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「聖女の力を、取り除いてください。お願いします」


 言い切った聖女は、息を吐く。


「聖女じゃない人生を生きたいと思った。後悔するかもしれないけど、今は強くそう思う。

 ……私、間違ってないよね……?」


 消え入りそうな声の聖女は、今にも不安で押しつぶされそうだった。


 その手を、侍女がとる。


「間違っていても、私はいいと思います。どこまでも一緒に間違います。私には、それくらいしかできませんから」


「そんな道連れみたいには、したくないな……。でも、ありがとう」


 手を取り合う二人に、フルルは嬉しそうだ。


「私なら、聖女の力なんかいらない、何か文句あるならぶっ飛ばす。って、終わる話だけど、聖女も侍女もぶっ飛ばせないよね。私と女神の鉄球が、代わりにぶっ飛ばしてあげる」


 それなら俺にもできそうだ。


「それこそ間違っている気がする。でも、ありがとう」


 涙をこぼす聖女は、笑った。


 みんなで見守る中、女神の魔法が聖女にかけられた。美術館の人々を解放したように、あっという間に終わった。


 聖女は、胸に手を当てる。


「実感がないけど、本当にこれで変わったのかな。何でだろう、すごくドキドキする」


 女神が施したのだからもう心配いらないと決まっているが、学園側への事後報告ついでに、検査をさせてもらえないか聞いてみた方がいいだろう。理事の元へ全員で行くことになった。


 感情がないのではと疑わしかった理事だが、聖女が力を失ったと聞くと、さすがに驚愕が漏れ出した。すぐに平静さを取り戻して、俺をにらんだ。


「君を侮っていたようだ。鉄球を振り回すしか能がないと」


 俺を正しく評価していたらしい。


「聖女を失った場合について、考えなかったわけではない。後で検査をするとしても、残念だが、事実なのだろう。君たちを見ればわかる。

 聖女の力が失われたと、公表をしよう。しかし、それを信じるわけにはいかない者が、今後も君を狙うかもしれない」


 聖女の力は、まさに呪いと呼ぶにふさわしかった。


 恐怖に体を強張らせる聖女に、理事は続ける。


「生徒への危害を我々も看過しない。卒業までは、これまで通りの警護を続けよう」


「残ってもいいんですか?」


 理事は、呆れているようにも見えた。


「現存する聖女の薬や、薬から得た資金は、今後も基金として我々が運用していく。我々は決して手放さないだろう。それについて、どう考えている?」


「構いません」


「他にも、これまで我々が得たもの、これから得るものと比べれば、君はいいように利用されたと言っていい。それでも、ここに残りたいと思うか?」


 聖女は、思い出をふり返った。


「……ここに来て、かけがえのないものを得られました。連れてきてくれて、ありがとうございました。これからもよろしくお願いします」


「……あの頃とは、見違えるようだ」


 理事は、呆気にとられていた。



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