表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/83

21


 天使はベルを持っていた。ベルの音色が悪魔の像を静めたようだ。


「ゴーレム。人間から酷い仕打ちを受けてもなお、ともに生きることを諦めなかった者たち。まだ生き残っていたなんて。

 ゴーレムを知らないということは、君は異世界から迷い込んだのか」


 ハチが天使を警戒していることが気になるが、危ないところを助けてくれたことを感謝した。ギーセを治療してもらえないかお願いした。


「僕の町に来れば、治療魔法を施してあげられる。外には、こんな紛い物とは違う本物の悪魔たちがいて危険だから、僕が守ってあげよう」


 ギーセを助けられる。ハチと一緒に行こうとした。


「待ってくれ、そのゴーレムはここで処分する。危ないから離れた方がいい」


 天使の言葉に耳を疑った。


「ゴーレムはとても危険なんだ。処分できるうちにしておかないと、力を取り戻したら厄介なことになる」


 天使は、剣を鞘から抜いた。


 天使は本気だ。ギーセのために、ハチを見捨てなければならないというのか。


 断ることができず、ハチを見捨てるという選択肢が頭をよぎった。人は追い詰められると本性を現すと聞いたことがある。これが俺の本性なのかもしれない。


 ハチが、前に進み出た。殺されるというのに、受け入れる気でいる。俺とギーセを見て、バイバイと手を振った。


 ハチは同じだ、ギーセや賢者や女神と。なぜだかわからないが、彼らを見捨ててはならない、強くそう思った。


 どうか見逃してはもらえないだろうか。天使に頼み込んだ。


「邪魔をするなら容赦はできない。警告はしたよ」


 天使は剣を構える。


 なんとかなる、これまでもそうだったと、自分の力を過信したのだろう。ハチをかばった俺は、天使の剣に胸を貫かれた。


 どんな痛みも、どれだけ経験しても慣れることはない。呼吸ができなくなり、血を吐いた。


 辛そうに俺を見守り、寄り添うハチ。見捨てようとしたことを許してほしい。


 天使が剣を振るう。目の前で、ハチは無惨に殺された。ハチの体から、赤色の魔石がこぼれ落ち、床に転がって虚しい音を立てた。


 あまりにも簡単に命を救い、奪う。


「君は、もうだめだね。君の友人は、手を尽くすと約束しよう」


 天使にとって、俺たちの生き死には、ついでなのだろう。どうでもいい、そんな目をしていた。


 ギーセを連れて去っていく足音を聞きながら、目を閉じる。苦痛に悶える時間が過ぎ去ると、一瞬にも永遠にも感じられる平穏が訪れた。


 ギーセは助かってほしい。そして家族と幸せに生きてほしい。ギーセのような人の人生は、そうあるべきだ。


 女神。もう一度会って感謝を伝えたかった。なぜ俺に恩恵を授けたのか、悲しそうな顔をしていたのかを聞きたかった。俺は、女神の悲しみを晴らして、笑顔を見たかったのかもしれない。


 最後に、なぜか勇者の姿が思い浮かんだ。かっこいい人だった。もっと話をしてみたかった。自分でも気づかないうちに、恋心でも抱いていたのだろうか。


 そんな自分をバカらしく思っているうちに、意識が薄れていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ