第21話 パイルバンカー
「まずは『白の領土』に『屋敷の護り手』を召喚! こいつは攻撃の対象を自分に限定する【門番】持ちだぜ!」
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『屋敷の護り手(白の領土)』
分類:領主 レア度:C コスト:白1 タイプ:人間、メイド
攻撃力0⇒1/防御力1⇒2
【門番】
【継承(メイド)】継承した【領主】を+0/+1、【門番】を付与。
【継承(メイド)】継承した【領主】を+1/+1(new!)
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『見習いメイド』とバトンタッチして現れたのは、小さな盾を左手に装着した新たなメイド。金髪で目を引く雰囲気を有しており、自然と視線が彼女の方を向いてしまう。
「お次はまたまた『見習いメイド』だ! 『メイド養成教室』の効果で【継承】時、攻防を更に1強化する!」
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『見習いメイド(メイド養成教室)』
分類:領主 レア度:C コスト:白1 タイプ:人間、メイド
攻撃力1⇒3/防御力1⇒3
【継承(メイド)】継承した【領主】を+1/+1
【継承(メイド)】継承した【領主】を+1/+1(new!)
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再び登場するドジな方の『見習いメイド』。しかし、その強化幅は3体の中で一番を誇り、もう少しで『完全抗体の武装者』にも届くほどであった。
「良いのかな、そんな調子に乗っちゃって? 【研究】がまた2つ増えるよ」
「ククッ、これで合計9だったか? 一体何をしでかしてくれるのか、今から楽しみだよ。俺はこれでターンエンドだ」
「後で吠え面かかないでよね、グラおじさん! 僕のターン、ドロー!」
殆ど崩壊しかけていた陣営を、たった1ターンで【感染】を耐えられるまでに復活させる。クロポニは内心、その手腕に驚いていた。しかし、そのお陰で【研究】が貯まったのもまた事実。現在のグラサンの手札は3枚と心許なく、勝負を仕掛けるには良いタイミング――クロポニはそう踏んでもいた。
「『バイオ研究所』をレベルアップ! もう1回ドローをして……【研究】を3消費、『赤色ゾンビ』を生成するよ! ゾンビを出した分で【研究】も再び1増やす! 攻撃は――」
「――おう、さっきも言ったが、今は【門番】を持つ『屋敷の護り手』が居る。こいつを倒さない限り、俺や他の【領主】には攻撃できないぜ?」
「分かってるよ。だから、その前にこれを装備させるのさ! 僕は5つの【税】全てを使って、このカードを『完全抗体の武装者』に使う!」
「また全ぶっぱかよ!? 好きだな、高コスト――って、こいつは……?」
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『バイオ研究式穿孔機』
分類:戦略 レア度:SR コスト:黒3無2
【アンデッド】の【領主】を対象とし、消費した【研究】分+X/+0
【貫通】を付与。
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「ス、SR、だと……!?」
フルアーマーゾンビである『完全抗体の武装者』の右腕に装着されたのは、巨大なパイルバンカーであった。その圧倒的な威圧感に――と言うよりも、グラサンはその圧倒的なレア度に目を離せない様子だ。
「ふふふん、凄いでしょ? 僕でさえまだこの1枚しか持っていない、SRのカード! もちろん、今日初めてのお披露目だよ!」
「お、お前、俺と同じタイミングでこの世界に来たってのに、自力でそいつをパックから当てたのか? どんだけ運が良いんだよ、おい……!」
俺、パックからはRでさえ出した事がないのに……! と、グラサンは途轍もなく悔しそうだ。
「い、いや、今はそれよりも――」
「――そう、戦況を気にした方が良いだろうね。『バイオ研究式穿孔機』は消費した【研究】の数値分、対象の【領主】の攻撃力を強化する超パワーカード! おまけに戦闘で相手【領主】を倒した超過分のダメージを、カードマスターにそのまま与える【貫通】も付与してくれるんだ!」
「……使う【研究】カウンターは?」
「もち、全ぶっぱの7!」
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『完全抗体の武装者』
分類:領主 レア度:R コスト:黒2無2 タイプ:アンデッド
攻撃力4⇒11/防御力4
この【領主】は【感染】を持たない。
この【領主】は【感染】を持つ【領主】に攻撃されない。
【貫通】(new!)
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全ぶっぱの結果できあがったのは、とんでもない化け物であった。パイルバンカーの内部に発光する青色の液体が満たされた途端、『完全抗体の武装者』は猛々しい叫び声を上げる。【貫通】持ちの攻撃力11、それは誰が見ても脅威でしかなかった。
「超強化された『完全抗体の武装者』で、『屋敷の護り手』を攻撃! パァーイルバァンカァ~~~!」
「ぐぬっ……!」
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『屋敷の護り手』 防御力2⇒0 破壊
『完全抗体の武装者』 防御力4⇒3
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クロポニの号令の下、圧倒的なまでの数字の格差が『屋敷の護り手』に襲い掛かる。彼女は盾でパイルバンカーを受けようとするも、一秒としてそれが持つ事はなかった。それどころか彼女を貫いた余波がグラサンにまで迫り、9もの大ダメージをライフポイントに与える。
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グラサン ライフポイント12⇒3
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痛みは皆無、だがその身に迫った迫力と殺気は本物に近い。訳あってこういった場面に慣れたグラサンでなければ、そのまま吹き飛ばされていた事だろう。
「こいつは……なかなか効くな。寝不足による眠気がすっかり消えちまったぜ」
「グラおじさん、強がりはいけないと思うな~? それに、僕のターンはまだ終わっていないよ。『赤色ゾンビ』で強い方の『見習いメイド』さんに攻撃!」
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『見習いメイド(メイド養成教室)』 防御力3⇒1
『赤色ゾンビ』 防御力1⇒0 破壊
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何とか攻撃に耐える事ができた『見習いメイド』であるが、これで次のターン開始時に【感染】のダメージを受け、破壊される事が確定した。となれば、残るグラサンの【領主】は『辺境の屋敷』に置いている『見習いメイド』のみ。しかし、彼女の攻撃力はたったの2だ。ライフポイントが6もあるクロポニを削り切る事はできないし、『完全抗体の武装者』を破壊する事もできない。いや、そもそも『完全抗体の武装者』は攻撃の対象にできない為、それを選択肢に入れる事も叶わなかった。
「これで僕のターンは終了だよ。さあ、グラおじさんの最後のターンだ」
クロポニは勝利を確信したのか、自信に満ちた笑みを浮かべている。それもその筈、次に自分のターンが回ってくれば、【貫通】持ちの『完全抗体の武装者』が全てを終わらせてくれるからだ。僅かにライフを回復したところで、その攻撃を凌ぐ事は不可能。グラサンの手札の枚数も少なく、この戦況は打破できまいとクロポニは考えていた。そう、グラサンの手札に切り札となるカードでもない限りは。
「ああ、俺の最後のターン――と言うより、このバトル最後のターンだな。行くぜ?」




