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「冒険者になったけど、俺には他に二つの道があった。

 一つは兵士。モンスターだけでなく、同じ人間相手の戦に巻き込まれるかもしれない。命を元手にするほど追い詰められてはいなかったから、わざわざ選ばなかった。

 もう一つが、開拓者だ。フロンティアを開拓して、土地を手に入れる。これは、村を捨てて家族みんなで移住しなければならないし、借金も必要になるから選ばなかった」


 なぜこんな話をするのだろう。


「まだ両親が元気なうちに、みんなでフロンティアに行くことにした。帰省したとき、話し合ったんだ。迷っていたけど、今回のことで踏ん切りがついた。命がいくつあっても足りない」


 一緒にやっていく道はないのか、危険な役割は俺が担えばいい。家族の将来を考えた決断に、そう口を挟むのが精一杯だった。


 ギーセは苦笑した。


「お前についていく他に、俺は何もできない。ついていけそうにないんだ。

 お前が冒険者として成功するのを応援してるよ」


 今はもう、いつまで冒険者を続けるかもわからない。


「てっきり続けるものだと思っていた。そうか……」


 ギーセは意外そうだった。


 ギーセが出発する日は、新たに注文する鉄球を受け取る日に決まった。俺が担ぐ姿をもう一度見たいらしい。


 その日、受け取った鉄球をギーセが持ち上げる。


「うわあッ! 重てえ! こんなもの振り回してたのか!」


 足のつま先にでも落としたら大変だ。ハラハラしながら見守った。


 返してもらって肩に担ぐと、ギーセは笑った。


「様になってるな。一目であいつが女神の鉄球だってわかる。

 そうだ、冒険者を続けるにしろ辞めるにしろ、女神の鉄球って二つ名は使わないのか?」


 せっかくだし使おうと思っている。女神が止めたほうがいいと言ったから、逆に使いたくなった。


「続けるなら、フロンティアまで名前が届く日を楽しみにしてる。あの女神の鉄球とパーティを組んでいたって自慢できるからな」


 もしもそんなときが訪れたなら、命の恩人だと自慢するといい。何度も危ないところを助けられたのだから。


「生きるか死ぬかの経験、一生忘れられないだろう。いい思い出になりそうだ、あんな怖い思いもう二度と嫌だけどな。

 そういえば、お前は怖くなかったのか?」


 怖かった。でも、なぜか体が動いた。体は鍛えたが心は鍛えていない。なぜなのか、わからない。


「それは、お前にとって大切なことだと思う。良いことなのか悪いことなのかわからないけど、そんなお前が隣にいたから、俺は挫けなかったんだ。俺が挫けそうだったって、気づいてたか?」


 全然気づかなかった。


 ギーセは笑った。


「いい冒険者になれるよ、きっと。

 じゃあな、女神の鉄球。またいつか会おう」


 ギーセは旅立っていった。


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