第23話 祈り
いや~、決勝戦も何とか勝てたわ。途中、Rを連発された時に絶望しかけたし、SRを出された時は軽く嫉妬したりもしたけど、人間やれば何とかなるもんだな。ポニちゃん、準優勝でもレベル2になれるんだよな? なら、今回はこんな結果で納得してもらいたい。
「……ハァ、負けたぁ~~~。グラおじさん、強そうなのは見た目だけじゃなかったんだね?」
「お前さん、見ただけで何となく強さが分かるとか言ってなかったか? まあ、今回は俺の方が僅かにラッキーだったってところだな。ポニちゃんはパックを剥く段階で運を使い過ぎたんだよ」
「何言ってんの。ゲームの進め方とかカードを出す順番とか、僕のデッキのベストを尽くせたつもりだよ。運とかは何も関係ない。今回のバトル、単純にグラおじさんの実力が上だったってだけさ」
「……ポニちゃん、バトル後の対応まで大人だな。もう少し子供らしく、泣きわめいてくれたって良いんだぜ?」
「それしたら、絵面的にグラおじさんが危なくならない?」
「うん、めっちゃ危ない」
そこにたまたま警察が居たら、職質待ったなしである。
「それにしてもグラおじさん、僕が【研究】でパワーアップさせる事、最初から分かっていたの? 回復量とかあの場面での【門番】とか、緻密に計算し尽くした立ち回りだったけど?」
「ああ、緻密? いやいや、俺にんな器用な事できねぇって。まあ、【研究】を使って後半に何かでかい一撃を出してくるだろうなって予想したのは確かだけどよ、流石に何から何までは読み切ってねぇよ。精々その時までに回復しつつ、場に【領主】を並べ続けてポニちゃんのライフを削れれば良いかなぁ、なんて考えていたくらいだ。最後もメイド長で綺麗に決まったが、アレで決まらないようだったら、『伝統の古包丁』で『見習いメイド』を強化していたし……ともかく、何か事が上手く運んだみてぇだ! クハハハハッ!」
「ええ……」
当てが外れたような顔をするポニちゃんだが、俺にんな事を期待する方が間違っている。それなら、まだシチサンのプレイスタイルの方がそれらし――いや、あいつはあいつでよくパワープレイをするからな。下手をしたら、俺よりも緻密の欠片がないかもしれん。
「「「「「菴輔〒繝昴ル縺。繧?s縺瑚イ?縺代※縺励∪縺」縺溘s縺??橸ス橸ス橸シ?シ」」」」」
「うおっ!?」
バトル明けで気を緩めていた俺の耳に、意味不明な文字列の並んだ大声援がお届けされる。ああ、そうだった。不正防止の為なのか戦いに集中させる為なのか、バトル中の闘技場は音が完全に遮断されていたんだった。唐突に防音がなくなるから、毎回驚かされるんだよな、これ。
「新人戦決勝、グラサンの勝利ぃぃぃ! クロポニ、あと一歩及ばず~~~!」
「縺翫>繧ー繝ゥ繧オ繝ウ螟ァ莠コ豌励?縺?◇縺オ縺悶¢繧薙↑?(おいグラサン大人気ねぇぞふざけんな!)」
「縺薙■縺ィ繧峨?繝九■繧?s縺ョ蜆ェ蜍昴↓蟆城▲縺??繝悶ャ繝代@縺ヲ繧薙□縺橸シ?シ(こちとらポニちゃんの優勝に小遣い全ぶっぱしてんだぞ!?)」
「繝昴ル縺。繧?s縲∬誠縺。霎シ縺セ縺ェ縺?〒?橸シ(ポニちゃん、落ち込まないで~!)」
「熱いバトルの影響か、観客席も大変に白熱しておりますッ! あ、いけませんいけません、アウトカースト名物の鉱山バーを投げないでくださいッ! どうせバリアで届かないから無意味だって分かれよノータリン共がよ~~~!」
おかしいな? 全然意味の分からない言葉の筈なのに、その意味が何となく理解できてしまう。つか、物販で観客にも売ってんのか、鉱山バー。
「グラおじさん、またバトルしよ? 今度はもっと大きな舞台でさ。そこで盛大にリベンジしてあげるから!」
「おー、リベンジときたか。……そん時になったら、今よりも大量の激レアカードを持っていそうで怖ぇな」
「グラおじさんがそれ言う?」
「おいこら投げるなって言ってんだろ三下共!? お前ら出禁だ、出禁出禁ッ!」
「「……」」
少々周りが騒がしい幕切れだったが、何とか優勝を確保する事はできた。シチサン達のところへ戻ったら、少しばかり自慢してやるとしますかね。
◇ ◇ ◇
――と、戻ってくる前の俺はそんな気分だったんだが。
「あ、優勝しただ? おいおい、何自慢気な顔になっているんだ、グラサン? 初心者しか出ない新人戦で優勝したからって、一体どうしてそんな態度が取れるんだ? お前は当たり前の事をして、ただ戻って来ただけ、違うか?」
開口一番にこれである。鬼の生まれ変わりか何かか、こいつは?
「俺、お前は絶対に上司にしたくねぇわ」
「俺もお前を部下に持っていたら、絶対に苦労していたと確信している。とまあ冗談はさて置き、だ。お前がそれだけ満ち足りているって事は、相応に強い相手と当たったのか?」
「まあな。つか、昨夜のガキがそうだった」
「ああ、お前がどこからか誘拐してきた、あの――」
「――してねぇよ! てめぇよ、冗談はさっきの段階で全部置いときやがれよ……!?」
こちとら脳の糖分が足りない状態、アンド睡眠不足だったのを思い出してきたタイミングなんだ。つまらないブラックジョークはそろそろ止めてもらいたい。
「すまんすまん、お前の反応が面白くてつい、な? しかし、あんな子供がそんなに強かったのか。少し意外――いや、居るところには居るものだからな、年齢に関係なく異様に強い奴が。創作世界で言うところの、主人公体質とでも呼ぶべきか?」
「創作も何も、現実世界に居ただろうが。まあ、クロポニはまだまだ開花前って感じだったがな。ただ、その段階でも光るもんはやっぱあるもんでよ、バトル中にSRのカードとかも出してきたんだぜ?」
「……は? おい、待て。その子供、俺らと同じタイミングでこの世界に来ていなかったか? あれからまだ1日しか経っていないんだぞ?」
「ククッ、シチサンでもそんな反応をしちまうんだな? さっきの俺と全く同じ反応でウケるわ」
「ウケている場合か!? クッ、新人戦如きでそんな奴が出場しているとは、正直予想外だった! ニクショクさんは大丈夫だろうか……!」
まるで出産に立ち会い中の若旦那のように、腕を組みながらその辺をうろうろ歩き始めるシチサン。何だ、シチサンにしてはやけにオーバーリアクションだと思ったら、ニクショクの心配をしていたのか。
「そういやニクショクの姿がねぇな? あいつも新人戦に参加しに行ったのか」
「ああ、お前と入れ替わる形でな。本当であれば、俺も観客席から応援してやりたいんだが……クッ! 闘技場のある上のエリア、そこへ行く権利のない今は、こうして祈って待ってやる事しかできない! ニクショクさん、どうか頑張って……!」
らしくもなく祈る姿勢となり、懸命な応援を開始するシチサン。いつもながらに拗らせていやがるなぁと、俺は一歩引いたところから見てしまう。いや、だって同類だと思われたくねぇし。
だが、闘技場のあるエリア、か。俺の頭にインプットされた偏った常識知識によれば、それは上のどこかにあるという。大会に参加する時は待機室やらに通され、一時的に移動の制限がなくなるんだったか。で、選手としてではなく観客として参加したいのであれば、そもそもそのエリアに行く権利が必要という――まっ、俺はバトルをする側でいたいから、あんまり関係ねぇかな。
「シチサン、俺はもう眠気がやべぇからよ、先に次のエリアに行ってても良いか?」
「ん? ああ、問題ないぞ。俺もついさっき、レベルアップに必要な経験値は稼いだからな。ニクショクさんが御帰還された後、共にそちらへ移動する予定だ」
「うし、そういう流れか。じゃ、お先に失礼するぜ。また後でな」
「ニクショクさん、頑張って……!」
「……」
祈り続けるシチサンを背に、俺はショップの転送装置へと移動するのであった。




