!!」
もちこーすと言わんばかりにアホ毛が頷く中、少女はくぁ~~と欠伸をして飽きたように攻撃を取りやめた。
ずずーとアホ毛が七輪事、こちらに差し出すので食べてもいいという事らしい。
何て素敵な………!! と頂くね、と少女に改めて言った後に、とんでもない贅沢な物を貰いつつ、いよいよ少女との会話を始めた。
「…………自己紹介、中途半端だったよね。改めて私は白羽茜」
「私、アマル・ティア。一応吸血鬼。貴方は名前、ある?」
すると少女はパチクリと目を開けてこちらを見る。
自然ではあり得ない水色の瞳に、アマルは吸い込まれそうな感覚に陥る自分を感じ取りながらも、やっぱり感想はお目目パッチリして可愛い、という感想が出てくる。
そうして数秒程、時間が経ったか。少女は小さな口を開けて声を形作った。
「───メリッサですよーーう」
思ったより間延びした声と見た目相応の幼い声が耳に響く。
メリッサ、と口の中でその名を転がす。
少女の外見に合わせたであろう名前。
発音や響きを含めて悪くない、と思い、少女の名を受け、笑みで返す。
「花の名前だったよね? 可愛い名前だね」
他意も悪意も無く、素直に言ったら、一瞬、少女が眉を歪めるのを見る。
え? と思うが、次の瞬間、自然の無表情に戻ったので、気のせいかと思い、取り直す。
まず必要な事は茜が喋るべきだと思い、視線を向け、茜もまたそれを受け取り、口を開く。
「あの氷塊の中で聞いてたのかわかんないけど、私達、今あるこの鬱屈とした世界を滅ぼしたいんだよね」
そこはもう救いたいって言えばいいのに変な所で頑固な相棒に対する苦笑を隠すために珈琲を飲む。
自分の工作のお陰で気づかない相棒はそのまま続ける。
「だけど、生憎アマルは結構力あるけど、私はその手の力がない無能状態で、言い方悪いけど、貴方に頼れないか、と思って貴方に会いに来たの」
その言葉と共に今、自分が食べている焼きおにぎりや鰻、七輪等の彼女が取り出した物こそが希望の片鱗だった。
道具とかは昨日の戦闘の事を思えば想定内だったが、食料品まで生産出来るなら破格としか言いようがない。
探せば彼女レベルの規格外の異能者はいるのかもしれないが、私達の目の前にいるのはこの子しかいない。
だから、私達の目的を叶える為ならば、彼女の力は欲しい。が、
「───でも、だからといって強制はしないわ。嫌なんなら近くの集落とか好きな所までは送り届ける」
そこで口から綺麗事を素直に吐き出せるところが、相方の短所であり長所だ。
だからアマルは文句も静止もせずにその言葉を放たせた。
「呑気でーすねー。そこは人間らしくきょーはくだの陰謀ーだのしないんですかー?」
痛烈な指摘に苦笑するしかない。
少女の語る人間観はさしもの茜も返す言葉無い、という風に降参のポーズをとる。
「そういう事をしてきたのが人間っていうのは否定できないね。私はそういう事をしていないからっていう言い訳もしないよ。生きる為に必要になった際、絶対にしない、なんて私には約束出来ない───でもまぁ、今、貴方にしなければいけない理由があるかと言えばNOだからね。それに貴女、強いんだもの。私達がそんなちゃちゃしても一瞬じゃない?」
「それはそーですねー」
間延びした声で一蹴出来ると言われ、私達は苦笑するしかない。
実際、あの戦闘能力を見る限り、私達に勝てる余地はないだろう。
少女の謎の異能の一部である鎖だけで私達は十分薙ぎ払える。
「まぁ、だから貴女に何か返す者も無いのに頼る、なんていう情けない方針くらいしか定まってないの。だから、私達には貴女に何か強制する事は出来ない。だから、素直に聞くね───どうしたい?」
そう聞くと水色の髪の少女はんーーーとこてんと首を倒す。
それでは物足りなかったのか、目の前の大地からせりあがる形でしっかりとした机が現れ、そこに倒れ伏す。
自然な形で起きた奇跡に隣の茜が凄い顔を引き攣らすのが分かったが、私はもうこの子はこういうのなんだな、と思うと諦めがついた。
一応、試しに触ってみたけど、しっかりとした石の感触…………多分、地面の下にあった石を利用せずに0から生み出したのだろうけど。
その気になれば、木材だろうがなんだろうがちょちょいのちょいで作れる筈だ。
………ちょちょいのちょいは聊か死語かなぁ
そんな風に頭を動かしているとんーーと首を傾げていた少女の述懐が述べられる。
「別に力を貸すのは構いませんけどー。でも、それがこーじょーで一人寂しくオートメーションでぽいぽい食料作るとかならやーですよーう」
そんな風に告げられて、ふと想像する。
何故か少女が居座っているベルトコンベアの所だけスポットライトが光る中、ラインに向けて水色の髪の少女が一人ぽいぽいご飯や材料を投げて仕事をしている光景。
「───どう見ても犯罪的だね」
「絵面が終わってしまっている光景よねぇ……」
同じ想像を共有したという事が分かる会話をして、うむ、と少女の反論に頷くしかない。
どこに出しても恥ずかしい幼女虐待風景である。
まぁ、そもそもある程度行き当たりばったりの事だったので、まさか本当にこの子がずば抜けた能力を持っているとはほぼ無いと思っていた所だったのだ。
それがこんな理想的な能力を持っているとなると杜撰な計画を立て直す所から始めるしかない。
何せ、この元日本(国家として機能してない為、元としているだけ)だけでも手を付けて行かないといけない箇所が多過ぎる。
日本を横断するだけでも魔物を相手、あるいは逃走しながらを加えるとどれだけかかるかという話だというのに、世界までとなると流石に手に余る大事業だ。
ひとまずは出来る事からやるしかないのだろう、と思いつつ、そういえば、と茜は感情の籠っていない声で、まるでどうでもいい事を聞くように核心を突いた。
「───メリッサ。やっぱり、貴方が世界を滅ぼしたの?」
※※※
───全ての音が唐突に断ち切られたような感覚。
まるで死後の世界に辿り着いたかのような静寂を感じながらも、茜は質問をした事を後悔していなかった。
何時かは必ず少女に聞かなければいけない内容だった。
それならば、後で拗れるより先に聞くのが今を生きる私達の責務だった。
………憎くないか、と問われて憎くない、なんて綺麗事は言えない。
どうして、私達がこんな生活をしなければいけないのだ、と思った事は二桁三桁で収まるものではない。
………だけど、どんなに頑張っても進んでしまった時間を戻す事だけは出来ない
だから、未練を断ち切る、という意味で茜は聞いた。
少女からは恨みの確認か、と問われてもある種頷く意味で、聞いた。
………数秒しても返事が返ってこない、と思い、少女の方を見ると
「───寝てる!!」
それも鼻提灯付きで!!! と作られた机に台パンかますが、少女が起きる様子はない。
勿論、これが流石に自然の流れ、と思う程、私達は少女の事を知っている、とは言わない。
「…………逃げられたなぁ。まぁ、そりゃ言いたくも思い出したいかも分からない事なんだろうけど」
「私は茜の鋼の心臓に驚くしかないんだけど。言っとくけど、この子がその気になったら、私達、速攻でズタ袋」
ごめんて、とこっちからはそう告げるしかないが、そこはもう本当にどうしようもなかったのだ。
私は臆病だから、途中で起爆するかもしれない爆弾より真っ先に爆発するかどうかを確認する方が安全だと思ったのだ。
最も、その目論見も少女の狸寝入り(あるいはガチ寝入り)によって崩されたが。
「…………でも、ある意味真面目なのかも」
アマルがちょん、と少女の鼻提灯を触ってパンっ、と鼻提灯を割っている光景を見つつ、何が? と目線でアマルに尋ねると
「だって、この子は機械人形でしょ。仮に本当にこの子がやったのだとしても───製作者、あるいは彼女の所有者がやったって言ってもいいじゃない。実際、昨日の男も言ってたじゃない、兵器だって。兵器って事は一番の責任は使用者でしょ?」
「…………確かに。そういう風にもとれるわね」
この子の産まれた理由と私情は置いといて、人間が物を作る際の一番の理由は手段の確保だろう。
それは兵器だろうが、生活必需品であろうと変わらない。
何々をしたい、それを効率良くこなす為の道具が欲しいから作る。
メリッサがとんでもない高性能、高出力の力を持っているという事はそれを目的とした製作者が居たからに他ならない。
あの光景を見た後に、メリッサは平和利用の為に作られた───と言われて信じるのは難しいだろう。
だけど、あの場でも言ったようにその割にはメリッサは愛らしい少女として形作られている。
どうにもそこら辺は矛盾してるよね………?
兵器として造りながら、そこに愛、あるいは願いが込められて造られている。
とは言っても、それが想定外だのおかしいだのと言うにはこんな世界にまで壊れるような出来事があったのだと思えば、幾らでも可能性があるとも言える。
100年前は今では考えられない程の平和だったと言うが、では少女が造られるた時の異常の中心地帯は果たしてどうだったのだろうか。
興味は尽きないが、それを知るにもこんな北の端にいても意味がない。
メリッサに聞けば、それらは本来解決する問題だが、今のように逃げられるというのならば、まだ信用信頼の問題があるという事。
そればかりは時間と行動で埋めるしかない。
某推理小説風に言うならば、今は語る時ではない、というようなものなのだろう。
溜息を吐くが、しかし、人生とはそういうものだろう。
一瞬で全てを片付けれる存在がいるとすれば神様くらいだろう。
なら、当てには出来ない。
神様というのは何時も見る事も頼る事も出来ない存在なのだから
※※※
そうして朝から重たい話を終えた私と茜はテントを戻した後、起きたメリッサに問われた。
「それでーー? 車はどーこにあるんですかー?」
ん? と茜と目を合わせて少女の疑問に首を傾げる。
少女の質問の意図に思わず首まで傾げるが数秒後にようやく理解出来て、あっとお互い声をあげる。
そうだ、余りにも当たり前過ぎて逆にど忘れしていた。
この子の認識は100年前で止まっているのだ、と
あーー、と茜が申し訳なさそうに頭を掻いているのでしょうがないから引き継いで私が答える。
「メリッサ、あのね───車なんて無いの」
一瞬だが、今、少女の表情が物凄く嫌そうな顔に歪むのを見逃してあげれないのが申し訳なかった。
だけど、ここで中途半端な希望を見せる方が残酷だろうと茜も踏ん切りが付いたのか、あのね、と前置きを置いて詳細な事も語る。
「一応言っておくけど、ガソリンだの電力だの、貴方が100年前味わった贅沢は基本当てにしない方がストレスが溜まらない、とだけ伝えるけど……」
更に一瞬、物凄く目が死んだのを見てしまったが、顔芸上手いな……と口から漏れないようにするしか無かった。
一応、語ると文化、文明が全部が全部消えてしまったというわけではない。
場所によってはちゃんと残っている物はあるにはある───逆に言えば無い場所は無いという事である。
そして私達は人生暇しているから世界を滅ぼした機械人形を探しに来るなんていう遊び人である。
そんな二人組がそういった上等な物を持ってないのは多分、どこの時代も一緒のようなもんである。
それらの説明を受けたメリッサはちらりと周りを見回す。
100年経ってちらほらと新しく生まれた木々はしっかりとし、更には雪解けも全然していない為、雪は足首辺りまで普通に沈む。
メリッサみたいな小柄な子だと脛辺りまで沈みそうだから、これはちょっと困ったものかもしれない。
あーー、と茜も気づいたのか、
「この雪でメリッサの体躯だとキツイよね。そうなるとどっちがか背負うしかないか」
「じゃあ、私かな。茜はいざという時、動けないと即死んじゃう貧弱だしね」
「吸血鬼マウント取ってくるんじゃないわよ。というかあんただって死んだらメリッサにグロ画像見せかねない危険性あるでしょうが」
言われてアマルも一瞬、想像する。
唐突な攻撃で顎から上が吹き飛んで少女の顔を血で穢し、舌だけが残る自分の姿。
んーー、否定できないっ、と頷いていると少女が私から数歩下がるのを見て思わずリアクションする。
「だ、大丈夫だよ? ほ、ほら? ───いざという時は血液でグロシーン保護してあげるから!」
「せめて避けてみせる、か防いでみせるくらい言った方がいいんじゃない?」
やかましい、と元凶に雪を蹴飛ばしていると更に少女が引いてしまった。
ああ………やはり吸血鬼は子供受けが難しいのか………!!
「世界は残酷なまでに理不尽………!!」
「世の真理を理解して何よりだけど、とりあえず頑張って樹の後ろまで隠れた幼女をどうにか口説き落としてね」
誰のせいだと………と滾る憤怒と共に今度貧血寸前まで吸ってやろうか、という復讐の計画を立てる。
視線を少女の方に向けるとわざとらしく木の後ろから半分だけ顔を出している無表情面の少女を見て、己の見せ方を分かってらっしゃる………と謎の理解と賛辞を捧げながら、立ち上がる。
致し方なし、恐らく100年前から確立された最強の手段を持って少女の頑なな心を解きほぐそう、と誓い、懐に手を突っ込み
「ほら、ここに乾パン付属の砂糖があるからこっちに来ない? そうそう、可愛いね、お姉さんといい事しようねーー? ほうーらもうちょっと、もうちょっとーー───何、茜? その犯罪者を見る面は」
「そうね………司法が働いていないって事は正義は自分の手で証明しないといけないと理解したからかしら………」
一人勝手に哲学を理解した馬鹿は置いといて、砂糖に釣られて来た少女にあーん、と上げると小さなお口を開けて食べてくれるので色んな意味で溜まらない。
やはり女の子には甘い物が一番効くのだ、と世界に定められた真理に頷き
「───待って。機械人形に砂糖はダメじゃない?」
「……………あ」
相方のもう一つの世界に定められた真理に思わず、ぼやいた単音を脳に響かせる前に少女に勢いよく振り向くと少女はもごもご砂糖を口の中で転がしている光景。可愛い。
じゃなくて
「ご、ごめんメリッサ。ちょっと貴方には悪いかもしれないから、ほらぺっ。ぺっして」
と自分の手を差し出すとメリッサはぷいっと顔を逸らしてイヤー、と反抗を表明する。
何て可愛い事を。
反抗的な娘には躾をっ。これもまた保護者の義務………!
その思いを胸に自分の手指が少女のモチモチ頬っぺたに向かい
「うぉぉぉぉぉぉぉっぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ………!!」
モチモチモチモチモチモチモチモチモチツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンモチモチモチモチモチモチモチモチモチモチモチモチツンツンツンツンモチモチモチモチモチモチモチモチモチモチモチモチツンツンツンツンモチモチモチモチモチモチモチモチモチモチモチモチと狂乱の熱の意識に飲まれるまま、少女の頬っぺたを堪能するのであった。
ふぅぅぅぅーーーーと情熱と共に上昇した熱を吐き出しながらアマルは人生最高の余韻を吐き出した。
「最高のモチモチ肌だった………」
素直な感想の罰は何時の間にか少女の袖から出ている鎖が集めた結構大きな雪の塊を顔面にぶつけられる事であった。
※※※
さらば相棒………と悪が滅びる様に涙(噓泣き)を流していると、天誅を行ったメリッサがとてとてとこちらに歩いてくる。
なんぞ、と思っていると少女は両腕をこっちに差し出すようにして
「おんぶ、よーきゅーですよーう」
と可愛らしい事を言ってきた。
あら素直、と思いつつ、さっきの寸劇を見た後だとこうなるのも止む無し。
アマルはこの素直を引き出す為の犠牲になったのだ………と勝手に解釈して、はいはい、と少女の要求に応える。
少女に背中を向けて膝を付くとひょい、と背中に乗ってくる。
メリッサの膝の裏に手を回し、膝に力を入れて立ち上がるとやっぱり物凄い軽さにおお、と感嘆の吐息を吐き
「あんた、本当に機械人形? 本当は単なる子供じゃないの?」
「じゃあ、さっきのアマルさんはろーや行きでーすねー」
ジョークまで解するとなるともうどこに機械人形という証明があるのやら。
……逆にそういう事かも
肌はぷにぷに、砂糖すら食べ、体も軽い。
もうこの子は機械人形、という認識事態が邪魔でしかない。
なら、今はメリッサという子とゆっくり旅をして、少女の事を知る事こそが案外一番の世界再生への近道なのかもしれない。
まぁ、それに聊か気負い過ぎだ、とも思う。
たった3人で滅んだ世界を救う為に旅をする
字面は綺麗だが、少しばかり何様感を感じる。
世界を救うという名の大義名分を経て、まるで主人公になったような感じ。
これだからあんまり世界を救う、という言い方は好きじゃない。
私のような凡人は精々、世界を滅ぼす、と思っていた方が丁度いいのだ。
世界を背負う重みなんてとんでもない。私には小さな子を背負ってえっちらおっちらと歩くくらいが精一杯である。
だから、壮大な何かをする事に拘らず、目の前の世界に向かって一歩を踏み出す事から始めよう
人生に痛みは付き物だけど、それだけが人生とは言わないのだから。
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