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道中、変な生物のおかげで会話が弾んだ。
「名前はあるのか?」
変な生物は、地面に棒きれで文字を書いたが、俺はそもそも学がないし、ギーセも読めなかった。
「知らない文字だ、読めない。呼び名を考えないと不便だな……。
有名な名前がいいだろう。ハチ、なんてどうだ。その昔、賢者と称えられた人の友の名前だ。お前みたいに人間じゃなかったが、人間より賢い獣だったらしい」
ハチは、うーん、と悩んだが、まあいいかと賛成した。
「他に仲間はいないのか?」
そう聞くと、ハチは立ち止まった。何も答えず、ただ空を見上げて思いを馳せた。
「……ごめん、気が利かなかった」
この世界の有様を見る限り、良くない事情があるのかもしれない。ハチは、「気にするな」と背中で語っていた。
ハチに導かれて辿り着いた先には、健全な状態に保たれた建造物があった。警戒するハチとともに、遠目からその様子をうかがう。
「あそこに元の世界に帰る手段が?」
ハチの答えは煮えきらない。ジェスチャーを読み解くと、段々わかってきた。
「他にもああいうところがあるのか? つまり、あそこが俺たちの世界に通じているとは限らない。そして、危険な場所でもあると」
どうやら正解らしい。
「それでも俺は、行って確かめたい。待っている家族がいるんだ」
行ってみなければ始まらない。鉄球がないのは心もとないが、俺には女神から授かった力がある。
「心強いよ、女神の鉄球」
女神の鉄球?
「あまりにも暇だったから、お前の冒険者の二つ名を考えた。勇者や魔王だって二つ名だ。かっこいいだろ?」
女神の許しもなしにそれは、あまりにも畏れ多い。
「女神様も、怒るなら怒りに現れてくれるかもしれない。そうしたら会えるぞ」
会いたい気持ちと申し訳なさが相まって複雑だった。
「ハチ、ここまで案内ありがとう。これで最後かもしれないから、言っておく。元気でな。
まあ、あそこが違ったら戻ってくるんだけどな。そのときはまた別のところに案内を頼む」
不安そうなハチに、ギーセは笑った。ギーセと二人で建造物に向かう。
しかしすぐに、後ろからトコトコと足音を立てて、ハチがついてきた。
「いいのか?」
ハチは決意を秘めた目をしていた。三人で建造物に向かった。




