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女神と会えたら、何かが始まる気がしていた。女神に導かれて生きていけると思っていた。たとえ険しい道のりでも、それこそが俺の人生だと思っていた。
もう叶わないというのなら、これからどう生きていけばいいのだろう。始まったのではなく、何かが終わった気がして、途方に暮れた。
「……あ!」
部屋に修道女が入ってきた。ここはエリクシア教会だったらしい。
「目覚めたんですね。少し待っていてください、飲み水を取り替えます」
看病させてしまったようで、申し訳ない。
「何日も眠っていたんです。このまま目覚めないのかと不安になるくらいに。まずはお腹に優しい食事を持ってきますね」
忙しない修道女は、部屋を出ていく前にはたと思い出した。
「ギーセさんが午後にお見舞いに来られると思います。それまでゆっくり休んでください」
女神に助けられたことはわかるが、なぜこうなったのかギーセに聞いてみる必要がある。
体にだるさは残っているが、女神のおかげか体調に支障はなく、もう普段通りの生活に戻っても問題ないだろう。けれど、気力がわかず、再び横になって悶々と過ごした。
「よう」
ギーセがお見舞いに来た。何やら緊張した様子だったが、返事をするとほっとしたようだ。
「いつものお前だな。安心したよ」
何があったのか聞いた。
「聞きたいのは俺もだ。俺が気がついたときには、魂の迷宮に戻ってきていて、お前に背負われていた。怪我も治っていて、すべては夢だったんじゃないかと思った。
でも、夢じゃなかった。そうだろ?」
ハチの魔石がそう物語っている。
「その魔石にハチが? 俺が意識を失ったあと、いったい何があったんだ?」
天使との間に起きたことと、女神の話をした。
「会えたのか、女神様に……。
地上に戻るまで、お前は言葉遣いも仕草も、まるで別人のようだった。覚えているか?」
何も覚えていない。女神が俺の体を使っていたということだろう。
「じゃあ、ドーターを倒したのも女神様だったのか。俺たちが帰ってくるまで、魂の迷宮は閉鎖されていたんだ。ドーターが潜ってきた冒険者を狩っていたらしい。
出会ったが、女神様が圧倒した。凄まじかったよ、お前が傷つけられたことを怒っていたんだろうな」
また死にかければ、もう一度女神に会えるだろうか。俺の幸せを願う女神を知っていながら、そんな考えがよぎった自分が嫌になった。
「その後地上に戻ると、お前は気を失った。エリクシア教徒だからここに連れきて、面倒を見てもらえないかお願いした。そして今日に至るってところだ。
世間では、ドーターを倒した冒険者、女神の鉄球が評判になっている」
俺の実力ではない話が広まるのは良くないと思った。
「ドーターが弱っていたからって触れ回っておいた方がいいな。それでも忙しくなるかもな、これから」
これから。とりあえずは魔石漁りを続けるが、前ほどの意欲はなくなっている。
「そのことなんだけど、話がある」
ギーセは神妙な面持ちだった。




