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黒眼のカードマスター ~無頼漢の成り上がり~  作者: 迷井豆腐
レベル4 地下帝国ノームランド
80/328

第79話 SSR

 地鳴りと共に巻き起こる白煙、それはカードの演出の一種なんだろうが、これまで目にしてきた何よりも凝ったものだった。演出までもがレア度相当、しかしグラサンが本当に見たいのは、肝心のカードの内容である。煙のクソ野郎さっさ失せろなどと念じながら、白煙のその先を凝視し続けること少し――漸く望んでいたものが目の前に現れる。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

嚮導鐘塔きょうどうしょうとう・ルミナスベル』

分類:領土 レア度:SSRスーパースペシャルレア

レベル1 白1

レベル2 白2

レベル3 白3

レベル4 白4

レベル5 白5

相手のターン終了時、【天使】の【領主】の防御力が5以上であった場合、

【勝利】カウンターを1増やす。防御力が10以上であった場合は2増やす。

レベル5到達時、【勝利】カウンターを1増やす。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 それは巨大な鐘塔、言わば天辺部分に鐘が取り付けられた塔であった。先に登場した『安寧の大聖堂』をも上回る神々しさ、そして存在感を宿す【領土】である。また、鐘の周囲には10の光の玉が輪になって浮かんでおり、何やら怪し気に点滅を繰り返していた。


「これがSSRのカードか……!」

「その反応、期待にお応えする事ができたようですね。何か質問は? 不明な点があれば、諸々説明しますが」

「ククッ……いや、内容は自分で確認しておく。しっかしSSRの【領土】ともなれば、レベル5まで上げる事ができるんだな? さっきのSRスーパーレアがレベル4と来て、こいつは更に上限が上って訳か」

「ええ、その辺りはエヴァーローズの仕様のようでして、どの【領土】もレアの階級によって上限が変わります。あと、これもちょっとした豆知識なのですが、SSR以上のカードには名前が付くんですよ。このカードの場合、ルミナスベルがそれに当たりますね」

「へえ、なるほどな」


 ゴキョージュのトリビアに耳を傾けつつも、グラサンは『嚮導鐘塔・ルミナスベル』の文面を注視していた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【勝利】

カウンターが10に達した時、あなたはこのゲームに勝利する。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 既定の数に達した時、盤面の戦況を全て無視して【カードマスター】に勝利をもたらす――その名の通り、【勝利】カウンター。要するに、相手のライフポイントを0にするという本来の勝利条件とは、全く異なる勝ち方をルールに追加したのだ。所謂、特殊勝利である。


「攻撃の手を封じてまで防御に特化させたのは、これを狙っての事だったのか。まあ、納得ではある。だが――」

「――だが、些か勝利までの道が遠い。そのように感じられましたか?」

「……まあな」


 トレーディングカードゲームにおいて特殊勝利というものは、達成が困難であるように設定されている事が殆どだ。今回の場合も同様で、防御力が5以上の【領主】を相手ターンが終わるまで維持する、つまりは敵【領主】の攻撃や【戦術】の手から守り通し、10もの【勝利】カウンターを稼がなければならない。防御力が10以上の場合は2増やし、またレベル5に到達した際にもカウンターを増やす事ができるが、だとしても気の長い話である事に変わりはない。最大効率で防御力10以上の【領主】を出し続けられたとして、それでも5ターンが必要となる。これであれば、正面から戦って本来の勝利を目指した方が……と、そう考えるのが普通だろう。


「だが、そんな特殊勝利の為に創意工夫をするのが【カードマスター】ってもんだ。表面上の情報に囚われず、1ターンも無駄にしてやらねぇから、覚悟しておけ」

「グッドです。私も誠心誠意やらせて頂きます。白2の【税】を支払い、『極彩色の天使像』を召喚」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『極彩色の天使像』

分類:領主 レア度:SRスーパーレア コスト:白2 タイプ:天使、ゴーレム

攻撃力0/防御力5

【福音】

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ズドンという重苦しい落下音が轟き、七色の光を放つ巨大な天使像が舞い降りる。


「想像していた通り、防御力5以上の【領主】を出してきたか。しかも――」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【福音】

効果によって破壊されなくなる。ダメージなどの他の影響は受ける。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ――効果による破壊不可、グラサンが扱うカードの中では、『メイドの暗殺者』などが持つ【暗殺】がこれに含まれる。破壊するには戦闘ダメージを通すなどをする必要があり、その鉄壁の防御力も相まって相当に厄介な能力であった。


「私はこれでターンエンドです。さあ、グラサンのターン中に『極彩色の天使像』にダメージを与えないと、【勝利】カウンターが加算されますよ?」

「そこまで親切に説明しなくても分かってるよ。んじゃ、俺のターンを行かせてもらうぜ?」


 とは言え、今はまだ2ターン目だ。コストが2しかない現状ではできる事が限られており、【門番】を持つ防御力4の壁役を倒す事自体が困難である。そこでグラサンが選択したのは――


「ドロー、『悪魔の屋敷』をレベルアップ、追加ドロー。黒2の【税】を使い、『小悪魔メイド』に『メイドの暗殺者』を【継承】召喚!」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『メイドの暗殺者』

分類:領主 レア度:UCアンコモン コスト:黒1無1 タイプ:人間、メイド

攻撃力1/防御力1

【暗殺】【隠密】

【領主】1体を対象とし、1のダメージを与える。

【継承(メイド)】継承した【領主】を+1/+0、【隠密】を付与。

【継承(メイド)】相手【カードマスター】の手札をランダムに1枚【リタイアゾーン】に送る。(new!)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 十八番の【継承】により『小悪魔メイド』とバトンタッチする形で姿を現す、闇に紛れる漆黒のメイド。そんな彼女の登場に、外野からはこんな声が聞こえて来た。


「グラサンさんはミスをしたね。さっきの『小悪魔メイド』でゴキョージュ先生に直接攻撃するのを忘れてしまっている。まあ、どんな人もミスはするって事で――」

「――ハラダシ君、それは違うよー。【門番】が居るから直接攻撃なんてできないし、【領土】の効果でダメージが軽減されるから、攻撃を省いたんだよー」


 ただまあ何とも的外れな声だった為、バトルに影響はなかったのだが。


「『メイドの暗殺者』が場に出た時、【領主】1体に1のダメージを与えるぜ。対象は当然、『極彩色の天使像』だ」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

『極彩色の天使像』 防御力5⇒4

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 更に【継承】の効果により、ゴキョージュの手札がランダムに1枚【リタイアゾーン】へと捨てられる。これでゴキョージュの手札は3枚となった。


「そう、この状況においてはそれが正解です。倒し切らずとも、防御力を5より小さくすれば良いのですから」

「おいおい、ゴキョージュ先生よ。俺は授業を受けに来た訳じゃないんだぜ? これで俺はターンエンド、【勝利】カウンターは動かずってな」

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