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「オートマタには魔法が通じないから、罠の魔石も使い物にならない。お前がいなかったら俺、死んでいた。忘れていたよ、魂の迷宮が恐ろしいところだって」
ギーセは、オートマタの残骸を調べた。
「魂の迷宮のもっと深いところにいると聞いた。第二拠点付近には出現しないのに、どうしてこんなところに」
ギーセは、破壊された砦の門を見た。
「こいつらが門を破壊したのか? そんなヤワな造りのはずが……」
ギーセは言葉を途中で止めた。砦の中に何者かの姿が見えたからだ。
まだオートマタがいたのか。そう思い、鉄球を構えて戦いに備えた。
「だめだ、逃げろ」
ギーセの声は震えている。
「オートマタのドーター、あいつはだめだ。お前でもだめだ、絶対に敵わない」
ギーセの声色は尋常ではない。
忠告に従いたいが、見逃してもらえるとは思えない。血に濡れたその女は、ゆっくりとこちらに歩いてきた。女というのも、通常のオートマタとは違って、ドーターは人間と似た容姿だった。
距離を詰めてきたドーターに蹴り飛ばされ、壁に激突した。一瞬の出来事で、避けられなかった。
床に倒れて、咳き込んだ。早く立ち上がらないと。そう思って起き上がったときにはすでに遅く、顔を蹴られて壁に叩きつけられていた。
その後もいいようになぶられた。カメのように縮こまり、苦痛を耐え続けるしかなかった。
「こんなに蹴っても壊れないなんて、お前、勇者の仲間?」
頭を踏みにじられながら、ドーターの声を聞いた。
「仲間なら、勇者にお前の死体を見せてあげたら、とても後悔するだろうな。
人間はもっと後悔しないと。過ちを忘れて、素知らぬ顔で今日を生きている。それって酷いことだと思わない?」
何を言っているのかわからない。いったい俺が何を忘れているというのか。
「やっぱり忘れてる。私たちは忘れない。人間から何をされたのか、人間がどんなやつらなのかを」
髪をつかまれ、持ち上げられた。
「次は、勇者なんかに負けない。勇者もお前も、人間はみんな、あの世で後悔し続けろ」
ドーターの手が喉元に伸びてきた。
このままでは殺される。みっともなく暴れ、必死に手を止めようともがいた。
「手を伸ばせ!」
ギーセが駆け寄ってきていた。
死にたくない。すがる思いで手を伸ばすと、ギーセが持っていた魔石の罠が発動した。




