王宮へ
迎賓館を出た俺達は、王宮へと向かう。
ここから王宮までは目と鼻の先だ。
出て右側を向くと見える建物が王宮だとソルは言っている。
「ここら辺にいるかもしれん、探せ!!」
どうも王宮の兵士達はまだ俺達を探しているようだ。
迎賓館の影に隠れ、様子を伺う。
「ここからはまた隠れながら行った方がいいようだ」
「そうですね」
「そうじゃな」
「じゃ、ゆっくり行ってくれ」
ソルはあまり隠れながら進むというのが苦手なようだ。
なので、俺達はソルの速度に合わせながら王宮へと少しずつ進んでいく。
王宮への正門には兵士が二人見張っている。
そして、巡回している兵士が結構な数いるようだ。
今は王城とその横の塀との隙間に隠れているが、見つかるのも時間の問題だろう。
どこか忍び込めるところはないだろうか。
見つかるかもしれないという焦りを感じながら、どこかに潜り込める隙でもないかと見渡してみる。
その時、遠くから爆発する音が聞こえた。
「おい、また捕虜が逃げたらしいぞ」
「またか、次は誰だよ。こっちはまだ見つかってないってのによ」
「まあ、文句言ってないで向かおうぜ、遅れたら隊長に殺されちまう」
そう言って巡回中の兵士達は俺達が来た方向に駆けていった。
どうも、また捕虜が逃げたようだ。
俺達と同じでそんなことする奴がいるんだな。
「今がチャンスじゃないのかのう?」
「確かに!!」
今は王宮に入る門を守る兵士二人しかいない。
二人くらいならばなんとか無力化できる。
すぐさま、全速力で走り兵士達に向かって拳を穿つ。
狙いは顎で、一人は気づかずにそのまま崩れ落ちる。
「なっ」
もう一人もその言葉を言い、意識を失った。
「ナイス、ミア」
「これぐらい楽勝です」
崩れ落ちたもう一人の兵士のそばには自慢げなミアが立っていた。
これで、正門から入ることができる。
音を立てないようにゆっくりと開く。
隙間を開けて中を覗き込むと中ではメイドさん達が走り回っていた。
どうも、結婚式の用意をしているようだ。
「これはまた、うかうかしてられないな」
この中を見つからないように行くには無理だろう。
どうすれば……。
悩んでいると、足の下で伸びている兵士に視線が向かった。
そうだ、兵士に扮したらいいのでは。
すぐさま、兵士の鎧をお借りする。
そして中のエルフ達はそこら辺の草むらに寝かしておく。
まるでどこかでみたことのある傭兵のゲームのようだ。
俺とミアが鎧を着て、兵士達が持っていた手錠をリーシャとソルに取り付ける。
「よし、これでいくぞ」
「なかなか、マニアックなプレイじゃのう」
「そんな冗談はいいから、行こう」
そのまま王宮の中に入っていく。
門を開けて入るとメイドたちがこちらの方を見ていた。
注目を浴びている。
どこかおかしいところがあっただろうか。
「脱走者を連れてこいという命令だったが、王はどこにいる?」
「は、はあ、マールズ王なら衣装室で着替えているはずですが」
「そうか、ではそちらに向かおう」
近くにいたメイドにでたらめなことを言って、マールズ王がいるところを聞いてみる。
メイド達が王の場所を教えてくれたということは、疑っているわけではないようだ。
一応聞いてみたが衣装室ってどこだよ。
王宮にはたくさんの部屋がありそうだ、どこに衣装室があるのかなんて分かるわけがない。
「ソル、お前知らないか?」
「さすがに王宮の中まで知らねぇ」
「まずいな、どうしようか」
聞かれたメイドさんは衣装室に向かおうとしない俺達を見て、納得した顔をした。
「ああ、衣装室は中央階段を上がってから右側の通路を行って、左5番目の部屋です」
「了解した。さあ、行くぞ歩け」
親切なメイドさんの道案内に従ってその部屋の前へと来た。
この中にエルフの王がいるのだ。
緊張する。
噂通りの王なら話をしても無駄だろうが、それでも一回は話をしてみるべきだ。
「誰だ」
ドアをノックすると、部屋の中から若い高い声が聞こえてきた。
その後、誰かがドアに近づいてくる音が聞こえる。
そして、ドアが開けられた。
「何の御用でしょうか?」
「王に話をしに来た」
ドアを開けたのはメイドさんだった。
王に直接仕えているメイドだからなのか、他のメイドよりも容姿が優れていることが見て取れる。
その言葉を聞き、メイドは一旦中へと戻っていった。
少ししてまたドアが開く。
「中へどうぞ」
中へと通される。
中では今着替え終わったのか一人の男性が鏡の前で立っていた。
彼がマールズ王なのだろう。
とても若く見える。
中学生ぐらいだろうか。
「ああ、君たちは捕虜を連れてきてくれたのかな」
鏡に映る自分を見たままこちらを振り向こうともしない。
周りにいるメイドさん三人は手に様々な衣装を持っており、俺達を注目していた。
鏡に映ったマールズ王の顔に笑みが浮かぶ。
「それで僕をだませると思っているのかい?」
それはこちらの正体を分かっているような言い草だった。
いや、分かっている。
ただそれでもマールズ王は鏡を見たままだ。
「それでわざわざここまで来てどうしたのかな?もう、鬼ごっこは終わりかい?」
「話がしたい」
「話をしても意味がないと思うけどなぁ」
そう言い、マールズ王は初めてこちらを向いた。
身長は俺より少し低いので、俺が下に視線を合わせることになる。
それが気に入らないのか、マールズ王は睨んできた。
「それが、王に謁見しようという態度なのかな」
「ああ、すまな――」
さすがに王に対しての態度ではなかったと頭を下げた瞬間、頭に衝撃が走った。
つられている衣装を巻き込みながら部屋の壁に衝突する。
兜を被っていたが、それがへこむほどの衝撃だった。
「これは無礼をした罰ね、ひひ」
よろけながらもなんとか立つ。
結構な威力があり、頭から血が流れていた。
「きっさま――」
「待て、リーシャ、ミアもだ」
すぐさま飛び掛かりそうだったリーシャとミアを止めさせ、今だ笑っている王を見る。
「これで無礼は許してもらえただろうか?」
「まあ、今回はこれで許してあげるよ。で、要件は?」
メイドが用意した椅子にどっかりと座り、話を聞いてくれるようだ。
へこんでしまった兜を脱ぎ、メルのこと他国との戦争のことを話し、やめてもらうように頼む。
「ああ、メルちゃんか。確かに君達の仲間だったようだけど、彼女はエルフだ、どうも不純な血が混ざってしまっているようだけど、それでもエルフの血が流れている場合は僕の所有物だから、君達に渡すことはできない相談だな」
戦争も君達には関係ないし止める気はないよ、とマールズ王は断言する。
どうも説得は難しいようだ。
「そうだ、君達が彼女の仲間ってことは……いいじゃないか、なんて僕はついているんだ」
「?」
その目が怪しく光る。
俺達を見回した後、王は最後に俺の方を見た。
「お前がこのチームのリーダーっぽいな、君にはトリを飾ってもらおうか」
その瞬間、そよ風が頬に当たる。
俺はすでに後方へと回避し、何ともない。
ぎりぎりで避けられた、それはメルのおかげだ。
「メルと同じ風魔法」
それもメルよりか発動が早い。
一歩遅ければまた俺は吹き飛ばされていただろう。
それを見たリーシャ達も戦闘態勢に入った。
「抵抗してくれるんだね。最近は抵抗する人いなかったからやりがいがあるね」
笑いながらマールズ王も戦闘態勢に入ったようだ。
話が通じなかった時点でこうなることは予想できた。
「じゃあ、どんどん行くよー」
戦闘が始まった。




