54
聖女は、モンスター使いの実習を受けた。
モンスターの世話は、容易ではなかった。クーシーの世話をしたが、毎日滑車が必要なほどの量のエサを与えなければならず、それだけエサ代もかかる。肉食ゆえに臭いがきついフンの掃除をして、尿に汚染された土を掘って入れ替えた。運動不足にならないように広場で遊ばせるのにも、時間と体力を消耗させられた。
それでも怠けず愛情を持って接しなければ、モンスターは懐かない。懐かなければしつけられず、最悪の場合、牙を剥く。
そんなモンスターから、同じ役割の主流に取って代わったのが、マリオネットだ。マリオネットは、モンスターと比べて手入れが圧倒的に楽で、壊れたら修理すればよく、修理ができなくなるまで使い潰したあと、廃棄される。バロートがやっていたように大切に扱えば長持ちするが、そうでなくとも役割を果たせる優れた道具だ。
クーシーの世話をして疲れた体で、他の授業も受け、自習まで続ける聖女は、マリオネット使いの実習に変えた方がいいと思った。けれど、疲れているが生き生きとしている聖女には、言えなかった。
聖女の代わりをするわけにはいかないが、手伝いが必要なときに備えて、俺も聖女とは別のクーシーの世話を体験させてもらった。
初めはクーシーは懐かなかったが、広場で一緒に遊ぶと変わった。物を投げて取ってこさせるなどして、運動させるのが目的だが、物を投げたあと俺も一緒に走って追いかけてみた。
クーシーは、初めは俺の遊び方に戸惑った。いつもなら、物を口に咥えて持って帰るまでが遊びの一セットだが、俺が追いかけてくるからだ。競走だと気づくと、何度も繰り返して夢中になった。
足の速さこそクーシーに譲ったが、体力は俺が勝った。舌を出して速い呼吸をするクーシーは、もう物を投げても追わず、おすわりして体を休めた。仕方ないので拾って戻ってきた俺に、まだ元気なのかと若干引いた目をしていた。
クーシーがモンスター使いの相棒に選ばれる理由は、高い知性と幅広い利便性の他に、優れた嗅覚がある。それらの訓練に付き合わせてもらえることになって、聖女は楽しみにしていた。
しかし当日の朝、異変が起きた。




