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こんなに体の疲れが残っている日は、いつぶりだろう。体を鍛えていた頃以来初めてな気がする。無理をした日の翌日はいつもこうなった。
こういうときは、寝床から起きたくなくて、二度寝をしようか迷いつつも、とりあえず目を開けてみる。
誰かが、俺が横たわるベッドに、もたれかかって眠っている。
このベッドは、いつも泊まっている冒険者の宿のベッドとは違う。違和感に体を起こして周りを見回すと、知らない部屋で眠っていた。
寝ぼけた頭に、ようやく記憶が呼び覚まされた。最後の記憶を思い出す。俺は、天使に殺されたはずだ。しかし、剣で貫かれた胸の傷は塞がっている。
俺が身じろいだことで、眠っていた人が目を覚ました。その容姿は、夢にまで見た女神そのものだった。
女神が目の前にいる。寝起きの頭で処理するには、あまりにも異常な事態に、思考が止まった。
「よかった。体の具合はどうですか? どこか問題はありませんか?」
女神が喋った。こんな声をしているのかと、感動した。
ハッとした。すべてが納得いく答えが脳に下りてきた。ここは、死後の世界に違いない。
「いえ、違います。元の世界に帰ってきました。もう心配いりません」
現実だと言うのなら、ギーセはどうなったのだろう。
「あの天使から取り戻して、傷も治しました。すぐに元気な姿を見られます。
でも、その子は……」
俺の手の中に、赤色の魔石があった。ハチの魔石だ。
「ゴーレムは、眠っています。その魔石の中で、私と同じように。
私は、女神などという大層なものではありません」
女神は辛そうだった。
「ただの人間が作り出した、魔石そのものと言うべき存在です。あの日、あなたが私に触れたとき、あなたの魔石の異常を感じて目を覚ましました。
あなたの体が弱っていたのは、そのせいです。私のせいです。だから、あなたの魔石に宿り、魔法をかけました。せめて、その後の人生が報われてほしくて……」
女神のせいでひ弱だったが、女神のおかげで強くなれたということだろうか。
もっと神々しい存在だと思っていたが、やっぱり俺にとって女神は女神なことに変わりない。どれほど救われたか、どれほど感謝しているか、女神のために俺に何かできることは、してほしいことはないのか。伝えたいことが山ほどあった。
女神は、悲しそうだった。
「やっぱり私は、いない方がいい。あなたはあなたの人生を生きてください。私が望むのはそれだけです」
女神の姿がおぼろげになっていく。必死に呼び止めた。
「あの子が、こんなに立派に成長した姿を見られて、嬉しい。これからの人生が幸せであることを願っています。ありがとう、私を恨まないでくれて」
女神は笑顔を見せる。
「そうだ、女神の鉄球なんて二つ名、私は止めた方がいいと思います。恥ずかしくなって後悔しても知りませんよ」
そう言い残して、女神は消えていった。




