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第二十一話(Scandium):産業革命の狼煙

柚紀たちは、科学の勉強会で得た知識を基に、ついにエンジンの製作に着手した。エンジンの開発には、大量の鉄鋼が必要となる。鉄を溶かすためには、1500度近い高温が必要であり、多くの労働力と大規模な生産体制が求められた。


「この異世界に製鉄所を復活させ、産業に革命を起こす!たたら製鉄、反射炉を飛び越え、一気に現代の製鉄技術まで駆け上がる!」


柚紀は高らかに宣言した。すぐに商会の主人に手紙を送り、ラボで協議を始めた。


「鉄があれば、エンジンを作ることができる。エンジンがあれば、飛行機も、自動車も、鉄道も、船も、あらゆる乗り物を作ることができるようになる。特に、鉄道を作ることができれば、交通に革命が起こせる!」


柚紀は、エンジンの可能性に胸を躍らせた。そして、エンジンといえど種類が数多くあるが、柚紀はその中でもロケットエンジンを思い浮かべた。ロケットエンジンが開発できれば、宇宙開発も視野に入れることができる。地球からと思われる電波が届いている以上、宇宙望遠鏡や通信衛星があれば、地球を探し、地球に帰れるのかもしれない。それ以前に、地球の人々に異星人の存在を伝えられるかもしれない。それは大発見で、地球の科学も進むだろう。最も、ロケットを制御するために、コンピュータや高度な計算が必要であり、この異世界では不可能に近い。


商会の主人との度重なる話し合いの結果、製鉄所の設置が決まり、多くの職人を雇い、様々な鉄製品を生産することになった。鉄製のアイロンやフライパン、鍋などの調理器具は、人々の生活を豊かにし、鉄道建設は交通革命をもたらす。それに、商会の主人は、電球で大きな利益を上げていて、余裕が溢れていたので、彼らがほぼ全額の資金を出資してくれることになった。


「アルカディア鉄道」は、エルムヴィレッジとアルカディアの首都ダスカスを結ぶ、全長約20kmの鉄道だ。車両には、エンジンで走る「気動車」を採用することになった。この異世界の産業革命は、蒸気機関を飛ばし、エンジンから始まる。


最初のエンジン開発は、ヒューストンの精密な加工技術と、エンジンの専門家であるメガネの知識を組み合わせることで、実現可能となった。


「ヒューストンの精密な加工技術と......そうだ!エンジンの専門家がいるじゃあないか!メガネ、エンジン作りを手伝ってくれ。」


メガネは、久しぶりにエンジンの話を聞き、微笑みを隠せなかった。


その間、サーモンは農業の発展に貢献し、スカーレットとエリンは、科学の勉強会で学んだ知識を広める活動を始めた。


ラボでは、エンジンの設計図が描かれ、金属加工の音が響き渡っていた。柚紀たちは、この異世界に新たな時代を築くため、情熱を燃やしていた。


最初に柚紀たちが作るエンジンは、アメリカ人の魂とも言えるV型8気筒エンジン、通称V8エンジンだ。このエンジンは、多くの自動車に使われていて、パワーに溢れるエンジンだが、この異世界、この文明レベルで作れるかは怪しい。しかし、エンジンや自動車の専門家であるメガネの知識と技術、ヒューストンの加工技術、自分の燃料などに関する化学の知識があれば、実現できないことはないと柚紀は確信していた。


「メガネ、V8エンジンを作るぞ。」


V8エンジンは車好きにとっては魂、DNAとも言える最高傑作のエンジンであり、彼も例外なくV8エンジンには興奮

していた。その興奮が彼の努力を掻き立てた。


柚紀は、良質な燃料を模索していた。この世界にも、良質な油田は見つかっているし、なんならエルムヴィレッチの近くの海岸付近の森林地帯でも原油がたいそう出ているようだ。とにかく柚紀はそこへ行き、原油を回収した。そして、早速、ガラスの実験器具を使って、石油を蒸留し始めた。


V8エンジンの燃料になるガソリンは35~180度の間で加熱すると得られる留分で、炭素数が4~10からなる鎖状の炭化水素化合物の総称だ。この鎖状の化合物をどんどん繋いでいくと、ポリエチレンなどプラスチックにもできる。そして、ガソリンに近いケロシンは、ロケットの燃料にもなっている。そんな最強の燃料が、この異世界にも誕生した。

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