第二十話(Calcium):科学の夜明け
柚紀は、ラボにディアモス、レイリー、スカーレット、ヒューストン、エリンを集め、数日間に渡り科学の勉強会を開いていた。
「……この世界は、原子という目に見えない小さな粒子でできている。原子が結びついて化合物を作り、固体、液体、気体といった状態変化を起こすんだ。」
柚紀は、中学理科のような基礎的な科学知識から熱心に教え始めた。
「……二酸化炭素は、消石灰を溶かした石灰水を白色に濁らせる性質があります。」
「……電気は、原子を構成している電子の流れによって生まれます。電気エネルギーは、運動エネルギーや光エネルギー、熱エネルギーに変換できるんだ。」
柚紀の講義は、彼らの知的好奇心を刺激し、熱心な議論が交わされた。そして、実際に実験をしながら、学習を進めていった。
彼らの学習意欲は凄まじく、1日目の終わりには簡単な化学反応式を理解し、密度や圧力の計算ができるようになっていた。
「……元々、この世界でも数学の教養は高いようだな。助かる。」
柚紀は、彼らの理解の速さに感心した。
2週間後、彼らは高校化学、物理、生物のレベルにまで達した。有機化合物、遺伝子、微生物、サイフォンの原理など、医療や加工技術に役立つ実践的な知識も習得していった。
「……彼らの学習スピードには驚かされる。これなら、より円滑に実験や研究を進められるだろう。」
「サリチル酸メチルはクメン法で作ったフェノールから......」
(サリチル酸メチルは、地球では湿布として使われてる、鎮痛剤の一種で、柳の葉に含まれるサリシンを分解、酸化してメタノールを反応させることでできるが、現代ではアセチレンガスからベンゼンを合成し、ナトリウムフェノキシドにし、二酸化炭素を高圧で反応させることでサリチル酸を得て、同じようにメタノールを反応させることでサリチル酸メチルを大量生産していた。この反応は、現代では高校化学で習う。)
柚紀は、彼らの成長に安堵した。
彼らは、柚紀の教えを熱心に吸収し、積極的に質問や意見を述べた。
「……先生、この実験で生成された物質は、どのような性質を持つのでしょうか?」
スカーレットは、真剣な眼差しで柚紀に尋ねた。
「……この金属を、この薬品と反応させると、どのような変化が起こるのでしょうか?」
柚紀は、銅や鉄、銀や亜鉛を塩酸や硫酸、硝酸と反応させて、様子を眺めたり、イオン化傾向を確かめたり、両性金属を確かめる実験を行なって、金属やpH、イオン化について学習を進めていった。
「イオン化傾向は、大きい順に、リッチに貸そうかなまあ当てにすんな酷すぎる借金という、面白い覚え方で覚えると覚えやすいです。Liがリチウム、Kがカリウム......」
(イオン化傾向は、金属がどれだけイオン化しやすいかを表す物で、電池やメッキの直接的な仕組みになる。「リッチに貸そうかなまあ当てにすんな酷すぎる借金」はイオン化傾向の大きい方から、リチウム、カリウム、カルシウム、ナトリウム、というようにそれぞれの文字が金属元素を表していてる覚え方である。)
「……この微生物は、どのような環境で増殖するのでしょうか?」
レイリーは、医療への応用を模索していた。
「……この原理を応用すれば、どのような機械を作れるでしょうか?」
エリンは、新たな技術への可能性を感じていた。
柚紀は、彼らの質問に丁寧に答え、彼らの理解を深めた。
「……素晴らしい。君たちは、科学の可能性を広げてくれるだろう。」
柚紀は、彼らの才能に期待を寄せた。
彼らは、柚紀の言葉に勇気づけられ、より一層科学への情熱を燃やした。
「……先生、私たちは、この世界を科学の力で発展させたいと思っています。」
ディアモスは、そう力強く宣言し、まずはレイリーや医師会と人工呼吸装置の開発に着手したいと柚紀に話した。柚紀はディアモスに、初期の人工呼吸装置の原理を伝え、開発を応援した。
こうして、柚紀と仲間たちは、科学の知識を共有し、新たな未来への道を歩み始めた。そして、人工呼吸装置ができれば、この時代では助かるはずのない命を救うことができるようになるだろう。




