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 空の公爵も貴公子も、よく鬼と一緒にいられると思った。


「父上は、鬼を信頼している。もう一度狙われることはないだろうと。

 僕は心配だ。ふとしたきっかけで、心変わりするんじゃないかと」


「坊っちゃんが正しいと思う。俺も俺を信用できない」


「そこは否定してくれ」


 神妙にうなずく鬼に、貴公子はため息をついた。


「どんな人物かも知らされず、小さい頃から鬼が隣にいた。ここまで付き合ってきたんだ、行くところまで行くさ」


「なーに、心変わりなんかしない。だって俺は、いい人だからな」


 鬼は、笑っていた。


 やけに疲れた昼食だった。貴公子と鬼と別れた帰り道、聖女はつぶやく。


「いい人って、どんな人だろう……」


 いい人とは。てっきり真っ先に思い浮かぶのは女神かと思ったが、違った。ギーセだ。


 あのとき、俺がドーターに殺されそうになったとき、自らを顧みずに俺を助けた場面が、鮮明に浮かんだ。逆の立場だったら、俺もそうありたいと思っても、見捨てて逃げ出す自分の姿がありありと思い浮かんだ。


 俺と比べれば、育ててくれた家族も、救ってくれた女神も、出会ってきた人はいい人ばかりだ。


「やっぱり、みんなみたいな人だよね、いい人って。私は幸せ者だ」


 嬉しそうに言い放つ聖女に、四人で顔を見合わせた。


「私が聖女様に何を勧めたか、忘れたんですか? 最後まで悩み苦しんだ聖女様こそ、いい人です」


「力を投げ出した私がいい人だなんて、どうかしてる。それに、何もかも私のために言ったことだって、わかってる。そんなあなたに、私は何もしてあげられてないのに」


「私は、別に何もしてほしくありません。ただ聖女様の幸せな毎日を眺めていたいだけなのに、何か勘違いしてませんか」


「そんなこと言われても、納得できるわけない!」


 微笑ましい喧嘩が始まってしまった。


「何を笑ってるんですか! 鉄球さんこそ、いつも鉄球みたいです! そのうち本当に鉄球になっちゃっても知りませんから!」


 何を言われているのだろう。


 フルルは、寒そうに体をさする。


「私がいい人だなんて、悪寒がする」


 女神は、暗い顔を反らす。


「私がいい人だなんて、なんておこがましい……」


 とても気まずい帰り道だった。



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