迎賓館で
ちょっと早めの投稿です。
最近、日常が忙しすぎて前書きも書けない状態が続きました。
読んでくださっている方、ありがとうございます。
非常に励みになっています。
誤字脱字報告をしてくださる方、あなたは私の編集者様です、いつもお世話になっております。
長くなりましたが、どうぞこれからもよろしくお願いします。
庭に逃げることができ、そのままソルの案内で迎賓館へと向かう。
追ってはまだ近くにいる。
「おい、ここが迎賓館で間違いないんだな」
「ああ、そのはずだが」
ゆっくりと扉を開けると鍵はかかっておらず、何の抵抗もなく開いた。
さすがに不用心すぎないだろうか。
中には兵士の姿が見当たらない。
そして、メルの姿も。
「おい、誰もいないようだが」
「俺に言われても知らないよ」
「ここははすれってことですか?」
「そうらしいの」
それにしても誰一人もいないというのはなんだか怪しい。
警戒しながら迎賓館の奥へと進んでいく。
壁には絵画が並べられ、壺や石造が飾られている。
どれもとても高価そうだ。
「ん?」
「どうしたリーシャ?」
「どうやらここは魔法が使えんらしいのう」
そう言われ、俺は試しに魔力を風に変換しようとしてみる。
が、結果は失敗。
ただ魔力が霧散していくだけで魔力を込めることができない。
リーシャが言うには、どうもこの部屋全体に魔法を封じる結界を張っているらしい、まあ確かに他国からの使者による暗躍を防ぐのには妥当なのだろう。
それにこの壁には隙間が無い。
叩いてみるが、空間に響く音がしないことが分かる。
壁も分厚そうだ。
「じゃあ、一体メルはどこに行ったんだ?」
「分からない。もしかしたら、違う場所に囚われている可能性もあるんだけど、ここが一番可能性が高かったんだよな」
「ソルは他に囚われてそうなところとか知ってるのか?」
「知っているには知っているんだが、どれも可能性的にはここより断然低いと思うよ」
他を探すにしても、あまり時間をかけたくないのも事実。
直接聞くために王城え殴りこみに行くというのはやりたくないし、そんなことすれば人間vsエルフの全面戦争勃発の危機だな。
だが、メルをすぐにでも救いたい。
「あら、ここにお客様がまた来られたんですか?」
「!!」
俺達が入ってきた扉と反対の扉からメイド服を来たエルフの女性が入ってきた。
片手には桶と雑巾を持っていたので、どうも掃除している最中なのだろう。
「それにしても最近はお客さんが多いですねぇ、お茶を用意いたしますので少し待ってくださいますか?」
「…………」
俺達は何も言えないまま、メイドさんをそのまま行かせてしまう。
顔を見合わせた。
「えっと、どうする?」
「絶対罠じゃろ」
「罠だと思います、今にも兵士と一緒に突っ込んでくるんじゃないですか?」
「逃げた方がいいだろ」
満場一致で罠であると決定。
無用な戦闘も避けたいところだし、相手は見る限り戦闘に慣れている様子ではない。
一旦戻ることしよう。
「お茶を持ってまいりました」
戻ろうと扉を開けた時、また後ろからあのメイドの声が聞こえてきた。
てか、お茶入れるの早っ!!
まだ1分も経っていないはずだ。
「それだけが取り柄ですから」
「え?」
「ああ、皆さんいつもそんな顔をしますから、同じことをだいたい思っているんだと分かっています」
なんだ、心を読まれたわけではないのか。
そしてやっぱりこのメイドさんが異常だった。
「やはり、あなたたちは脱走者さん達ですか?」
「っ……だとしたら、どうしますか?」
「いえ、どうもしませんよ。逆にどうにかしてほしいぐらいです」
テーブルにお茶を置きながら、何かを思い出すかのように話し出す。
「この国は変わってしまいました、それは悪魔族からの襲撃を受けてからです」
「俺たちはそんなことしてねぇ」
ソルが歯をむき出しにして怒る。
メイドさんはソルを見つめた。
「そうかもしれませんね、その情報ももしかしたら嘘だったのかもしれません」
悪魔族に襲撃されたという話はメルの方にも聞いている。
メルの村は壊滅的な被害えお被ったようだが、ソルの話では悪魔族はそこまで数がおらずそんなことはできないらしい。
矛盾ができてしまう。
そういえば、メフィルは悪魔族と名乗っていたが、ソルは知らないと言っていたことを思いだす。
もしかするとメフィルたちがそんなことをしたのかもしれない。
「しかし、その何者かに襲撃を受けた王国は王が死に、そして第二王子も死去なさった。そして、残ったのは第一王子であるマールズ王子だけ、彼はこの国をどうするおつもりなんでしょう」
「他に王族はいなかったのか?」
「私達エルフは長命ですので、あまり生涯で子供をなす文化はありません、多くても3人でしょうか」
じゃあ、その第一王子が今王として国を運営しているというわけか。
そしてそいつがメルを王族にしようとしている。
「じゃあ、メルも王族にしようとしているわけか」
「メル様?ああ、さきほどおられた方ですか」
「さっきいたのか!!どこに行ったんだ」
「結婚式の準備に王城へと向かったはずです」
「結婚式?」
王族になるっていうのは、マールズ王子と結婚するということなのか。
嫌だ、メルとは離れたくない。
俺の我がままかもしれないが、そう思ってしまう。
「今頃、衣装に着替えているはずです」
「急がなくては」
「大丈夫ですよ、結婚式は聞く限りでは今日の夜行われるそうです。まだ猶予はあります」
急かす心をメイドに止められる。
「そのマールズ王子ですが、昔から傍若無人な馬鹿王子と影で言われていました」
メルと結婚するマールズ王子に関して話し出す。
そのマールズという王子が今までしてきた薄暗いことから、その狂った性格まで、聞けば聞くほどメルをそばに置いておきたくはない。
そして、話の中で一番肝心なところはマールズ王子が継承権を持っていなかったことだ。
運が良かったのか、マールズを否定する王と継承権を持っていた第二王子はその悪魔族との闘いにより戦士したとされている。
なのに彼は生きており、自動的に彼が王を継承することになった。
なんともよくできた話だ。
それはこの国でも話されていることだった。
しかし、それは表向きでは話すことはできない、不敬罪で殺されてしまうからだ。
「もしかするとそのマールズ王子ってやつは悪魔族に扮した誰かと手を組んだということか?」
「……」
メイドは声を出さずにじっと見つめてくる。
どうもそうらしい。
そうすると、メルも結構危険な状態だ。
やはり、早めに助けた方がいいかもしれない。
「王子は今、各国との開戦へと準備を進めている」
「勝てるわけがないじゃろ」
「はい、勝てないでしょう。それでも計画を進めているそうです」
「何か秘策とかがあるということですか?」
「そうかもしれません、しかし、争いが増えればそれだけ相手もこちらも死者が増えていきます。それは得策とはとても言えません」
「賛成してるやつは?」
「表向きはみんな賛成しています。マールズ王子に逆らうのが怖いから」
その顔は曇っていた。
とても深刻な事態となっているようだ。
リヒトとの約束があるので、俺もぜひともそれはどうにかしたいところ。
メルも助けて戦争も止める。
一石二鳥ではないか。
「じゃあ、俺達が何とかするよ」
「……」
「信じれないというのは分かるけどな、まあ見ていてくれ。メルも助けて国も救うなんて最高だろ」
メイドはもうそれ以上は話がないのか、小さくそうですねとつぶやきお茶を片付ける。
さも誰もいなかったかのように。
「独り言が過ぎました。そういえば前のお客様はトワ様とおしゃってました、誰かは知りませんがお客様にとって大事な人なのかもしれません」
そう言って、踵を返す。
「教えてくれてありがとう」
俺だけはそれだけ言って元来た扉を開け外へと出た。
それをメイドである彼女は見届ける。
全員が外へと出たのが分かった時、彼女はつぶやいた。
「メルをどうか、よろしくお願いします、勇者様」
祈るようにそっと。




