第31話 運命のじゃんけん
「シラス、お前の世界にじゃんけんはあったか?」
「もちろんです。平等のようで平等でない、微妙に実力差の出る読み合いゲームの事ですよね? 私、結構得意ですよ。何せ1対1なら、勝率は五割です!」
「ククッ、生憎とそれは俺も同じでね。相手がオジョーでもない限り、俺の直感は五分五分の勝利を俺にもたらしてくれる……! よっし、行くぞ!」
「恨みっこなしの!」
「真剣勝負!」
「「じゃーんけーん!」」
「「「「「……」」」」」
バトルのマッチングが決まった後、グラサンとシラスは皆が見守る中でのじゃんけん勝負を始めていた。お題目はどっちがフミタオシと対戦するか、である。ハイテンションであいこを何度も続ける2人のバトル(?)は白熱し、その真剣さはカードバトル中に見せるそれに近いものがあった。双方、それだけ本気でじゃんけんと向き合っている――ようである。
「シャッ! 私の勝ちですッ!」
「くっそぉぉぉ! 負けたぁぁぁ! やっぱ俺、運がねぇぇぇ!」
壮絶なバトル(?)の末、シラスが勝利をもぎ取ったようだ。
『そちらの男性の方は残念でしたわね。貴方が望むのであれば、本日中に似たような相手を見繕って差し上げますが? もちろん、その場合も同じ条件でのハンデ戦となりますが』
「マジか!? チマミレさん、是非ともお願いしたい!」
「ちょっと、また勝手に決めて……ハァ、まあ良いわ。チマミレ、そっちのバトルもハンデを背負わせるのなら、報酬も同じにしときなさいよ」
『フフッ、当然でしてよ。この私の名において、報酬は必ずお支払いしましょう』
約束事も決まり、いよいよハンデ戦へと移行する。幸運にも無効試合で助かったチキンは足元がおぼつかない様子であった為、闘技場のNPC達に担架で運ばれて行った。そして、そんなチキンと入れ替わるようにして、シラスが客席から舞台へと舞い降りる。
「ふと思ったのですが、裏の闘技場はバトル中も観客席からの声が届くのですね」
「ああん? おいおい、んな基本事項も知らないのか~~~? 本当に素人だったってオチ?」
「ええ、素人ですよ? 私、この世界に来てから、まだ数日も過ごしていないので」
「……は?」
何でそんなルーキーがこんなところに? とでも言いた気に、フミタオシがレイコに視線を送る。
「本当の話よ。シラスとグラサンは2日でレベル1を突破したの。レベル2に来たのも昨日の事よ」
「……へ、へへっ、マジかよ? マジでド素人じゃん」
超短時間でレベルアップを果たしたのであれば、実力と運は確かに備わっているのだろう。だが、その分カードは最低限しか揃っておらず、ハンデがある分カードパワーで押し切れる。そう考えたフミタオシは、下品な笑みを浮かべ始めていた。
「おーい、シラス! 俺はそいつと同期になるの嫌だからよ、変なミスで負けてくれるなよー?」
「私からもお願いねー? 万が一もないと思うけれど、私の見る目が疑われちゃうから。あと、別に欲しくもない人材とか要らないからねー?」
「外野から好き勝手な事を……それよりも、これに勝ったら契約ですからね? ちゃんと衣食住の保障をお願いしますね? 特に食を!」
会話ができるのを良い事に、やいのやいのと好き勝手なキャッチボールをしているシラス達。だが、そんな光景もフミタオシには、素人感が満載であるように見えていた。そして、ある事を思いつく。
「なあ、上玉のアンタを殺すのは忍びないからよぉ~~~、俺様が勝ったら経験値の代わりに、アンタが俺の奴隷になるってのはどうだぁ~~~?」
「奴隷? へえ、そういう対価の支払い方もあるのですね。別に構いませんよ。そちらのオーナーさんが許可するのであれば、特に問題ないかと」
『ええ、こちらとしても問題ないわ。では、フミタオシはその経験値の全てを、シラスは人権そのものを賭けの対象とする。それでよろしくて?』
「構わねぇ! へへっ、儲け儲け……!」
「よろしいです。まる」
狙い通り。相手が何も知らないド素人なら、こんな無茶な要求も通る。笑いを継続しつつ、フミタオシは明るい未来に夢を馳せていた。
(これに勝ったら、死ぬよりも酷い苦痛を味わわせるやる……!)
そんなフミタオシの様子に、相も変わらず酒をあおっていたグラサンは――
(あー? あいつ、全然集中できてなくねぇ?)
――心中で呆れていた。何にしろ、バトル開始の時間が迫る。
「「――バトルです(だぁ!)」」
コインが弾かれ、その結果フミタオシの先攻が決定される。手札という名の得物が配布された後、互いにマリガンなしを宣言。先攻となるフミタオシのターンが始まる。
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1ターン目
フミタオシ ライフポイント11 手札7
シラス ライフポイント3 手札7
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「俺のタ~~~ン、手始めに『緑の領土』を置かせてもらうぜぇ? そして緑の【税】1を使い、そこに『カエル森のトード』を召喚だ」
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『カエル森のトード』
分類:領主 レア度:C コスト:緑1 タイプ:トード
攻撃力1/防御力2
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生い茂った草木の中より、子豚ほどの大きさはあろう大ガエルが顔を出す。
「こいつはこれと言った能力を持たないが、1のコストにしては優秀なステータスを持つ【領主】だ。お前のライフが削られないうちに、頑張って倒す事だなぁ? へへへっ、ターンエンドだぁ!」
「ご忠告、どうもです。当然過ぎて全く参考にならないアドバイスですが、何とか腹の足しにしてみたいと思います。私のターン、ドローです」
ギラギラとした目でシラスを見詰めるフミタオシと相反し、シラスは全くフミタオシの方を見ていなかった。どちらかと言えば、フミタオシが出したカエルの方へ視線を送っている感じである。
「『青の領土』を設置、そこから出した青1の【税】を消費して、このカードを使用します」
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『瞬間冷凍』
分類:戦略 レア度:C コスト:青1
【領主】1体を対象に【凍結2】にする。
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「使用したのは『瞬間冷凍』、【領主】1体を【凍結】状態にする【戦略】カードです」
「と、【凍結】だと?」
その文字列を目にした事がなかったフミタオシは、そこへ視線を集中させる。
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【凍結X】
これを持つ【領主】は攻撃を行う事ができない。
自分のターン終了時、Xを-1する。
Xの数字が0になった時、この状態は解除される。
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「攻撃不可――チッ、時間稼ぎ用の能力かよ!?」
「端的に言えばそうですね。これで貴方のカエルさんは2ターンほど攻撃ができなくなります。あとは……やる事もないので、これでターンエンド。さ、どうぞ」
静かな、と言うよりも凍り付く立ち上がりとなった1ターン目。そんなフィールドの状況と相反して、観客席はいつの間にか満員状態となり、大きくも醜悪な声援が上がっていた。




