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 夜、ギーセは夜空を見上げてつぶやく。


「俺の目がおかしいのか? 月が青い」


 俺の目にもそう映っている。満天の星空の他に、青みがかった月が浮かんでいた。


「ここは地上じゃないってことだよな。本当に魂の迷宮の中に空が? もう、何が何だかわからない……」


 疲れた様子のギーセは横になったが、中々眠れない様子だった。


 翌朝、ギーセは思い詰めていた。


「これからのことを考えた。周辺を調べながら魔石を集めよう。地上に戻る方法が見つかればそれでいいし、テレポートの罠の魔石を見つけられれば、ここよりはマシな場所に転送されるかもしれない」


 了解して探索を始めた。


 食料は十分集まった。だが、他に目ぼしいものが見つからない。魔石も、動物を狩れば手に入ったが、どれだけ拾っても罠の魔石が出ない。魂の迷宮のモンスターからしか手に入れられないので、モンスターがいないということだろう。


 日をまたぐにつれ、ギーセの口数は少なくなり、物思いにふけることが多くなった。帰る希望は失っていないので、おそらく故郷の家族を想っているのかもしれない。


 ある日、探索をしていると、かすかに何かの気配を感じた。付かず離れず後をつけてきている。ギーセに伝えて、俺が距離を詰めて確認する。


 その生き物は、俺の接近に驚いて飛び上がった。人間の膝丈くらいの背丈の、見たことがない二足型の生き物だ。首のないずんぐりむっくりした体に、短く丸みを帯びた手足が生えていて、真ん丸な両目をパチクリしている。


 踵を返して逃げ出したその変な生物を、むんずと捕まえて持ち上げた。しばらく逃れようとジタバタと暴れたが、無駄だと悟って観念したのか、目を閉じてされるがままになった。「好きにしろ、どうにでもなれ」とでも言っていそうな様子だった。


「何だそいつ。変な生き物もいたもんだ」


 変な生物は、ギーセに変と言われたことに怒っている。


「言葉がわかるのか!?」


 うなずいた変な生物は、えっへんと胸を張った。


「ありがたい! 聞きたいことがいろいろある!」


 変な生物にいくつか質問をした。変な生物は、必死にジェスチャーで答えているが、はっきりとはわからない。


「喋れないのか……。俺たちは地上から……いや、黄色い月が空に浮かぶ世界から、この青い月が空に浮かぶ世界に迷い込んだ。元の世界に帰りたい。何か知らないか?」


 変な生物は、思案したあと、「ついてこい」とでも言いたそうに先導した。


 帰れるかもしれない。ギーセと一緒に歓声を上げてついていった。


 道中、休憩して食事をとった。


「お前は何を食べるんだ?」


 変な生物は、魔石の詰まった袋を差した。


「まさか、魔石を食うのか? ますます変なやつだな。まあいいか、ほら」


 魔石の袋を手渡す。すると変な生物は、袋ごと自分の体にずぼっと埋め込んだ。最後に、空になった袋をぺっと吐き出して、満足そうに体をさすった。


「こいつ全部食いやがった! 吐き出せ! 少しは遠慮しろよ!」


 変な生物は、頑として動かなかった。


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