デビル種覚醒〜勇者襲撃③〜
「………ぎ、ぎひひ!勝ったと思ってるんじゃねえのかてめえらぁ!」
何か言い始めたな。
「今の状況でよくそんなことが言えたな……
どうあがこうが負けに変わりはないぞ。」
「それはどうかなぁ………?おいてめぇら!来い!」
そう叫ぶと、十人ぐらいの女性が出てきた。
「何?この人たち………」
「こいつらは俺の奴隷だ!俺が一声かけるか、俺が死ねばこいつらも死ぬ!
無関係の奴らまでお前らが殺すことになっちまうんだよ!」
「貴様………!そこまで墜ちたのね、ロムト!」
「勝てばいいんだよ、勝てば。俺達勇者には、そこまでするべき義務があるんだよ!!」
「醜いな」
後ろから声が聞こえてきた。
「他者を巻き込み、何もしていないはずの者まで根絶やしにするその所業。
それが義務だという心も醜いな」
ゴウカとカバネ、アラシが来てくれたようだ。
「まあそのくらいでいいさ。俺達の勝利に変わりはない。」
「ほーう。こいつらを見捨てんのか?」
「新しい力の試運転には丁度いいか」
「どうするつもりなのですか?」
「まあ、見とけ。『グリード・ロブ』!」
十人の女性がこちら側に引き寄せられる。
「さらに『隷属解除』!」
「あれ?」「ここは一体………」
作戦大成功。『グリード・ロブ』は相手が自分の所有物だと思っている物を奪うことができるスキル。
奴隷になっているのなら効果範囲内だと思ったがどうやら正解だったらしく、隷属解除まで出来た。
「後これももらっとく」
ついでに聖剣ゲット。こいつは改良しなきゃ自爆みたいになるな。
「クソ………クソッタレがァ……………!」
「主様。とどめを刺しますか?」
「俺がやる。」
と、聖剣をリスフィーに渡し、自分の剣を取る。
「待ってくださいっ!」
見た目十五歳の少女が間に入って来て、勇者をかばう。
「………何のつもりかな?そいつは君を奴隷にしていたはずだが、憎いとは思わないのか?」
「確かにそうですけど、この人は私を助けるために……!」
「無駄なこと言うんじゃねぇ!ガハッ!?」
「少し黙っておけ。主よ」
「ああ、逃さないようにな。
詳しく聞いても大丈夫かな?」
「はい。」
「私は、没落貴族の娘だったので、奴隷として売られたんです。
何度も何度も買い主から暴力を受けていたのですが、この人が助けてくれたんです。
男の人が怖くて、怯えてばかりの私を、優しく慰めてくれたんです。
確かに、この人はひどいことをしました。でも、こんな事になったのは、洗脳を受けていたからなんです!
おねがいします、この人を殺さないで下さい!」
「洗脳を受けていた、とは聞いたが、それをやったのはどこのどいつなんだ。流石に全部は信じていないぞ」
「私、殆どの時間をあの人と一緒に過ごしてたんです。
唯一、私が離れていたのは、あの人がコレテ教の本部に行ってたときだけです。
おそらく、そこで洗脳されたんだと思います。」
「…………まさか………!?ポーテュ神を祀っているのか?」
「はい、そうですね」
どうしたんだろう、ニールさん。
どうにもかなり心当たりがあるみたいだが。
「まさか狂信者共が残っていたとは………?!」
「コレテ教すら知らないんだが、教えてくれないか?」
「分かりました、お話しましょう」
「ここより、戻ってから皆の前で伝えてくれた方がいいんじゃないかな?」
「それで行きましょう。」
拠点に戻り、皆を集合させてコレテ教について聞くことになった。
絶対神ポーテュ神を祀る一神教で、他の宗教に対して排他的であり、魔物はすべて悪、人間が世界を統制する種族、亜人もまた一種の魔物という考えのもと、人間至上主義を掲げている。
その実、ポーテュ神は邪神テュポーンであり魔物を作った後、殆どが単純な生き物だったにもかかわらず、全ての魔物を悪とし、人間のいくらかを洗脳、自らを神として崇めさせ、魔物と人間が争うようにしたという。
しかし、ニールさん達真龍は、狂信者共との戦いの末、テュポーンの野望を砕いた。だがニールさん達が眠りについた後、かなりの時間をかけて今度は勇者の存在を作り、さらに激しい戦いを引き起こした。
「恐らくもう一度根絶やしにしたとしても、三度衝突させるだろうな………」
暫らくの間、誰も何も言わなかったが、俺が口を開いた。
「だったら、テュポーンを俺たちが消滅させればいいのでは?」
「………!確かに、奴がいなくなれば、丸く収まるが…………相手は仮にも神。魔物である俺達にどうすれば…………」
「前回とは違う点が、多少ある」
みんなが俺の方に注目した。
「1つ、俺やシデアのように転生者がいる事。
他に転生者を仲間にできれば、更に対策ができる。どうやら転生しても記憶はあるみたいだからな。」
「2つ、大悪魔………それも俺の元いた世界の悪魔がいること。
俺がマモンを呼び出せた様に、他の大悪魔を呼び出せる可能性は高い。つまりさらなる戦力アップが期待できる。」
「3つ、トパーズたちが全盛期以上の戦闘能力を得ていること。耐久力、攻撃力、機動力どれもこれまでよりかなり高いらしい。また戦力がアップした。」
「4つ、これはまあ関係ないかも知れんが…………人間の協力者が比にならない程に増える事だ。
カイザードレイクの皆さんは国家を作っているようだし、多かれ少なかれ、戦闘できる奴らがいる。協力してくれなくても、まあその時はその時だ。」
「最後に。ここに勇者の聖剣がある。これに魔物弱体化の代わりにテュポーンに対する恨みつらみを結集、融合させた呪いを与えれば、対邪神特化型の最強の魔剣ができるはず。これを持って、やつを切れば、大ダメージを与えられる。」
「まぁこんな感じで、以前よりも戦力は強く多くなっているし、対策もあるから、大丈夫なんじゃないかな?」
「確かに、これなら可能性はある。だが……………」
「まあ俺一人でも、やるつもりだけどな」
『!!!』
「俺の父さん母さんを殺し、ビオラの仲間も殺し、他の魔物たちも、亜人たちも殺された。
だから、俺が全てを終わらせる。刺し違えてでも、な。」
『………………………』
「一つ言っとくけど、お兄さんを一人にする気はないよ。あの時助けてもらってから、僕は変わることができた。だから、最後まで共に戦うよ。」
「そうだな。主さん一人でできることなんてほとんどねぇ。だから俺達リザードマンにも、最後まで戦わせてくれ」
「主様が喰らえと言うならば、喰らってやりますよ。たとえ、神だとしても。」
「私も、邪神討伐手伝わせてよ。一応勇者だから、他の勇者たちを保護しておきたいしね。」
「わたしだって、こんどこそおとうさんたちのやくにたちたい!わたしたちも、つれてって!」
「邪神を倒す千載一遇のチャンス。その成功の確率を、少しでも上げたいとは思わないか、ニールよ?」
「無論そのとおりだ。全力でサポートしよう。」
「シルマ………いや、白くん」
「………明日海」
「白くんの考えも分かるよ。すごく危ないから、帰りを待っててほしいんだよね?」
「ああ、そうだ」
「私を、また一人にするのかな?」
「ッ!!」
「ううん、こんな聞き方、意地悪だよね。
だけど、私だってあなたのそばで戦いたい。
あなたを一人で戦わせたくない。私が、あなたを守るから」
「……………明日海………………」
「皆………本当にありがとう。
そして………俺に力を貸してくれ!」
『おおおおおお!!』
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