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 ドーターを置き去りにして、俺とギーセは別の場所に転送された。


「助けが遅れてすまん。大丈夫か?」


 ギーセは心配している。


 体中にあざや痛みは残っているが、骨も内臓も無事だ。


 人間は転んだだけでも打ちどころが悪ければ命を落とす。だから俺は、体の頑丈さを最も鍛えた。今では、どれだけ高い崖から落ちても体が耐えられるようになった。刃物だけはどうにもならないので、ドーターが使ってこなかったのは幸いだった。


「そう言われても信じられないって。俺だったらひき肉にされていた。それぐらいの光景だった」


 死があれほど迫ったのは初めての経験だった。ドーターの姿が目に焼きついて離れない。


「ドーターは、例えるならオートマタ側の勇者みたいなやつらだ。よく生き残れたよ」


 ギーセのおかげで助かった。


「切り札にとっておいたテレポートの罠を発動させた。魂の迷宮のどこかへ転送される。

 一か八かの賭けだった。だから、まだ助かったと言うには早いかもしれない。見てみろよ……」


 ギーセは、外の景色が望める方へ歩いていく。


 魂の迷宮内とは思えない場所にいると、ようやく気づいた。高層建築物の上階のフロアに転送されていた。


 ギーセは空を見上げた。


「魂の迷宮の奥深くには、空や太陽が存在するっていうのか?」


 そして眼下には、見慣れない街並みが広がっている。放棄されて久しいのか、街並みのあちこちが崩れていて、植物に覆われている。


「それとも、迷宮の外に飛ばされたのか? こんなところ、見たことも聞いたこともない」


 高層建築物を下りて、街を探索した。荒れ果てているが、建物の規模や舗装された道路は、王都よりも遥かに進んだ文明の力を感じられた。


「先史文明の遺跡ってことか。だとしたら大発見だ。書物の他には遺跡の欠片一つ見つかっていない。存在さえ疑われているものが、目の前にあるってことになる」


 調べられそうな建物に入って、物色した。


「昔の人も鍋とか使っていたんだな。使えそうなものは持っていこう。帰るまで時間がかかりそうだし」


 俺はリュックも鉄球も何も持ってこれていない。ギーセの荷物とここで得られるものだけで命を繋ぐしかない。


 時間がかかると、あえてギーセはそう言ったのだろう。どれだけ時間がかかるか、帰れるかどうかさえ定かではない状況だ。


 どこまでも続く似かよった街並みと、人っ子一人いない不気味さに、気が滅入っていたとき。


「川だ!」


 魚も泳いでいる。大声を出したせいか、鳥も飛び立っていった。身近な環境に触れられて、気分が晴れた気がした。


 ギーセがナイフで枝を削って銛を作り、俺が銛を投げて魚を獲った。


「逆だろ、漁師は俺なのに」


 ギーセは笑った。俺が投げるしか能がないのだから仕方ない。


 薪を集め、火を起こして魚を焼き、川の水を沸かして飲み水も確保した。しばらくは生き延びられる。立ち昇る焚き火の煙を見上げながら、一安心した。


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