第22話 勝利宣言
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6ターン目 【戦場】『バイオハザード発生装置』
グラサン ライフポイント3 手札3
『白の領土レベル3(白3)』=空
『辺境の屋敷レベル2(無2)』=『見習いメイド(2/2)』
『メイド養成教室レベル1(なし)』=『見習いメイド(3/1)』
クロポニ ライフポイント6 手札5 【研究】0
『黒の領土レベル3(黒3)』=『完全抗体の武装者(11/3)』
『バイオ研究所レベル2(無2)』=空
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グラサンのターン開始時、【感染】によりダメージが発生し、片方の『見習いメイド』が破壊されてしまう。全ての要素で圧倒的に不利、だがグラサンはこう言いたげであった。このターンで俺の勝ちだ、と。
「ポニちゃんよ、確かにお前さんのカードはどれも強力だ。特にそのSRのカードなんて、喉から手が出るくれぇに欲しいと思っちまったよ。けど、そいつを出すのは少し早かったかもな。俺なら、完全に止めを刺せるタイミングで使っていた」
「……僕がミスをしたって言いたいの?」
「まあ、そこまでして未だに生き残っているからな、俺。ポニちゃん、本当はさっきのターンで俺を倒しておきたかったんだろ? 【研究】で『赤色ゾンビ』を生成せず、本当の全ぶっぱをパイルバンカーにつぎ込んでよ」
「……」
グラサンの指摘は当たっていた。先のクロポニのターン、『赤色ゾンビ』を生成していなければ、実に9もの攻撃力がアップ、その結果として『完全抗体の武装者』の攻撃力は13にまで至っていた筈なのだ。【門番】持ちの『屋敷の護り手』に攻撃したとしても、【貫通】により11のダメージをグラサンに与える事できた。初期ライフが10である今バトル、本来であればこのダメージだけで勝利が確定していただろう。が、この時のクロポニにはそれができなかった。
「ポニちゃんの強制【感染】の効果は終始きつかったが、俺の『辺境の屋敷』の回復も地味に効いていたようだ。それがたとえ僅かな回復だったとしても、一気に12ものライフを削るのは至難の業だからな」
『辺境の屋敷』、この【領土】がバトル中にもたらした回復量は、たったの2でしかない。しかし、その僅かなライフポイントの回復が、一撃でグラサンを屠るというクロポニの目算を邪魔立てした。12のライフに対し、打ち出せる最大火力は11――残り1、僅かに1の火力が不足していたのだ。仮に無理にこの攻撃を通せば、このグラサンのターンに残ったメイド2体がクロポニに直接攻撃を行い、現段階でも5ものダメージを受ける事となる。そうなれば、クロポニに残されるライフもまた1だ。しかも、グラサンはそこから6の【税】を新たに使う事ができる。何らかの手段を講じて残るライフを削るなんて事は、容易に想像できるだろう。
「ポニちゃんは攻撃と防御、その間を取って『赤色ゾンビ』を生成し、俺のライフと【領主】を削る選択をする事にした。まあ、それも悪い判断ではねぇだろう。次のターンに確実に俺を倒せるし、残る俺の【領主】も攻撃力が2しかない。自分のライフに4の余裕があれば、このターンは耐える事ができる。そんな風に考えて妥協しちまった。で、その妥協が仇になった訳だ」
グラサンには勝利の道筋が、もうハッキリ見えているようだった。だからこそ、最早迷いは微塵もない。
「さあ、俺のターンだ。ドロー、『辺境の屋敷』をレベルアップ、最後のドロー……ちなみによ、俺の手札には『伝統の古包丁』っつう、【メイド】の攻撃力を2アップさせる【戦略】カードがあるんだよ。初期デッキの状態から複数積んであったから、運が良ければ『見習いメイド』に2枚使うって手もあった。それで攻撃力が6になるからな」
「……あるの?」
「残念な事にさっきのドローを含めても、今の手札には1枚しかねぇんだよな、これが。やっぱ俺、ポニちゃんほど運が良い訳じゃねぇみたいだ」
「ならッ!」
「なら、違う手で勝つしかねぇよな? まず、残った『見習いメイド』でポニちゃんを攻撃だ」
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クロポニ ライフポイント6⇒4
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「クッ……!」
「俺ほどじゃないにしても、瀕死に近いな。焦ってきたかい?」
「まだ、まだ……! この攻撃は僕にくるって、最初から分かっていたもん……!」
「だな。けどよ、次のカードはどうかな?」
「つ、次……?」
「ポニちゃん、勝負の途中で聞いてきたろ? 俺に切り札となるカードがあるのかってよ。ああ、実はあんだよ。この戦況を覆してくれる、頼りになるカードがよ! それが、こいつだッ! 【税】を4つ支払い、『辺境屋敷のメイド長』を『見習いメイド』に【継承】召喚ッ!」
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『辺境屋敷のメイド長』
分類:領主 レア度:R コスト:白2無2 タイプ:人間、メイド
攻撃力3⇒5/防御力3⇒5
相手の【カードマスター】と【領主】の中からランダムに対象を選び、1ダメージを与える。これをゲーム中に自分が行った【継承】の回数分行う。
【継承(メイド)】相手の【カードマスター】と【領主】の中からランダムに対象を選び、2ダメージを与える。
【継承(メイド)】継承した【領主】を+1/+1(new!)
【継承(メイド)】継承した【領主】を+1/+1(new!)
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音もなく現れたのは、凛とした雰囲気のメイドであった。メイドらしくお腹の辺りで軽く手を組み、姿勢正しく直立している――のだが、『メイドの教育係』をも上回るプレッシャーを発しているように思えるのは、果たして気のせいだろうか。ただ、バトンタッチした『見習いメイド』からは、なぜか熱い視線が送られていた。
「これがグラおじさんの切り札――って、この能力は……!」
「気付いたか? この際だからよ、攻撃力だのは無視してくれていい。大事なのは一番上の能力、召喚時にこれまで行った【継承】の回数分、1のダメージをランダムな相手にばら撒くってところだ。ポニちゃん、このゲームが始まってから、俺が何回【継承】を行ったか覚えているかい?」
「え、ええっと……」
「ヒントはポニちゃんのライフポイントと、そこのフルアーマーゾンビの防御力を足した数だ!」
「それ、ヒントじゃなくて勝利宣言じゃん!?」
「ん? ああ、そうとも言うのか? ともあれよ、このバトル中に行った【継承】は7回! さあメイド長、やっちまえ!」
いつの間に取り出していたのか、『辺境屋敷のメイド長』は7本のナイフを地面に突き刺していた。彼女はそれらナイフに鋭い蹴りを浴びせ、シュートするが如くの投擲を開始。1のダメージ、1のダメージ、1のダメージ、1の――その工程をピッタリ7回分やり終えた頃には、クロポニの陣営に【領主】の姿はなく、彼のライフポイントも0になっていた。
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『完全抗体の武装者』 防御力3⇒0 破壊
クロポニ ライフポイント4⇒0
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「――ふう、薄氷の勝利ってやつか? ポニちゃん、良い勝負だったぜ」
新人戦決勝戦、その勝者がグラサンに決まったのは、6ターン目の事だった。




