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ドヴェルグタウンの現状

 工房の中に入っていく。

 中は今炉を使っているのか、ものすごい熱気が体に纏わりつく。

 三歩歩いただけで汗が尋常ではないほど流れ始めた。


 「くっそ暑いな」

 「ここ人が生きていられる温度を超してるよ」

 「あついのじゃ」

 「死にそうですぅ」


 クラスメイト達も皆暑さにやられる。

 リーシャも普段着ている着物みたいな服装を少し緩めた。

 メルは今にも死にそうだ。

 俺も例外ではなく、少しふらふらしていた。


 「すいませーん」


 すぐにでもこんな場所から出たいため、ドワーフの代表を呼ぶ。

 が、返事はない。

 また呼んでみるがやはり返事がない。


 「もう少し、奥に行ったらいるのか?」


 そう思い、工房の奥へと進んでいくが進むごとに部屋の温度が上がっていってる気がする。

 たぶん、部屋の奥で鍛冶をしているのだ。

 何とか耐えながら進み、角を曲がったところで見つけた。

 たぶん、あれが代表だ。

 一人黙々と鉄を叩き、薄く伸ばしている最中だった。

 そのドワーフの代表がいる部屋、全体が火の色に染められており、もはや息を吸うだけで肺が焼かれるような感覚がした。

 実際、普通の人であれば肺が焼かれてもおかしくないかもしれない。


 「すいませーん」

 「うん?なんだ?」


 鉄の叩く音が止まり、その遮光マスクを付けた顔が辺りを見渡す。

 そして、俺達を見て止まった。


 「はて、幻覚が見え始めたのかのう。ドワーフじゃない種族が一斉に見えるわい」

 「いや、居るんですが」

 「それにここまで来れるとは、ドワーフ以外に居るはずないしのう」

 「いますが」

 「そろそろ儂も限界が来たのかの、引退を考えなくては」


 きりがないので、実在していることを伝えるため近づき肩をぽんと叩いた。


 「おお、まさか実体を伴った幻覚とは。引退確実じゃのう」


 まだ続くのかよ。

 その後も何度も気づかせるために試行錯誤を繰り返し、やっと話を聞いてもらえることとなった。

 場所は移動して、ドワーフの代表の家。


 「いやぁ、すまんかった。まさかあそこまで近くに来られるとは思わんかったでのう」

 「ま、まあ、たぶん私達じゃないと無理でしょうね」

 「それな~」

 「三途の川が見えてたかも~」


 三人娘が言っている通り、俺達かもしくはドワーフじゃないとあそこまではいけないだろう。

 まあ、それでも長くいれば命の危険があったが。


 「ふぉっふぉっ、まあ普通は死んでおるがのう」


 自慢の蓄えたひげを撫でながら、笑みを浮かべる。


 「おお、そういえば名前を聞いておらんかったわい。そちらのお嬢さん方から教えてもらえるかな」

 「あ、え、私から?」


 三人娘から始まり、最後コマチまで全員自己紹介をしていく。

 名前を言うだけなので、そこまで時間も掛からなかった。


 「これまた、不思議な名前もおるのう。そうじゃ、儂はデックじゃ、よろしくの。それでその……お前さんらは何の用でここに来たんじゃ」

 「それが――――」


 これまでの旅で知りえたことを伝えていく、その中で悪魔族を騙った者達について知っていないかを聞いてみた。


 「ほう、そんなことになっとったのか。これはこの国も警戒しといた方がええのう」

 「悪魔族を騙った者達については知りませんか?」

 「うーん、何じゃったかなぁ。そんな者達と会ったような会ってないような」


 必死に思い出してもらったが、やっぱ会ってないという結論に至った。

 ちょっとぼけ気味なので心配だが、その言葉を信じよう。

 そして、ここからが本番となる。


 「それでなんですが、ドワーフの国もガーベラ、ラーマ、マールズと協定を結ばないか?」

 「ふむ、それでそういうメリットがある?」

 「輸出輸入がしやすくなること、もし国が襲われた場合に助けてもらえること」

 「それは両方然りじゃろ、他にメリットは無いのか?」

 「それにドワーフの技術の高さをより分かってもらえるというメリットがある」

 「ほほう、そこを突いてくるかのう。それは我らドワーフにとっては嬉しい限りじゃ」


 なら、と言いかけた時、デックはその言葉を遮り語る。


 「じゃがな、まず無理じゃろうて」

 「何でですか?」

 「ほれ、そこのエルフの嬢ちゃんが問題じゃ」

 「え、私?」


 メルを指さし、デックは言葉を続ける。


 「我らドワーフはエルフを嫌悪してきた。まあ、儂ぐらいの歳の奴はそんなこと気にせんがのう。ただ、若い連中はそうもいかん。今もエルフのことを憎んでいる」

 「なぜ?」

 「誤った教育のせいじゃ」


 デックは今の教育の状況を伝える。

 それは今の日本と同じような義務教育化がなされていることだった。それは制度的にも好評で、若くから知識を持った者達がこの国を大頭し始めたのだ。

 最初は成功だと思った、だがそれも数年すれば少し変容する。


 「一人のエルフ嫌いのドワーフがおっての」


 そのエルフ嫌いのドワーフはこの国随一の博識者だった。

 そのため、教育者として抜擢されるのも時間の問題で、抜擢されてからは数十年教育者として勤め上げて死んでいった。

 教育の賜物は素晴らしく、儂でも知らん技術を使う者達が新しい技術を開発し、より一層この国の技術力の発展する。それは、なんと素晴らしことか。ただ一つを除けば。


 「彼は歴史についても教えておった。エルフとドワーフの戦いもじゃ、それもエルフ側が虐殺、蹂躙を楽しんでいた、という風に脚色されての」

 「私達はそんなことしてません」

 「知っておる。お互い様じゃ、お互い傷つき傷つけあった酷い戦いじゃった」


 当時を思い出すように空を見つめる。


 「おおっと、どこまで話したかのう」

 「国随一の博識者が教育者をしたというところまでです」

 「そうじゃったそうじゃった」


 それでの。

 ドワーフの代表――デックは悲しそうに今の若者について話す。

 ただ聞いたことを信じてしまい、流され周りと合わせ同調しエルフただ一種族を憎む。

 そして、今はその博識者に教えられた者が教鞭を振るっているという状況。

 止めようとしたのだが、すでに遅く、ドワーフの若者全てがエルフを憎んでいる。


 「代表は王ではない。あくまで国の意見をまとめるだけの存在じゃ、若者が多いこの国の総意はエルフにとって良くないものじゃな」


 デックは口を閉じた。

 今の現状、ドワーフの国――ドヴェルグタウンはマールズとは手を結べない。

 それ以上に相対すれば戦火が広がってしまうだろう。

 難しい問題に悩んでいた時、体の中から声が聞こえた。


 『トワ気を付けて、複数名に囲まれてる』


 キリンが教えてくれた通り、近くに魔力を持った者が複数名この家を囲っていた。


 「おい、囲まれている」

 「もう嗅ぎ付けて来おったか」


 デックが呆れた顔で家のドアを見た。

 トントンとノックされる。


 「すいません、デックさん。入ってもいいですか?」

 「今はお客さんが来とるからのう、また今度伺ってくれるかの?」

 「誰が来ているんですか?」

 「外からの来客じゃ。お前さんらには関係ないから帰りなさい」

 「そんっなこと言わないで下さいよっ」


 バコンッ。

 鉄でできた扉が一撃で凹み、吹き飛んでくる。

 それをデックはハンマーを投げて止めた。


 「危ないぞ、最近の若者は礼儀も知らんのか」

 「うるせえんだよ、じじい。そこいエルフがいるのは分かってんだ、今こそ先祖の恨みを晴らすんだよ」


 扉の外から声をかけていた少年とは違う、荒々しい声だ。

 ぞろぞろとドワーフ達が入ってくる。


 「やっぱりいるじゃねぇか」

 「血祭にしようぜ」

 「他にも何人か違う種族もいますね。エルフは死刑確定ですが、その他は私達の奴隷にしましょう」


 さっきノックしていた少年が、このチームのリーダーっぽい。

 先頭に立って囲むように指示している。


 「止めんか、あほども!!いつまで惑わされとるんじゃ」

 「私達は惑わされてはいませんよ。正義の行いをしているのです」


 何を言っても無駄らしい。

 俺達を奴隷にするって言っている時点で、正義の行いかどうか怪しいのだが。

 まあ、彼らにとっては自分達以外どうでもいいのだろう。


 「さあ、我らの力を見せなさい」


 リーダーの掛け声とともに腕に武器が装着される。

 先ほど見た操縦ロボの武器を身にまとっているようだ。

 彼らは負けることなど考えて居なさそうで、もうすでに考えは戦闘が終わった後のことを考えてそう。


 「いけっ!!」


 だが、舐めてもらっちゃあ困る。

 彼らは武装に見合わず身軽な動きで距離を詰めてきた。


 「錬金、スライム」


 宗太が床に垂らした液体が膨らみ大きなスライムへと変化する。

 スライムは俺達を守りながら、彼らの動きを阻害している。


 「俺に任せろ、こんな雑魚すぐに終わらしてやるぜ」


 ドワーフの一人が手に付けた兵器からビームサーベルらしくものを出した。

 そして、スライムを焼き切る。


 「へ、どうだ」

 「さっすがだぜ、次は俺がやってやるよ」


 両手にドリルとパイルバンカーを付けたドワーフがその手をこちらに向けてきた。

 そして、放つ。


 「無駄ですよぉっと」


 ミアがクレイモアで叩き落とした。

 気づけば両手にまたドリルとパイルバンカーが装填されており、また放たれる。

 そして、叩き落とされた。


 「デックさん、少し攻撃してもいいですか?」

 「ああ、お前さんなら手加減もできるじゃろ」


 許可を貰い次は斗和が前へと出る。


 「おい、何か一番弱そうな奴が出てきたぞ」

 「舐めてんのかよ、死ね」


 「キリン、行くぞ」

 『了解!!』


 片手を黒い龍の腕へと変化させる。

 そして――――。


 「なっ」「あだっ」「何が」「ぎえっ」


 片手を一振りして四人分の武装を破壊した。

 彼らいは傷は付いていないはずだ。

 もう一度、手を彼らに向け振る。


 「これで勝負ありだな」


 全員の武装が壊れ床へと落ちた。

 ふー、成功して良かったぁ。

 内心失敗する可能性があったため、成功したのが分かって安心した。

 俺がドワーフ達にやったのは、高速に風の爪を飛ばし武装だけを壊すという離れ業。

 キリンというアドバンテージがあったからこそ出来る芸当だ。


 「くそ、覚えとけよ。次は負けたりしない」


 悪役が負けた時に言いそうなセリフを残して、彼らは走って逃げていった。

 この国にいたら大変そうだ。

 走り去っていく彼らを見て、俺はそう思った。



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