女四宮
この屋敷は、まだ建ったばかりのようだ。床板からはまだ新鮮な木のにおいがする。
「俺がこっそり音楽会やるのに造った場所なんだ。お前もいづれ呼ぶつもりだったよ」
部屋まで案内しながら、浦風に屋敷の概要を説明する三宮。これから職人を呼んで内装も豪華にしていくつもりで、そのうち家族の溜まり場にしたいと話す。
それを聞き、顔をうつ向かせる浦風。三宮と桜の縁談は、いまだに平行線なのだ。
「桜は、私が桜並みの琴の腕を持つ女性を妻にすることを望んでいます。それが実現しない限り、私のそばを離れたくないそうです」
昨日の口論の内容を話す浦風。逐一三宮に報告するのが、彼のせめての礼儀だ。
「なるほどな、桜殿らしよ。しかしそんな女、一人くらいしか知らないぞ」
ため息交じりの三宮。彼は桜を自宅に引き取って嫁にすることに執着している。
「おりました?桜並みに琴の出来る人。まさか紅葉だっていうんじゃないですよね?」
三宮なら言いそうな冗談である。まさか妹を嫁にするわけにはいかない。
「ははっ、さすがにそれは言わんよ。俺が言ってんのは、こっちさ」
そう言って、とある部屋の前で立ち止まり、戸を開ける三宮。そして一言。
「妹よ、浦風を呼んだ。こいつと合奏してくれ」
部屋の中は広いが薄暗い。微かな明かりにより、御簾の中に一人誰かいることがわかる程度である。
「う・ら・か・ぜ?」
そして、御簾の向こう側から微かに女の声がする。透き通った品のある声だ。
「宮中の男じゃ一の琴の使い手だ。ほら、故中納言の忘れ形見。お前と同い年の俺の弟分だ」
「浦風......」
ペラペラと解説する三宮に対し、御簾の向こうの女四宮はしばらく黙り込む。
「さ、三宮様。女四宮様に迷惑ではありませんか?お困りのようですし」
話を聞いていた浦風、身分不相応だと思い立ち去ろうとする。
「か、かもな。すまん、俺から誘っといて」
さすがの三宮も、妹の長い沈黙に耐えられず、浦風の発言に同意する。
「そ、それでは私はここでお暇......」
踵を返す浦風。と、そのとき。
「待って」
ようやく女四宮が口を開ける。
「琴の腕、見せて」
「は、はい。わかりました」
どうやら、浦風と合奏する気になったらしい。女四宮の意向を無視することはできず、部屋の外にある琴を持ち出す浦風。
「気楽にな、お二人さん」
自分の望んだ状況に満足し、二人に最大限の力を出させようと声をかける三宮。
「あなたは自由に弾いて。私が合わせるから」
先導を浦風に任せ、腕を拝見しようとする女四宮。
「かしこまりました」
深呼吸する浦風。
浦風の音色より、合奏が始まった。
彼女が真打ヒロインのつもりです。キャラ付けは苦戦中ですが、頑張ります。
里見レイ




