第94話 再会&再会
「あら、もう帰って来たの? 思ったよりも早かったわね」
「「「うわ出た」」」
「ちょっと……!?」
学園を出発し、残る1の経験値を稼ぐ為にカードショップへてやって来た俺達。しかし、そこにはどういう訳なのか、レイコ社長が待ち伏せしており――何でこのタイミングで現れたんだよ?
「いえ、タイミングがタイミングでしたし。それとレイコ社長、レベル5のおすすめの食事処ってどこです? 私、今とっても爆食いしたい気分でして」
「あっ、それならアタシも聞きたい! 社長おすすめのブティックとコスメショップってどこよ!?」
「出会い頭にどんな質問よ……と言うか、何でシラスはグラサンに抱えられているの?」
「あー……学園の食料事情を崩壊させない為の処置?」
「不服です」
「本当にどういう事?」
そんな訳で、カードショップのフリースペースにて、これまでの出来事を手短にレイコ社長に説明する事に。
「――企業七騎のゴキョージュに勝った? へえ、やるじゃないの。正直、そこまでやるとは思っていなかったわ」
「アタシもあと少しってところまで追いつめたんだぜ!? ホントにホントにッ!」
「……私はノーコメントで」
「まあ、先生の方は全然本気のデッキじゃなかったけどな。それよりもレイコ社長、ちょいと聞きたい事があるんだが――」
「――待った、諸々の質問は後にしてくれる? 今は一刻も早く、レベル5へ行けるようにしてほしいの」
「あ? おいおい、何だよ急に? 何かあったのか?」
「単刀直入に言っちゃうけど、我が社とスポンサー契約を結んだ他の子達、そろそろレベル5に到達しそうなのよ」
「ほう?」
つまり、他の奴らも相当なレベルアップ速度で進んでいるって訳か。同じ契約仲間として、そいつは心強い――いや、味方なのかは定かじゃねぇか。
「他って、ジャンクとかの事?」
「あの子はクロマと同じバイト待遇だし、まだレベル3も突破していないわよ。スポンサー契約を結んでいるのは、グラサンやシラスみたいな子達の事よ」
「ああ、そっか。そういやアタシ、まだバイト待遇だった……」
「スポンサー契約にバイトだの何だのを持ち出すのも、結構おかしな話だけどな。まあつまるところ、レイコ社長の面子の為にも、さっさとレベルアップしろって事か?」
「理解が早くて助かるわ。社長である私が直々にスカウトしてあげた貴方達が最後だと、色々と収まりが悪いのよね」
不在かと思えば気ままに現れ、勝手な事を仰ってくださるものだ。まあレベルアップを済ますだけなら、それぞれ野良バトルで一戦勝てば良いだけだし、俺らとしてもレベル5へは早く行きたい。シラスとクロマはさっきの理由で、俺はオジキについて知る事ができるからな。
「んじゃ、これ以上の御小言を貰う前にバトルを済ませて来ますかね。お前ら、一回で決めて来いよ? ここで負けたら、変な改善命令を下されるぞ」
「そんな言い方をされるのも癪なんだけど?」
「任せとけって、グラサンとお揃いでゴールしてやるからよ」
「と言いますか、そう言うグラサンこそ負けないでくださいよ? 今のグラサンは最高に調子に乗っている状態ですから、とても心配です」
「別に調子に乗ってなんかいねぇっての」
そう、俺はいつもの調子で野良バトルに挑むのだ――と、もっと反論しておきたいところだが、ここは素直にシラスの忠告を受け入れておくかな。普通のノリでポンポンSRを出して来やがるゴキョージュ先生と違って、まだこのレベル帯の野良バトルはSR1枚を見かけるのも珍しい段階なんだ。それを理由で油断して、調子が狂って負けました――じゃ、笑うに笑えないからな。
ともあれ、転送装置の場所へと移動。そういや表の大会の殆どはレベル5で行われているとか、ゴキョージュ先生がそんな事を言っていたっけ。となるとこの転送装置を使って、今まで俺達は一時的ではあるが、レベル5へ移動していたって事になるのかね? ふーむ、限定的にエリアを移動できるようにするっていう、学園の生徒と同じ原理なんだろうか?
――ガッ。
そんな考え事をしていると、向こう側からやって来た奴とぶつかってしまう。どうやら、向こうもこの転送装置を使おうとしていて、タイミングが被ってしまったようだ。無敵ボディ故にお互い痛みはないが、流石に今のは俺の不注意だったな。
「悪い、ちょっと考え事をしていてよ」
「いえ、私も少しよそ見をしていまして。申し訳――」
「「――ん?」」
その声には、何やら途轍もない聞き覚えがあった。向こうも俺と同じ事を思ったのか、これまた同じタイミングで視線がぶつかる。
「「……」」
ほう、オールバックに眼鏡、そしてパステルカラーの青スーツか。この特徴もまた、凄まじいほどに見覚えがあるな。どことなく性格が鬼畜っぽいし、大変に馴染み深い感じがする。そう、言うなればこいつは――
「――お前、シチサンか!?」
「……そう言うお前は、グラサンで間違いなさそうだな」
レベル2に上がった際にはぐれた、シチサンそのものであった。シチサンとの予想外の再会に、俺驚愕、マジで驚愕。
「えっ、グラサン? わ、本当にグラおじさんじゃん! 何だか久し振りな気がする~」
今度は視界の下の方から、これまた聞き覚えのある声がしたような――と、お決まりの疑問を抱いたところで、キャップと黒髪のポニーテールを発見。なるほどな、お次はそう来たか。
「おいおい、ポニちゃんも居やがったのか?」
もうどんな確率での再会だよ? って感じだが、今度はポニちゃんもといクロポニが登場。どっちもレベル1以来の再会になる訳だが……まさかシチサンとポニちゃん、ここまで一緒に行動していたのか?
「何だ何だ、喧嘩かよ?」
「グラサン、知り合いですか?」
と、混乱の最中にクロマとシラスもやって来る。
「ッ!? ……グラサンてめぇ、レベル2から姿を消したと思えば、事もあろうに女を連れて遊んでいやがったのか? おい、既婚の癖して何やってんだ? 浮気か、あ?」
「ちげぇよ、勝手に勘違いすんなや!」
「ッ! はいはい! アタシはグラサンとデートの約束とかしてるぜ!? これからの可能性は十分あると思う!」
「ほう……!?」
「このタイミングで何を言い出すんだ、クロマてめぇ!?」
確かに服を買う約束はしているが、そういうのじゃねぇだろ! 全然違う、違うから!
「待て、これ以上勘違いする前に言っておくが、こいつらは同じスポンサー企業傘下のカードマスターだ! 断じて、今シチサンが想像しているような関係じゃねぇッ!」
「おい、らしくもなく妙に焦ってるじゃねぇか。本当かよ?」
「んな疑いをかけられたら、誰だって焦るっての……! シチサン、そう言うてめぇだって、何でポニちゃんと一緒に居るんだよ? ニクショクはどうした、ニクショクは? 可愛いの方向性を変えて、ポニちゃんに鞍替えしたのか?」
「んな訳あるか! モフモフさ――ニクショクさんはレベル3で天職に就かれたんだ! 高級焼肉フレイムタン、そことスポンサー契約を結ぶという天職になッ!」
まさかの高級焼肉フレイムタンの再来であった。
「あー、そう言えば最近、フレイムタンに獣人の新しい店員さんが居ましたね。あの方、フレイムタン所属のカードマスターだったんですか」
そして、その事実を密かに知っていたシラス。つかお前、どんなペースでフレイムタンに通ってんだよ? 経費に計上するにしても限度があるだろ?
「無論、俺だってニクショクさんを説得しようとした! 上のレベルに行けば、もっと美味い肉が食えるってな! だが、だけどよ、ニクショクさんの決意は固かったんだ……! う、ううっ~~~……」
レベル3で一体どんなドラマティックな別れがあったのか、シチサンは泣き崩れてしまった。おいおい、キャラが崩壊してんぞ、どうすんだこれ……
「ちょっとちょっと? 同じレイコーポレーション所属のカードマスター同士で、一体何を揉めているのよ?」
「「……は?」」
音もなく現れたレイコ社長が、またとんでもない発言をかましてくれやがった。




