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黒眼のカードマスター ~無頼漢の成り上がり~  作者: 迷井豆腐
レベル4 地下帝国ノームランド
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第69話 嘘

「――って話があってな、1週間後にその対戦相手役をやる事になった。クロマの奴も参加させて良いか?」

「……」


 ゴキョージュとの興味深い話し合いを終えた俺達は、その後プライマルアカデミーを出て街の方へと戻り、レイコ社長を探した。数分もしないうち、すんなりとレイコ社長を発見――と言うのも、シラスと一緒に飲食店のテラス席に居て、そこにとても現実的ではない量の料理が積まれていたから、速攻で見つける事ができたんだ。ゴキョージュの部屋にあった本の塔と良い勝負をしそうだったよ。


「……」

「おい、レイコ社長? ちゃんと聞いているのか?」


 で、無事に合流を果たし、ついさっきの出来事を一通り話したんだが……この通り、レイコ社長は難しい表情を作ったまま、さっきから黙りっ放しだ。何だ、頭でも痛いのか?


「ハァ、仲良くデートしているかと思えば、まさか企業七騎きぎょうななつきに会いに行っていたなんてね……」

「ななな、仲良くデートおおおぉ!?(フッ、そんな風に見えちまったか?)」

「企業七騎……確か、この世界でトップクラスのカードマスター、その上位7人の事ですよね? よく会えましね、グラサン?」

「まあ、そこは俺らのカード運で何とかな。シラスも興味あるのか?」

「んー、正直私はあまり……そんな事よりも、今はただこのキノコステーキを堪能したいです」


 そう言って、鉄板の上に乗った馬鹿デカいキノコの……薄切り? を、ナイフとフォークでカットし、口に運ぶシラス。元々巨大なキノコのようで、薄切りにしても本当のステーキかってくらいの存在感がありやがる。なるほど、これがノームランドの名産って訳か。……少し美味そうじゃねぇか


「俺も食うかな、キノコステーキ」

「えっ、じゃあアタシも!」

「待ちなさい、先に企業七騎周りの話を片付けるから。警備が厳重なプライマルアカデミーに入れた事も驚きだけど、ゴキョージュに会えた上、そんな約束までするなんてね。想定外の事だらけで参ったわ」

「ん? 不味かったか?」

「ううん、むしろ美味い話よ。面倒な事を手伝わされるとはいえ、その報酬となるゴールドは相当なものだし、今の段階でゴキョージュとバトルができるってのは、何よりもの報酬になるわ。レジェンド抜きの調整をかけられたデッキだったとしても、企業七騎とのバトルには莫大な価値がある。何せそれ自体が、この世界では栄誉ある行為のひとつとされているくらいだもの」

「へえ、そんなになのか?」

「そんなによ。まだレベル4の段階だったから、貴方達には教えてなかったけど――」


 レイコ社長がどこからか電卓を取り出し、ポチポチとボタンを押していく。


「――Gでバトルの依頼を出すとすれば、このくらいは最低でもかかるわ」

「……なあ、桁数がおかしいんだが?」


 そこに入力されていた数字は、裏闘技場で何度勝利しようとも、絶対に届かないであろう額であった。今日は金銭感覚がよくバグる日だな、おい。


「そう、今回の出来事はこの数値くらいおかしい事なのよ。それを考えれば、その程度のバイトをするだけでバトルができるなんて、破格も破格よ。グラサン、クロマ、この依頼を絶対にやり遂げなさい。これは貴方達にとって、またとない経験になるわ。今のデッキ構成がバレたところで、どうせ今後も更新し続けるものだから、大きな問題にはならないでしょ」


 そんな訳で、レイコ社長からの了承を得る事に成功。あとは当日に備えるだけとなった。


「ところで、ゴキョージュからは何か聞かれなかったの? 貴方達――と言うよりも、グラサンに関心がある様子だったんでしょ?」

「まあ、オジョー繋がりで興味を持たれた感じだったな。ただ、さっきの話以外のところで聞かれた事は特になかった。不思議に思って確認したんだが、ゴキョージュとしては卒業試験中のバトルが見れれば、それで満足らしい」

「ふぅん? グラサンとオジョーの関係性よりも、カードの実力に興味があるのかしらね」

「ああ、実際ゴキョージュはなかなか見る目のある奴だったぜ? アタシのグラサンに、あそこまでお熱だったとはな」

「お前さんはどんな立場からそれを言ってんだよ……」


 マスク越しにも分かる、このクロマの鼻息の荒さよ。


「プライマルアカデミーと契約して、おまけにその教員までやっている奴だ。これからレベルを上げていく後進のカードマスターに、色々と思うところがあるんじゃねぇの? ゴキョージュの研究室には大量の本があったんだけどよ、それもカードマスターに関するデータばかりだったぜ?」

「あれ? グラサン、あの時に本とか読んでたっけ? コーヒーしか飲んだ記憶がねぇけど……」

「お前さんはそうだろうよ……部屋に入ってから、視界に入った本のタイトルをざっと確認していたんだよ。ほれ、このサングラス越しだと、視線が気にならねぇだろ? レベル1の記録が殆どだったから、多分、プライマルアカデミーのスカウトから送られて来たデータを纏めたもんだろうな。それが部屋を埋め尽くすほどにあった」

「へえ、グラサンも案外目ざといわね。プライマルアカデミーの情報収集能力は有名だけど、その情報全てに目を通しているとなれば……熱心ってレベルではないわね。最早狂気的よ」


 詳しくは覚えていねぇが、この世界にカードマスターが転生してくる数って結構あるんだったか? 俺の時みたいに、1回で100人が転生するにしても――確かに、それ全員のバトルを解析するってのは、大分頭のおかしな話だ。ただ、今俺がしたい話はそこじゃねぇんだよな。


「ちなみになんだが、そのゴキョージュ先生は記憶力も良いみたいでよ、一度注目した情報はずっと忘れないんだと」

「見た目通りの優秀さね。部下に欲しいくらいだわ」

「ああ、だから最後の最後、別れ際にも質問をしてみたんだよ。オジキ・・・ってカードマスターを知らないか、ってな」


 それまで和やかだった空気が一瞬で凍り付き、ここら一帯が絶対零度かってくらいの寒気に襲われる。シラスのナイフとフォークが止まり、クロマも酷く驚いたのか目を見開いている。で、そんな空気を作り出した張本人、レイコ社長様は不敵な笑みを顔に貼り付けていた。それ以上言うなってか? ククッ、嫌だね。


「弱い奴だけじゃなく、強い奴にも興味津々なゴキョージュ先生は覚えていらっしゃったよ。オマケに、その後の動向まで調査済みだった」

「……」

「なあレイコ社長、もう腹を割って話そうや。オジキはレイコーポレーションとスポンサー契約を結んでいるんじゃねぇか? しかも、誰よりも先によ」

「……ったく、企業七騎が絡むと駄目ね。どこまでも予定が狂う」


 その瞬間、クソ重苦しかった空気がフッと軽くなり、寒気もなくなった。


「ええ、そうよ、その通り。オジキはうちの部下がスカウトして、真っ先に契約を結んだカードマスターよ。これで満足?」

「やっぱり知らないフリをしていやがったか。俺も嘘の臭いには敏感な筈なんだが、どうにも騙されちまったぜ……で、どうしてこんな真似を?」

「本人たっての希望よ。その時が来るまで、グラサンとシチサンには自分の情報を伏せておくように、ってね」

「オジキ自身の……?」


 一体どういう事だ? どこかの裏団体の黒幕として糸を引いていて、だからこそ姿を消している――そんな立場であれば、情報を伏せるのにも納得がいった。が、実際はレイコーポレーションの契約カードマスターとして、普通に活動をしている。なら、こんな事をする意味は……クッ、オジキの思考は常人には測れねぇ。尽く常識を覆して、予想の斜め上を地で行くからな……!


「まあ、グラサンがレベル5の本社に来たら、それも説明する予定だったんだけれどね。ああ、もう、まさかこのタイミングでバレるなんて、本っ当に予定外……! オジキの奴、絶対にへそを曲げるわよ?」


 いや、マジで何でだよ?

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