31
姫に触れたことを怒られるのかと覚悟したが、違った。
「頼みがある。冒険者ギルドに聖女の警護を募集する依頼が来ているはずだ。それを受けてほしい」
唐突な話だった。
「聖女の存在が世に広まり、その力を欲して暗躍する者たちが現れるようになった。殿下には聖女の薬が必要だ。聖女を失うわけにはいかない。
殿下と話す姿を見て、君なら任せられると思った。私は殿下のお側を離れるわけにはいかない。どうか殿下のためと思って考えてくれないか」
今日会ったばかりなのに妙な言われようだ。けれど、国のためを思う姫の言葉と姿を思い出すと、力になりたい気持ちがある。手助けすると約束もした。受けるかどうか、そもそも受けられるかどうかは別として、話を聞いてみていいだろう。
騎士と別れ、冒険者ギルドにやってきた。
職員と話をすると、俺と特にフルルの実力なら十分な資格があるとのことだった。
「警護って何すればいいんだろう。聖女ってどんな人かな。楽しみ」
フルルも興味があるらしい。後日、依頼主の医療魔法学院に行って面接をすることになった。
「女神の鉄球! 聖女はいただいていく! お前に私が止められるかな!」
通りの公衆の面前で、謎の警護ごっこが始まった。ノリノリのフルルは誰にも止められない。
「ハッハッハ! どうした、その程度か!」
恥ずかしいから黙らせようと必死になったが、捕まえられるはずがなかった。
ケーキを食べに行こう。他に何でも奢るから。
「行く!」
説得できてほっとした。ルンルンのフルルとケーキ屋さんに行った。
「美味ひい!」
ケーキを口いっぱいに頬張るフルル。幸せそうで何よりだ。
宿に戻ると、相変わらずフルルは俺の部屋にあがりこみ、話をした。
「ギーセのことをもっと教えて」
家族思いの人だった。女神の恩恵もないのに、どんなときも挫けずに俺を助けてくれた。ギーセが隣りにいたおかげで俺は戦えたのだろう。
元気にしているだろうか。思いを巡らせていると、いつの間にかフルルは眠っていた。




