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マールズ王との戦闘

 風の弾丸が様々な角度で放たれる。

 見えないその弾丸を俺は自分の勘に頼って何とか避けていく。


 「ほれほれほれ~」


 部屋の中にあった衣装などが飛び、部屋が荒れる。

 気にした様子もなくマールズ王は手を弱めることはしなかった。


 「くっ」


 それに加え、こちらの方にメイド達が捕まってくるのだ。

 彼女達の動きは素人そのもので、捕まるわけないのだがそのメイドごと撃ち抜こうとしているため、風の弾丸を弾く必要もあった。

 こいつ、メイドのことを何とも思ってないのか。

 ミア、リーシャ、ソルも何とか避けている状態で誰も反撃できそうにない。


 「こんのっ」


 ミアが背負っていたクレイモアをマールズ王めがけて投げた。

 が、当たる前に弾かれる。

 攻撃だけではなく空気の層も自分の周りに作っているのか。

 これでは近づけたとしても攻撃できるか分からない。


 「ねぇ、もう諦めたら」


 いかにも不服そうな顔をする。

 どうにかこの状況を打破したいのだが、どうすれば……。


 「うん?」


 避けながら、辺りを見ていると風の弾丸が弱まる瞬間があるように見える。

 一体なぜ。

 次に降り注いだ風の弾丸を避けた。

 跳弾しそのまま弱まることなくまたこちらに飛んでくる。

 避ける。

 違う風の弾丸が跳弾してきた。

 避ける。

 そして、風の弾丸が床を跳ねた瞬間、勢いが弱くなった気がした。


 「床か?」

 「どうしたのじゃ?」

 「どうも床に当たった魔法が弱くなっている気がする」

 「ふむ」


 観察していた俺のもとにリーシャが来たので、気づいた点を伝えた。

 床は石材でできており、特に変わった様子はない。

 もしかしたら、俺が知らないだけでこの床の素材が特殊なものである可能性も捨てきれないが。


 「おい、どうすんだよ。これはいつまで続くんだ」


 そういえばソルはよく避けれているな。

 俺でもぎりぎりのところを避けているのに、どうやって避けているんだろう。


 「ソルは逃げた方がいいんじゃないか?」

 「どうせ逃げても兵士に捕まっちまうよ。それに悪魔族はお前たちとは見ている世界が違う。俺にはこの魔法も見えてるから気にすんな」


 まだソルの方は余裕がありそうだ。


 「トワ様、分かったぞ。たぶん服じゃ」

 「服?」


 リーシャは服に当たった風の弾丸が弱まっていると言った。

 床に散らばった服が風の弾丸を弱くしているのか。

 床に落ちている服を一着持ち、マールズ王めがけて投げる。

 そのタイミングでマールズ王の魔法が放たれたが、さっきまでと違い断然遅い。

 これならいける。


 「えー何それ、魔法低減をそんな使い方するの?」


 どうもここにある服全てに魔法低減の効果が付いているらしいので、拾っては投げ拾っては投げを繰り返す。

 服が空気の層に当たった時、空気の層が歪んだのも見えた。

 これなら突破できそうだ。

 皆で服を投げ、死角ができたところで攻撃を繰り出す。


 「どりゃっ」

 「食らうのじゃ」

 「はっ」


 ミアはクレイモアで切りつけ、リーシャは龍撃魔法で圧縮された火の玉を放つ、俺は魔力を拳に込めて殴った。

 服の魔力低減の効果で弱くなっているといっても、破ることはできない。

 あと少しなのだが、まだ火力が足りないようだ。

 マールズ王の顔に焦りを感じない、むしろ笑みを浮かべていた。


 「あ~あ、とんだ期待外れだよ、君達は。まあ、それなりにはいい運動になったし、終わりにしようか」


 風の弾丸が止む。

 マールズ王を囲っていた空気の層も消えているようだ。

 こちらに向かってゆっくりと歩いてくる。


 「君達がとても優しく、お人よしなのかよく分かったよ。でもね、お人よしのままではいけないのさ、そのままじゃ全てを奪われても文句は言えないからね、僕は犠牲を払ってでも叶えたい夢があるからお人よしにはなれないね」


 手が届く位置に来た瞬間、マールズ王の足が消えていた。

 そのまま下から消えていくマールズ王。


 「次に会う時は処刑台の前になるかな、それまでばいばい」


 そして、完全に消えた。

 ここにいたマールズ王は偽物、だった、のか?

 マールズ王が消えた後、メイド達が立ち上がった。

 メイド全員が俺達を囲み、両手を向けてくる。

 その両手には魔法陣が描かれていた。


 「マールズ王に栄光あれ」

 「「「マールズ王に栄光あれ」」」


 「トワ様っ」

 「トワ様だけでも逃げてください」


 両手の魔法陣から煙が噴き出し、辺りを包んでいく。

 リーシャはその魔法陣を見て、すぐさま部屋の壁を壊した。

 そして、示し合わせたかのようにミアが俺を外へと投げ飛ばす。

 力の加減が出来なかったのか、俺は王城の外まで飛ばされた。


 「ミア、リーシャ、ソル!!」


 返事はない。

 何の魔法なのか知らないが、俺はリーシャとミアのおかげで助かった。

 そのまま民家の屋根にぶつかった。


 「がはっ」


 二回ほどバウンドして着地する。

 上から飛んできた俺にエルフの住民は注目していた。

 すぐさま王城に助けに行かなくては。

 立ち上がろうとして、視界がぶれ始める。


 「あ、あれ」


 世界が三重にも四重にもぶれ始め、目の前が黒く染まった。

 どさっ。

 自分の体が地面に倒れる音が聞こえ、意識を失った。






 「助けなくちゃ」


 倒れたトワのところに一人のエルフの青年が近寄ってきた。

 エルフの青年は外套を着ているため、その様子は倒れた人の荷物をはぎ取ろうとしているようにも見える。

 他のエルフの住民達はそれを見るが、私には関係無いと家の中に入ってしまう。

 誰もがあの王に巻き込まれたくはないのだ。

 そのことをエルフの青年は知っているが、それでも悲しくなってくる。


 「あの王に好き勝手させてたまるか」


 ここにはすぐに王の私兵が来るだろう。

 それまでに隠れ家へとこの方を運ばなくてはいけない。

 トワを担ぎ、エルフの青年は歩き出す。

 自分が住んでいる隠れ家へと。








 「ん、んん……う、ここは?」


 目を覚ます。

 知らない部屋だった。

 牢獄ではない、床には絨毯がしかれており、俺はベッドに寝かされている。

 あの殺風景だった牢獄とは大違いだ。

 首を動かし周りを見ると、ここは家の中だということが分かる。しかし、窓が無いため一体ここがどこなのかが分からない。

 立ち上がろうとすると未だに頭がズキズキと痛む。

 だが、こうしている間にも仲間達に危険が迫っているため、休んではいられない。


 「急がなくては」


 ベッドから起き、この部屋で一つしかない扉へとゆっくり歩いていく。

 ドアノブに手を伸ばそうとしたところで、扉が開いた。


 「あ、起きたんだね。良かったよ」


 手にお盆を持ち、その上にはスープが乗っていた。

 警戒する俺に、エルフの青年は気にした様子もなく部屋にあるテーブルにスープを置く。

 こっちを見た。


 「君は外の世界から来たんだよね。人間族であってるかな?」

 「あ、ああ」

 「人間族の勇者が来たっていう情報は本当だったんだ」


 とてもうれしそうに言う目の前のエルフは一体何者なんだ?

 好意からスープを飲んでと木のスプーンを渡される。

 悪いやつには見えない。


 「そのスープに薬草を混ぜてあるから、具合は良くなると思う」

 「急いでいると思うけど、まだ大丈夫、君の仲間はまだ処刑されてないよ」


 落ち着かせるように、目の前のエルフは言った。



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