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 聖女は、練習用マリオネットを持ってきた。


 手のひらサイズの小人型マリオネットだ。顔のない簡素な作りで、胸に魔石がはめ込まれ、腰からリードが伸びている。


「よし、やってみる」


 聖女は、小人型マリオネットを机に横たえた。リードを掴む聖女の表情は真剣だ。


 小人型マリオネットの体が、ピクッと反応する。不安定な動きだが、手をついて体を支え、起き上がった。ヨロヨロと立ち上がったかと思ったが、体勢を崩して尻もちをついてしまった。


「まだこの程度だけど、練習の成果を見せたくて」


 恥ずかしそうな聖女に、侍女は感激している。


「いえ、すごいです! 本当に、どれだけすごいことかわかるでしょう、ねえ!」


 はしゃぐ侍女に、クーシーのように絡まれた。


 マリオネットの魔法を使えれば、一生安泰だと言われている。どこでもマリオネット使いの需要があるが、マリオネット使いになれる人は限られている。


 他の魔法より難しいという話だが、何が難しいのだろう。


「二種類の魔法を同時に使い続けなきゃならない。右手で何かをしながら、左手で別の何かをする感じに似ていると思う」


 魔力の操作さえ何の成果もない俺には、想像もつかない。


「二つのマリオネットを同時に使う、ダブルのマリオネット使いもいる。腕を四つ使う感じなのかな、私も想像がつかない。ダブルのさらに上、トリプルの人も世の中にはいるらしいよ」


 腕が六つある人を想像して恐ろしくなった。


 聖女は、小人型マリオネットに体操をさせているが、苦戦している。


「小人型は、繊細な操作の練習になる。人型が一番簡単で、人型から離れるほど難しくなる。自分に近いからかな。

 あんなに大きなドラゴンを、あんなに繊細に動かして、空まで飛んでいたバロートさんが、どれだけすごいか今になってわかった」


 元ドラゴンだからこそだろうか。


 旅を思い出した。また会えるだろうか。本当に貴重な体験と出会いだった。



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