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聖女の警護をさせてほしいと理事に申し出た。断られなかったのは、俺が聖女に何もできない人間だと見透かされたからだろう。
俺とフルルは、聖女の居室に近い別室に待機した。
「病に苦しむ人々を見捨てられない。聖女と同じ立場に生まれていたとしたら、私もそう思ったのかな」
自分が聖女と同じ立場だったら。想像もつかない。
「私は、他人を気にして思い詰めたりなんかしない」
俺もフルルと同じだ。
「私とお前は少し違う。私は、聖女も他の人と変わらないと思っている。お前は、聖女を特別だと思っている。それはなぜ?」
なぜだろう。ふと、女神を思い出した。聖女への気持ちは、女神に抱いたものと同じだった。
部屋の扉がノックされる。侍女が部屋に入ってきた。
「新しく来られた警護の方々ですね。私は、聖女様の身の回りのお世話をしています」
侍女から、聖女の普段の日程を聞いた。一日中部屋にいて、出かけることはないそうだ。
「出歩けるまでとはいかなくても、笑顔を見せてくれる日が来るように、聖女様を支えたいと思っています」
それはなぜなのか、聞いた。
「聖女様のおかげで、笑顔を取り戻した人々を見てきました。なのに、聖女様自身が苦しんでいるのは、あんまりだと思いませんか?」
その通りだと思った。そして、侍女の言葉に、心のもやもやが晴れた気がした。
俺は、俺を助けてくれた女神のような、誰かを助ける人の力になりたいのだと、はっきりとわかった。女神と出会ったあの日から、良いことなのか悪いことなのかわからないが、俺はこんな人間になってしまった。
俺にはできない生き方をしている人たち、女神は眠りにつき、ギーセは旅立っていった。しかし、聖女は今も苦しんでいる。
聖女のような人には、幸せになってほしい。けれど、俺に何ができるというのだろう。
「美味しいものを食べれば幸せな気分になる。ケーキとか、アイスクリームとか」
相談すると、フルルはそう言った。
「……いらない」
ものは試しにと、聖女に何か買ってこようか聞いたが、だめだった。
こんな調子でいいのだろうか。不安はあるが、俺には他にやりようがなかった。




