第44話 新パック
レベル1とレベル2に居た頃、まだ俺達は基本となる拡張パックしか購入する事ができなかった。俺の場合は白単色のメイドパックがこれに当たる。このパックから出るカードはどれも扱いやすく、含まれているレアカードも底がまだ見えていない状態である為、俺としてはまだまだ購入を続けていきたいと思っている。つうか、これまでこのパックを買い続けて、カードの種類がダブる事も滅多になかったから、全然集め切れていないのが現状だ。
で、レイコ社長の説明する新パックについてだが、何と一気に4種類も増えるんだそうだ。但し、その4種が一気に購入できる訳ではなく、その中から1種のみ購入できる権限が与えられるようなのだ。要はどのパックをショップに並べるか、自分自身で選ぶ必要があるって訳だな。
「新たに現れるパックはどれも混色のものになるわ。グラサンを例にすると、今までが白単色だったのに対し、白黒、白赤、白緑、白青が選択肢になるって感じね」
「それは……【領土】から出せる【税】の色が限られる分、扱い方が難しくなりそうですね」
「その代わり、混色は単色よりも強力なカードになるってのが定番だな。行き着くところまで行き着くと、5色のカードとかもあるんだろうさ」
「それ、絶対に扱い切れないと思うのですが……」
まあ、普通はそうだろう。最多の色になる分、デッキの構築もそれ専用にしなくてはならない。単色だって運が悪いと、フミタオシみたいに事故を起こす事があるんだ。玄人だって完璧にそのデッキを使いこなすのは難しいだろう。ただ、仮にその力を十全に引き出す事ができるのであれば、オジョーのように――いや、アレは人間業じゃないから、参考にはならねぇか。自分の運を前提とした構築なんて、普通は漫画やアニメの中でしかあり得ねぇ事だからな。
「……今から5色なんて色物について考える必要はねぇさ。それよりも、この選択をどうするかって話だよな、レイコ社長?」
「その通り。ちなみにだけど、色によってもカードの特色に違いが出る事は知っているかしら? あくまで傾向ってレベルだけど、知らないよりは知っておいた方が得よ?」
「あー、何となく掴んではいるかな。天使共に渡された常識とやらにもあったしよ」
「え、そうなんですか? ……あ、本当だ! あった!」
シラス、今更気付いたのか……まあ、仕様書をポンと渡されただけって感じだから、自分から探そうとしない限りピンと来ないもんなぁ。そういう事も割とある。
「良い機会だから、少し復習しておきましょうか。赤は全ての色の中でも特に攻撃的、【速攻】でいきなり【カードマスター】を攻撃したり、能力でダメージを与えるカードが多いわ。相手の【領土】をロックするシラスのデッキとは、ある意味で対照的ね」
「俺が苦手とするタイプでもあるかな。【継承】する前にメイドを消し飛ばしてくるからよ」
「ほう……」
「緑は素の能力値が特に高くて、【領土】を成長させて【税】のアドバンテージを稼いでくる事が多いわね。とにかくでかい、強いのが沢山並ぶってのが一番先にくる印象。気持ち強化系のカードも多いかしら?」
「この前に戦ったフミタオシが正にそんな感じだったな。まあ、あいつはその強さを全然出せてなかったが、やべぇ奴が使えば、あっという間にでかい【領主】が揃い踏みになるぜ?」
「ほほう……」
……さっきからシラスが頷くばかりだが、大丈夫か? こいつみたいなコンロトールデッキだと、相手の特性を理解するのが一番重要だと思うんだが。
「青は全体的にトリッキーな傾向にあるわね。シラスもそうだけど、何らかの妨害効果を働かせたり、他よりもドローが多めにできたりで、戦況を支配しやすいわ。その代わり、【領主】の能力値は控え目かしらね」
「これについてはシラスが一番詳しいんじゃねぇか? 俺の勝手な所感じゃ、戦うのが面倒なイメージだ」
「そうですか、えへへ」
肯定的に受け止められてしまった。
「続けるわよ? 黒は死を連想する色で、破壊されたり使い終わったカードを利用したり、一撃で相手を破壊する【暗殺】、相手のライフを奪う【吸収】なんかが特に多いわね。時には自分の【カードマスター】のライフを削って、強力な能力を働かせる場合もある」
「苦労して出した緑のでか【領主】が、低コストの【暗殺】持ちに即刻破壊される、なんてのはよくある話だな。相手の墓地、エヴァーローズでは【リタイアゾーン】とか言ったか? 自分で使うにしても敵として相手取るにしても、そこも把握しておく必要があるぜ」
「うわ、クソ面倒ですね。私、そんな管理したくないです」
それ、青使って場をロックしていた奴が口にする台詞か?
「最後、グラサンも使っている白ね。この色は所謂バランス型、ダメージを与える、ドローする、強化する等々、広く浅く何でもできるって感じかしら。あえて特徴を言うとすれば、回復効果が他よりも豊富。相手に何をされようとも、しぶとく柔軟に戦う事に長けているわ」
「俺のメイドデッキは若干変則型かもしれねぇが、実際そんな評価に落ち着くかもな。それ以上付け加える事も特にねぇ」
「グラサンはそんな見た目なのに、何でメイドデッキなんです? 癖を拗らせているんですか?」
「あ? メイドさんは真っ当な癖だろうが? 何言っていやがる?」
「ちょっと、今そういう話はどうでも良いから。と言うか、色々面倒そうだから掘り下げないで」
レイコ社長よりストップがかかり、この話題は強制打ち切りとなる。やはり生きて来た世界観が違うと、微妙に認識の違いが生じるらしい。メイドの良さが分からないとは、実に惜しい事だ。
「ったく、手間を取らせないでよね。ともあれ、色の特色については以上よ。混色になれば、それぞれの特色を引き継いだカードが出てくるし、新たな可能性が誕生する事もある」
「今使っている色にどの色を加えれば、最も自分の力となるか……それを考えなきゃならねぇ訳だ」
「ふむむ、今後のカード人生を左右するかもしれない、難しい選択ですね……」
珍しくも難しい表情で悩むシラス。こんなに悩んでいる姿を見るのは、メニューでどの料理にするか迷っている時以来の事だ。……ついさっきあったな、そんな場面。
「ちなみによ、選ぶ前にパックの名前とかは分かるのか?」
「ええ、スタートデッキを選択した時のような形で表示される筈よ。本来はカードショップまで移動する必要があるのだけれど、今回は特別にここで教えてあげるわ。心の準備は良いかしら?」
「おう、いつでもオーケーだ」
「私もご飯がひと段落したので、バッチ来いですよ」
そう答えた俺らの前に、メッセージ画面が表示される。さて、一体どんなパックが一覧に並ぶのやら。
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①攻撃的な格好で敵を圧倒! 怒涛の旗袍メイドパック(白赤)
②清純さ&キュート特化型! 伝統のエルフメイドパック(白緑)
③刺さる奴にはとことん刺さる! 罵倒のクールメイドパック(白青)
④光と闇、そしてメイドの危険な融合! 異端の天使悪魔メイドパック(白黒)
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……何か、思っていたパック名と違うな。完全に予想の斜め上だったわ。




