第78話 先生VS無頼漢
「静粛に、静粛に。これよりゴキョージュとグラサンの卒業生を見送るバトルショーを始める」
学園長がステージに上がり、開始の挨拶をし始める。それ正式名称なんだとグラサンは苦笑いを浮かべるばかりだが、学園長の持つ厳格さが体育館の空気を支配しているのか、生徒達は大変に真面目な様子で話を耳にしているようだった。
「今日の戦いはプライマルカードによるものではなく、双方が持つ実際のデッキで行われる。言わば、カードマスター本来の実力で戦う訳だ。無論、ゴキョージュの方は幾分力を落としてのデッキになるが……ともあれ、だ。皆の者も本来持っているカードと比較し、自分であればこの場面でこうするなどを考えながら、2人の戦いを観戦してほしい。いずれ皆も外の世界に出る身、そこでも生きていけるよう力を培うのだ」
と、そのような話が一通りされ、いよいよ本日のメインイベントに移行。体育館の中央に用意されたバトル場にグラサン、そしてゴキョージュが立ち、その周りを大勢の生徒達が取り囲む。視線という視線が2人に集中し、皆が今か今かとその時を待ち侘びた。
「改めてよろしくな、ゴキョージュ先生。胸を借りさせてもらうぜ」
「私こそよろしくお願いします。未来を感じさせる、良い対話をしましょう」
「「――バトル!」」
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1ターン目
ゴキョージュ ライフポイント20 手札7
グラサン ライフポイント20 手札7
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コインが指し示したのはゴキョージュ、つまりは彼が先攻であった。
「では、私から。先攻なのでドローは飛ばし、そうですね……うん、まずは『安寧の大聖堂』を置くとしましょう」
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『安寧の大聖堂』
分類:領土 レア度:SR
レベル1 白1
レベル2 白2
レベル3 白3
レベル4 白4
【天使】の【領主】がダメージを受ける際、そのダメージを-1する。
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ゴキョージュが出現させたのは、光溢れる神聖な大聖堂であった。彼の心の内を映し出しているかの如く、厳粛なれど心安らぐ雰囲気が表れている。
「おいおい、初っ端からSRの【領土】かよ。堪んねぇな」
「ポジティブな方向での堪らない、のように聞こえますね」
「ああ、年甲斐もなくワクワクしてっからよ。この先は何で魅せてくれんだ?」
「真っ当にプレイするだけですよ。白の【税】1つを支払い、『平和の使者』を召喚します」
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『平和の使者』
分類:領主 レア度:SR コスト:白1 タイプ:天使
攻撃力0/防御力4
【門番】
この【領主】をコントロールする【カードマスター】は攻撃を宣言できない。
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空から降り注いだ光の柱、その中より純白の翼を広げた天使が現れる。その天使は攻撃力0の非力な【領主】、しかしコスト1の枠に収まらない、異様なカードパワーを有していた。
「ククッ、当然のようにSRなのは良いにしても、コスト1で防御力が4だと……?」
「その代わり、このカードがフィールド上にある限り、私は攻撃を宣言できなくなります。グラサンから攻撃されれば反撃はしますがね。尤もこの【領主】は攻撃力0なので、それも意味のない事ですが……私はこれでターンエンドです」
「……そうかい。俺のターン、ドロー!」
『安寧の大聖堂』によるダメージの軽減、更には縛りを加えてまで防御力をアップさせた『平和の使者』の登場、どれもが明らかに守りを意識したカード構成だ。攻撃そのものを主軸にしていたクロマとは、真っ向から反対の戦法と言っても良いだろう。
(白で守りを固め、赤で俺に直接ダメージを与えるのが狙いか? 或いは前線で時間稼ぎをしている間に、何か別の目的を達成しようとしているようにも……)
ならば――手札に視線を落とし、何にせよ有効であろう手を考えるグラサン。
「俺は『悪魔の屋敷』を設置する」
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『悪魔の屋敷』
分類:領土 レア度:R
レベル1 黒1
レベル2 黒2
レベル3 黒3
この領土に【メイド】が召喚された時、デッキからランダムな【メイド】を1枚【リタイアゾーン】に送る。
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「続いて黒1の【税】を使い、『小悪魔メイド』を召喚」
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『小悪魔メイド』
分類:領主 レア度:UC コスト:黒1 タイプ:悪魔、メイド
攻撃力1/防御力1
【継承(メイド)】相手【カードマスター】の手札をランダムに1枚【リタイアゾーン】に送る。
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「出た、アタシを苦しめたメイドちゃんだ!」
「あのカード、気軽に手札を捨てさせてきますからね。こちらに【リタイアゾーン】を活用する術がないと、本当に厄介な事になります」
「ああ、僕も覚えているよ。攻撃力が1しかないからって、ずっと無視していたんだけど……いつの間にか手札がなくなっていたんだよなぁ」
「ハラダシ君、いっつも【カードマスター】一点狙いだもんねー」
と、彼女の登場に外野からそんな声が聞こえてくる。
「ゴキョージュ先生、もう少し生徒の指導を頑張った方が良いんじゃないかい?」
「いやはや、耳が痛い……ですが、そのカードは本当に良いカードですね。相手のデッキコンセプト次第では、致命的な攻撃となり得る」
「ああ、レア度だけでカードの強さは決まらないからな」
「ハハッ、これまた耳が痛い」
「ったく、どんだけ高額なデッキを持ってきたんだよ? まあいい、『悪魔の屋敷』に【メイド】が召喚された事で、デッキからランダムな【メイド】カードを1枚【リタイアゾーン】へ移動するぜ。これで俺はターンエンドだ」
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2ターン目
ゴキョージュ ライフポイント20 手札5
『安寧の大聖堂レベル1(白1)』=『平和の使者(0/4)』
グラサン ライフポイント20 手札6
『悪魔の屋敷レベル1(黒1)』=『小悪魔メイド(1/1)』
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白と黒、天使と悪魔、先生と無頼漢、対称的な両者が対峙する事となった1ターン目。静かな立ち上がりだが、同時に期待が募るはじまりとも言える。だが、本当のはじまりは次のターン――そう訴え掛けたのは、他でもないグラサンの直感であった。
「ククッ、嫌な予感と心弾む感情が同時に湧き出て来やがる。なあ、このターンか? このターンに出してくれるのか?」
「はて、何の事やら。ですが、SSRを出すという意味でしたら……ええ、そうですね。期待に応えられるかと」
変わらぬ笑顔を携えるゴキョージュ。しかし、彼の闘争心は灯っている。グラサンの目には、確かにそう映っていた。
「私のターン、ドロー。そして、ここで私が出すのは――『嚮導鐘塔・ルミナスベル』」




