こだわりのための破談
なんか、「使命の槍と宿命の刀」よりサクサク進みます。設定解説がいらないからでしょうか?
「桜、もう寝ちゃったか?」
「いいえ、まだです、兄様」
浦風は、三宮が寝に入ったころ、妹のもとに訪れる。先ほどの話を伝えるためだ。
「少し話がある。縁談だ」
浦風も眠いので、さっさと本題に入る。
「あらまあ!兄様もついに!お相手はどなた?」
桜は、かねてより兄浦風が早く結婚するよう望んでいる。浦風に幸せになってほしいからだ。
「いや、お前の縁談なんだが・・・・・・」
いきなり話をそらされかけ、慌てて戻す浦風。
「え、私ですか?捨て子の私に、一体だれが?」
桜が伊勢神宮の支社でスパルタ教育させられたのは、幼いころ両親に捨てられ、イヤイヤ宮司が育てていたからだという。そのように、浦風のもとに来るまで不遇な生活を送っていたせいか、自身の容姿や琴の腕が男性陣の注目を浴びているという自覚がない。
出雲で妹になった紅葉もなのだが、浦風の妹は結構美人で宮中でも隠れて人気がある。
なぜ隠れてかというと、自分より評判の良くて身分の低い女がいることを気に入らない姫君がおり、その父が左大臣なので、下手すると自分が被害に会うからだ。
このようなこともあり、二人とも独身。恋愛に興味のない浦風もまた独身である。
「えーとなあ、三宮様がお前を妻に望んでる」
「・・・・・・」
「三宮様。今日いらした皇位継承二位の三宮様だぞ」
「何、ゆえ?」
桜あまりにもの話に体が硬直。
それもそのはず、三宮は宮中きっての美男子で、女性からの人気がとても高いのだ。
「全部っておっしゃってた」
「私の出自についても?」
「知ってるってさ」
「何番目の妻に?」
「正妻にするって、三宮様も何故か独身だったし」
「兄様は?」
「いいよ。なんせ、三宮様はお前を特別待遇するそうだ」
「ど、どんな?」
桜、次第に今起こっている事を自覚したらしく、頬を赤めながら尋ねる。
「屋敷に引きっとって同居だって。苦労はさせないっておっしゃってたぞ」
この時代、夫婦別居は当たり前。同居するのは、仲の良い正妻くらいだろう。
「同居、ですか?」
「ああ、めでたいな!お前の人生これで一件落ちゃ・・・・・・」
「嫌です」
と、ここにきて桜、いきなりの拒否宣言。
「な、なんで!?」
大きく驚く浦風。この流れで拒否というのは、何がいけないのだろうか。
「兄様が嫁を取られてないのに私が家を出るわけには参りません」
「い、いや。ここで俺の話し出す?」
「出します!今までずっと保護してくださった兄様を見捨てるわけにはいきません!!!」
「あ、いやでもなあ、俺が嫁取ればいいの?」
「兄様を幸せにしてくれるきちんとした立派で、美しくて、一途で、気立ての良く、私並みに音楽の才のある方が奥様になれば私の務めは終わりですからね!」
「いや、嫁くらい別に誰でもいいだろ!まずお前並みの琴の使い手ってほとんどいないってば!!」
「いいえ!これだけは譲れないです!兄様にはそのくらいの方が釣り合うのですから!」
「過大評価だって!第一俺に結婚させる気ある?」
「勿論です!!!」
桜の気持ちに嘘はない。ただ、彼女は世間のレベルを知らない。彼女の基準でいうと、宮中の女のほぼ全てが桜の選考の落ち、浦風の嫁になれないということを理解できないのだ。
このこだわりが、浦風だけでなく桜自身にも災厄をもたらすのだが、これはもう少し先の話である。
テキパキと更新していきたいです。ジャンルの幅広げて、PRできればなあと思ってます。
里見レイ




