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聖女が熱を出したことに、侍女は自責の念に駆られていた。
「私がもっと気をつけていれば……。無理をしないように止めた方がよかったんでしょうか……」
聖女が体調を崩すほど頑張れたのも、侍女がいたからだ。一緒にクーシーの世話をしていたのに、何も気づかなかった俺こそ落ち度がある。
幸い聖女の容態は深刻ではない。元気になったあと、聖女はまた無理をするのだろうか。
「そうなったら、嫌われてでも止めようと思います」
俺がその役を担わなければならないと、侍女には言わずに心にしまった。
その後、体調が戻った聖女は、俺たちに相談を持ちかけた。
「寝込んでいる間、治ったらどうすればいいか、考えた。負担を減らさなきゃならない。こうやってみんなに迷惑をかけて、心配をかけて、また同じことを繰り返すわけにいかない。
私には、クーシーの世話を止めるか、みんなに負担をかけて続けるかしかない。負担をかけててでも、続けようと思う。こんな私で、ごめんなさい」
俺は、その決断に感謝したいくらいだ。フルル風に言えば、この女神の鉄球様を誰だと思っている、だろうか。唯一の取り柄の体の強さで役に立てるのだから、これほどやりがいのあることはない。
「女神の鉄球様、ありがとう」
聖女は、遠慮がちに笑った。
体に負担のかかる仕事は、俺が代わりにやった。俺のバカ力と尽きることのない体力にかかれば、時間がかかっていた聖女の仕事は、あっという間に終わった。
空いた時間に、聖女は何か別のことを始めた。
「マリオネットの魔法を学ぼうと思って。マリオネットをクーシーの世話に使えれば、負担をかけずにすむから」
マリオネットをモンスターの世話に使う。マリオネットの魔法を使えるほどの人が、モンスターの世話をするのは、本末転倒に思えた。
「そうしたいと思った。変かな?」
聖女がそうしたいなら、俺はついていくだけだ。また無理だけはしないでほしい。
「力仕事は少ないけど、知恵熱を出すかもしれない。でも、女神の鉄球様がいるから大丈夫だよね?」
聖女は、いたずらっぽく笑った。
フルルはなぜ恥ずかしげもなく堂々としていられるのだろう。下手なことを言うものではないと思った。




