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僕は不死王じゃない!!  作者: ラノベゾンビ
第2章
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自称魔王のカラクリ仕掛け

 「森で見つけたんだ」


 タナカは散歩している最中見つけた2体のカラクリ蟻人形を持ち帰った。

 『蟲毒』に生息する固有種かとも思ったが、あまりにも生き物離れした見た目な為、リリア達の意見を聞きたいと思ったようだ。

 カラクリ蟻人形を見たリリアは楽しそうに呟いた。


 「うわー、かわいいねそれ」


 どうやらリリアはお気に召したようだ。

 蟻人形の一体を抱きかかえ、頭を撫でている。

 カラクリ人形を見るのは初めてらしい。

 対してミーナは興味深そうに言う。


 「人形劇なんかで使うやつだろ?でも妙に凝った造りだな……自動で動く人形なんか初めて見たぞ」


 街や都市では一般娯楽の一つとして、人形劇がある。

 子供への贈り物やコレクター等が欲しがるため、人形売買の専門店もある。

 ミーナは都市暮らしが多いため、人形はさほど珍しいものでもないようだ。

 しかし、自動で動くほどの精巧な作りとなってくると話が違ってくる。


 「ねえ、この子ついてきて欲しいみたいよ」


 タナカがミーナと人形について訝しんでいると、リリアがそんなことを言い出した。

 人形はリリアの手許から離れ、前足でクイクイと巣穴の外を指し示している。

 タナカが持っていたもう一体の蟻人形を地面に下ろすと、そちらは前足で自分の背中を指す。

 その様子は「俺の背中についてきな」と言っているようだ。


 「まあ、巣穴荒らしにも飽き飽きしていたところだし、ついていってみようか」


 タナカ達一行は「気分転換でも……」といったお気楽な雰囲気で蟻人形たちについていった。


 ーー


 「完全に雰囲気ぶち壊してるね」


 物寂しそうにタナカが呟く。

 蟻人形達についていくと、妙に作りが凝った両開き扉の付いた巣穴があった。

 勿論、他の巣穴には扉などついていない。

 その扉は人の手が加わっていない悠久の大自然といった雰囲気を完全にぶち壊しにしていた。


 「この子達、この中に入れって言ってる」

 

 蟻人形達は短い前足で懸命に扉を指す。

 どうしても入ってもらいたいらしく、ペコペコと頭を下げながら扉を指し示す。

 その様子に、タナカはちょっとホッコリしながら扉に触れた。

 扉に触れると、フオーンという効果音を出しながら紫色の魔法文字が扉に浮かび上がった。


 「えーと、何々……汝、勇気ありし者なら、扉を開け、その力を示せ。汝、臆病者なら、逃げかえるべし。吾輩は魔王であるッ! 怖いか。怖いのであるか? そうであろう。そうであろう。フハハハハハハ」


 ……と書いてあった。

 色々と雰囲気が台無しだなとタナカは思いつつ、どうするかリリア達に尋ねようと振り返ると


 「面白そうじゃねーかッ! 入ろうぜッ!」

 「行ってみよーよ。『ナオール草』があるかもしれないし」

 「ガルッ」(どこまでも付いてきますぜ兄貴ッ)

 「主よ、俺もそろそろ役に立つところを見せたい」


 上からミーナ、リリア、ポチ、スズキと……全員乗り気だった。

 あまり乗り気ではないタナカも、周囲のやる気に反対は出来なかった。

 ヨルムンガンドと公爵トリュゴネスに扉の前で警備を命じ、タナカ達一行は扉の中へ入っていった。


 タナカ達一行が入ると真っ暗闇だった。


 バターン

 ボウッ


 タナカ達一行が入り切ると、自動で扉が閉まり、壁に取り付けられた魔法灯(マジックランプ)が入り口に近い物から順繰りに奥へ奥へと点灯していった。

 すると、ヒューンと音を立てタナカ達のところへ、プロペラがついた大きな目玉が飛んできた。

 キィンッとハウリングが入る。


 「……あ、あ、マイクテスッ、マイクテスッ……オッホン! 侵入者諸君ッ!! 吾輩のカラクリ屋敷にようこそなのであーる。吾輩は魔王ッ! 知恵と力を持つものであーる。吾輩が作った最高のカラクリ達が君達をもてなすだろう。さあッ勇者たちよ。数々の試練を突破し見事吾輩の元までたどり着いて見せよッ! ……その目玉は中継役だから攻撃しないでほしいのであーる」


 「…………」


 色々と突っ込みどころが多すぎてタナカは沈黙してしまった。

 絶対めんどくさくなる――タナカは嫌な予感しかせず踵を返そうとすると……


 「こんな手の込んだ物作れるなんて、まじで魔王かもなッ!面白くなってきやがったな」

 「踏破したらあの人形私にも作ってくれないかなー」

 「ガルッ」(兄貴ッ、魔王倒して伝説作りましょうッ)

 「同じ王を冠するものとして凌ぎを削りたいな」


 全員やる気がみなぎっていた。

 顔が引きつるタナカ。

 仕方ないかと呟きながらタナカ達は陣形を整えた。

 

 防御力の高いスズキ、死んでも問題ないポチが前衛。

 槍によるスキルで中距離攻撃ができるミーナ、前衛とのスイッチができるタナカが中衛。

 魔法による遠距離攻撃や補助ができるリリアが後衛という陣形だ。


 「それじゃあ、進もうか」


 カチャカチャカチャ


 タナカ達が陣形を整え、奥へと進もうとすると大量の虫人形達が現れた。


 ーー


 「どんだけいるんだよッ!!」

 

 タナカが焦った声で叫ぶ。

 タナカ達一行は大小さまざまな種類の虫人形達に追われながら、奥へ奥へと爆走していた。

 最早、陣形は完全に崩されていた。

 最後尾を走るスズキにクワガタムシの虫人形が飛び掛かる。


 「フン。雑魚が。邪魔するなッ!」


 バキャッ


 スズキのナタでの一振りで弾け飛んでいく虫人形。

 スズキが「フンッ」と鼻で嗤う。


 「ダメだスズキッ! 核を壊さないとッ!」


 スズキの前を走るタナカが慌てた声で叫ぶ。

 すると、吹き飛ばされた虫人形はカチャカチャと音をたて、自己再生していった。

 「またか……」と愚痴りつつ、苦虫を噛み潰したような顔になるタナカ。


 入り口から今に至るまで相当数の虫人形達を倒してきたタナカ達一行。

 現在、逃げるように走り続けているのには理由があった。

 まず、虫人形は個々の戦闘力がかなり弱い。

 スズキやポチの一薙ぎで大抵の虫人形は吹き飛んでしまう。

 ミーナのスキルやリリアの魔法でも結果は一緒だ。


 しかし、虫人形には自己再生能力があった。

 虫人形には核となる部分が存在しており、核を壊さないと自己修復を始めてしまういやらしい作りだ。

 狩っても狩っても湧き出てくる虫人形達。

 タナカ達は進むのに邪魔な虫人形だけを倒すことにし、最奥へと急ぐことにした。


 「おい、見ろ出口だぜッ!」


 ミーナが指を指しながら叫ぶ。

 指し示す先を見るとそこは広い空間につながっている出口があった。

 狭い通路で虫人形達に囲まれ続けたタナカ達一行。

 相当ストレスが溜まっているようだ。


 全員の顔に疲れや苛立ちが見える。

 タナカとスズキとポチはゾンビの為、疲れは疲れでも気疲れだが。

 タナカ達一行は出口へと飛び込む。

 そしてミーナだけが振り返り、来た道へとスキルを発動する。


 「まとめて吹き飛べッ!爆裂槍(エスタロアルマ)


 ボカンッ


 激しい爆発音とともに爆風が走り、タナカ達が通ってきた道を爆炎が包み込んだ。


 「ふぅ。これでしばらくは追ってこねーだろ」


 いい仕事をした後の職人の様に、グイッと額の汗を拭いながらミーナが言う。

 辛くも虫人形達の猛攻を撃退したタナカ達。

 タナカ達は外壁は全てレンガ造り、床は木板、天井には錆びついたシャンデリアがいくつもぶら下がっている広い空間に出た。

 

 来た道とは別に一つ通路があり、別の空間へとつながっているようだ。

 そして広い部屋の中央には石でできた祭壇に赤い大きな宝箱が設置されていた。

 祭壇に張り紙がされており、『これは罠ではないのである』と書かれている。

 それを見たタナカ達一行は……


 「罠だな」

 「罠ね」

 「ガルッ」(間違いなく罠っす兄貴)

 「罠だろう」


 満場一致で罠判定だった。

 すると、キィンとハウリングが入りプロペラ付きの大目玉からアナウンスが入った。


 『待って欲しいのであるッ!! その紙をよく読んで欲しいのであるッ!! 罠ではないであるッ!! 絶対罠ではないであーるッ!!』


 必死感がぬぐい切れない声。

 主人の必死感あふれる声に触発されたのだろう。

 ちゃっかりリリアとミーナの肩にしがみ付いていた2匹の蟻人形がピョンと地面に着地するとペコペコと一生懸命頭を下げながら、前足で宝箱を指す。

 その姿は契約ノルマを達成できていない営業マンの如き必死感が溢れていた。


 「タナカ……」

 「……わかったよ」


 可哀そうになったのか、哀れみが入り混じった声でタナカに宝箱を開けようと訴えかけるリリア。

 そんなリリアにほだされるタナカ。

 「間違いなく罠なんだろうなー」と呟きながら、宝箱に近づいていく。

 宝箱をタナカが開けるとその中身は空っぽで、蓋の裏に『残念、罠でしたぁ~』と書いてある貼り紙が貼ってあった。


 ガチャン、ウィーン


 「うわッ、なんだッ!?」


 宝箱を開けた瞬間、ミーナの慌てた声が入る。

 ミーナのいた位置の床がベルトコンベア化し、高速で動き出す。

 そしてレンガ造りの壁がウィーンという音を響かせながら左右に開いた。


 「隠し扉かッ! スズキッ! ミーナを頼むッ!」

 「主よ! 承ったッ!」


 隠し扉に吸い込まれるようにベルトコンベアで運ばれていくミーナの援護にスズキが走る。

 すると、今度はリリアのいた位置の床がパカッと開いた。


 「キャアッ!」


 リリアが悲鳴を上げながら、暗闇に落ちていく。


 「ポチッ!! リリアを守ってくれッ!!」

 「ガルアッ!!」(任せてくれ兄貴ッ!!)


 落ちていくリリアを追うように穴に飛び込んでいく鬼熊のポチ。

 リリアとポチを飲み込むと、ウィーンと音を立て開いた床が元に戻る。


 「分断されたか。二人には護衛を付けたし、僕にも護衛を……」


 そう呟きつつ、取り残されたタナカはヨルムンガンドを取り出そうとアイテムストレージを開き……


 (あ、入り口で警護させてたんだった……)


 ヨルムンガンドがいないことを思い出した。

 静寂が広がる空間でタナカは寂しさに襲われ、そして……


 「ボッチは嫌だあああああッ!!」


 悲しい叫びをあげるのであった。

 『残念、罠でしたぁ~』と書かれた貼り紙が吹いてきた風で剥がれ、ヒュウーと宙を舞った。


 ーー


 ―監視(モニター)部屋―


 いくつものモニターが設置された部屋で、楽しそうに嗤う男。

 モニターを見ながら何やら呟く。


 「フハハハハ。首尾よく3つに分断できたのであーる」


 モニターを見ながら嗤う男は、考えを整理するように独り言を呟く。


 「こっちは弱そうであるな……そっちもあまり強そうに見えないであるし、やはりここが適役であるなッ!」


 男は獲物を見つけた猛獣の様な目で、モニターを一つ指さしていた……


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