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「この魔力は……何事ですか……?」
うろたえる俺に、女神はあくびをした。
異変に気づいた考古学者は、検査を止めて目を開ける。
「どうしました? そちらの方は?」
「あなたが彼に魔力を。目的は何ですか?」
「目的と言われても、魔法の検査をしていただけです。魔力を通して、彼の魔法の才能を調べていました」
「検査の結果は、どうでした?」
考古学者は、はっとした。
「そうでした、聞いてください。あなたには、とてつもない魔法の才能が眠っています。人間の枠を大きく超えて、どれほどなのか計り知れないほどです」
そんな魔法の才能が、俺に。
「魔法を使えるようになれば、きっと歴史に名を残す魔法使いになれます。
そんな魔法使いになれれば、古の魔王にとらわれた美術館の人々を、必ず救い出せます。私も協力するので、力を貸してください」
俺にできるだろうか。まだ実感が何もない。
「時間がかかると思います。それでも諦めず目指しましょう」
話の終わりを、女神は待っていた。
「検査は終わったようですね。では、行きましょう」
「何かあればいつでも私に連絡を。学園を通せば繋がります」
女神にうながされるままついていき、考古学者と別れた。
女神と二人で、あてもなく歩いた。女神がすぐそばにいる。なぜ目覚めたのだろう。
「とめどなく流れてくる魔力が、私を目覚めさせました。
これほどの魔力、あの者はただ者ではありません。気を許さない方がいいと思います」
怪しい考古学者に、今は感謝したい。おかげで女神が目覚めた。
「見たところ、あの日からそれほど月日が経っていないようですね。今度は元気な姿を見られて、安心しました。
彼も、ギーセも元気にしていますか?」
ギーセは、家族のために家族の元へ帰った。そう伝えると、女神は残念そうだった。
「そうですか……。彼のような人が共にいてくれるといいのですが」
会ってほしい人たちがいる。それまでは眠らずに起きていてほしい。
「私が関わっても、余計な影響を与えるだけです」
それは、予言なのだろうか。
「いえ、予言などできません。前も言ったように、私は女神と呼ばれるに値する存在ではありません」
かつて監視者として、ゴーレムと同じ主に仕えた従者だった。
そう言うと、女神は驚いた。
「なぜ、それを」
女神が寝ている間に、いろんな人との出会いがあった。
俺は、女神のような人が誰かと関わって、余計になるとは思えない。きっと相手にとっても、女神本人にとっても、その方がいいと思う。女神は、誰とも関わりたくないと、本当に思っているのだろうか。
「私は……」
女神は、言い淀んだ。答えているようなものだった。




