第二の受難
「紅葉!ちょっといいか?」
家に帰った浦風。早速、妹の紅葉に手紙を渡すべく声をかける。
「兄上、いかがなさいました?」
紅葉は縁側で万葉集を読んでいた。彼女は、暇だといつも何かしらの和歌の本を読んでいる。
「お前に恋文が来ている」
「・・・・・・私に釣り合うお方ですか?」
彼女に恋文の話を持ち掛けると、いつもこの反応。桜とは反対に、自分の容姿と琴の腕に絶大な自信を持っている。
「まあ、それは知らんが・・・・・・弁中将からだ」
「便チュウジョウ?どのような方ですか?」
そして、紅葉も桜並みに世間知らずである。
「ま、読んでみろ。気に入らなかったら俺から断っておく。奴は俺の同僚なのだが、結構強引に頼み込んできた性格のわるーい浮気性のある男で・・・・・・」
ここぞとばかりに日頃の鬱憤を晴らす浦風。ここでなら誰も文句は言わないだろう。
「結婚、お引き受けいたします!!!」
「ま、そりゃそうだろうな。なんせ奴は性格が本当に悪い、ってえっ!受けんの!!?」
弁中将の悪口を言っている最中だから、てっきり断ると思っていた浦風。紅葉の反応に動揺を隠せない。
「いや、何でそうなるの!?」
思わず理由を聞いてしまう浦風。
「だって、こんなにきれいな字で和歌も素晴らしいお方、今まで会ったことないんですもの!」
そう言って、手紙を見せる紅葉。実際に読んでみる浦風。
「・・・・・・確かに、良い文だな」
浦風、渋々納得。これを読んで惚れない女はいないだろう。
「早速お返事を書かねば!!!」
硯を持ち出し、いそいそと筆を進める紅葉。もはや、浦風には何もできない。
「姉様に縁談ですか、兄様?」
ひょっこり現れる、もう一人の妹、桜。
浦風の妹になったのは桜のほうが先なのだが、桜は十六歳、紅葉は十八歳と紅葉のほうが年上なので、桜は「姉様」と呼んでいる。
「ああ、お相手は左大臣の次男坊だ」
「あら!では、次は兄様の縁談を・・・・・・」
「お前のが先だ!!!」
桜に来ている三宮との縁談、三宮は妥協する気がないことを話す浦風。
「兄様が私並みに琴の腕のあるお方と結婚しない限り、私はここを動きません!!!」
「そんな人ほとんどいないんだからな!!!」
昨夜の口論が再び勃発。今はまだ夜ではない。互いの体力は残っているので話は延々と続く。
どのくらい時間が経過したのだろう。
「お返事が来ましたー!!!」
嬉しそうに声を出す紅葉により、二人の口論は中断される。
周りを見ると、完全に真っ暗。いつの間にか夜になっていたようだ。
「で、なんと?」
紅葉がその気なら、結婚を進めようと考え直す浦風、長い口論で息を切らしながら聞いてみる。
「・・・・・・」
無言で手紙を読む紅葉。しばらく時間がたつ。
「どうなんです、姉様?」
桜も、気になって聞いてみる。彼女も、見るからに疲れている。
「うぅ・・・・・・左大臣様が、反対だそうです・・・・・・」
涙目で返事の内容を伝える紅葉。
浦風の受難は、まだまだ続く。
紅葉は夢見るお嬢様みたいなキャラですね。
里見レイ




