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聖女と出会って、日常が変わった。将来勉強をするようになると、昔の俺に言っても信じないに違いない。
本も読めるようになった。と言っても児童書だが、それでもたまに分からない部分があって丁度いい。新鮮に感じるからだろうか、読書にはまって、図書館に通うようになった。
図書館は、雰囲気もいい。穏やかな静けさに包まれていて、気も沈むような魂の迷宮とは違い、落ち着く。難しそうな本を読む賢そうな生徒もいて、その一員になった気分を味わうのも悪くない。
俺ほど場違いな人間は、ここにはいるまい。そう思っていたが、負けず劣らない人がいた。
「あっ!」
俺を見つけて声を上げたのは、考古学者だった。
なぜここにいるのか目を疑ったが、そういえば学者と言っていた。学者の格好をしている物好きな冒険者という印象が強かった。
「これでも一応ここの教員です。教員証もこの通り。
おかげさまで、最近はもっぱら学園にいるので、いつか会うと思っていました。あなたたちは、有名な生徒の中でも個性的な人たちですから」
存在を知られてしまっていたようだ。あのときのように俺に用がなくてよかった。
「あの件は休止して、今は別件に携わっています。始まりの勇者と魔王の美術館、というところを知っていますか?」
その美術館なら行ったことがある。
「それなら話が早い。あの封印された人々を解放できないか、研究しています。ここにもその資料を探しにきました。
ちなみにこれは、研究の一環として負った傷でして」
考古学者の手には、包帯が巻かれている。
「あれは厄介だ、おいそれとはいかない。本気を出したのに、ビクともしませんでした」
考古学者は笑った。研究とは、そんな感じでいいものなのだろうか。
「魔法を解ければ何でもいいんです。あれは、特殊な魔法がかけられています。私は魔法が得意な方なので、糸口を見つけられると思ったんですが、全然だめでした。これから苦労しそうですが、諦めません」
羨ましいと思った。魔法を得意だと言えるとは、さすが学園の教員として籍を置ける人だ。
「そういえば、生徒になったそうですね。生徒の育成も教員としての務め、おそらく学園一魔法が得意な私に任せてください。……いやいや、遠慮なさらず」
あまり関わりたくないが、考古学者はその気になってしまった。




