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僕は不死王じゃない!!  作者: ラノベゾンビ
第2章
21/34

3億エーン事件

金貨1枚=10万エーンです。

1エーン=1円です。


 「タナカお茶入れて」

 「畏まりましたリリア様」


 翌朝起きるとリリアの機嫌が非常に悪かった。

 そんなリリアを気にした様子もなく颯爽とミーナは「仕事あっからじゃーなっ」と帰っていった。

 取り残されたタナカ。

 原因がわからないタナカだったが生前の社畜生活で『機嫌が悪い上司のあしらい方』を極めていたタナカはリリアのご機嫌取りに徹していた。


 そして一つ撒き餌を撒く……


 「リリア様良ければ本日オークションに行きませんか?」

 「……オークション?」


 よしよし食いついてきたなと思うタナカ。

 ちょっとニヤつきたくなる衝動を抑えつつポーカーフェイスを決め込み話を続ける。


 「オークションとは物品を売りに出して大勢の人達に価格競争して値段をつけてもらう売り方でございます。この前のスズキ討伐でかなり財宝を手に入れたでしょう?それを現金に換えてしまうと思いまして……」


 ここオリタナではオークションが非常に盛んだ。

 オークションを開くためだけに用意されている施設があり、毎日のように物品が持ち込まれている。

 持ち込まれたら当日の内に競りにかけられるため、持ち込む日時も重要になってくるところもオークションの醍醐味の一つだろう。

 

 スズキ討伐でかなりの財宝を得たがタナカ達は貴族ではない。

 美しい彫刻品よりも今後の旅路で役に立つ現金の方がいいと考えていた。


 「面白そうだし……いく」


 チョロいぜっとほくそ笑むタナカだったが「タナカが何を買ってくれるのか楽しみ」というリリアの言葉に凍り付いた。



ーー


 オークション施設―「夢追い人」―


 「ぇ……と、まだあるのでしょうか?」

 

 小洒落たアンサンブルスーツに身を包んだ小綺麗な女性は困惑に顔を歪める。

 オークションへ出品する商品をを預かる受付嬢だ。

 目の前の冴えない顔の男が次から次へと出す見事な彫刻品。

 安い物でも金貨3枚程度(30万エーン)は付くだろう。

 そんな高級品が次から次へと出てくる有様に受付嬢はVIP会場への出品を決意した。


 オークション施設「夢追い人」――ここは全3階建てのオークション施設だ。

 1階は庶民エリア……見習い鍛冶師や陶芸師が作った作品等が出品される。

 2階は中級層エリア……一部では名の通った職人や利便性が高い魔法アイテム等が出品される。

 3階はVIPエリア……オリタナでも有数の有名職人が作った作品や古代の遺跡等から発掘された貴重な逸品等が出品される。

 会員制は採用されておらず、一般市民でも入場することが可能だがドレスコードが義務化されており、買い付けに来る者もハイソな者が多いため一般市民は敬遠しがちである。


 タナカはその仕組みが分かっておらずとりあえず1階で受付するかと適当に受付嬢に声を掛けた。

 タナカがアイテムストレージからポンポン彫刻品を出しているのも受付嬢を困惑させている一つの要因だろう。

 

 タナカはミーナから「『圧縮袋(コンプレシオンボルサ)』という魔法アイテムがあって便利なんだぜー」と聞き、なんだこの世界にもアイテムストレージモドキがあるのか……と普通に使うことにした。


 ……しかしそれは間違いだ。

 『圧縮袋(コンプレシオンボルサ)』は高級魔法アイテムだ。

 一般市民はなかなか手を出せないアイテム。

 商売で大成した者や、一部の高給役人が所有するようなものだった。

 収納容量が増えれば増える程その値段は吊り上がっていく。


 ミーナはガサツな雰囲気が目立つが元Sランク冒険者。

 そして今は売れっ子鍛冶師だ。

 お金はかなりある。

 ミーナが持っているから……というのがそもそもの間違いだと気づかずにタナカは普通に使用しているのであった。


 「……ではこちらで最後ですね」


 相当神経をすり減らしたのであろう……疲れ切った声で受付嬢はタナカに確認を取る。

 そんな受付嬢に容赦のないタナカの追撃が入った。


 「いえ。今のは僕の分ですね。あとこの子の分の出品お願いします」


 スズキ討伐の分け前はタナカ:リリア:ミーナ=2:4:4で割られた。

 最後意外足を引っ張ちゃったから……とタナカが遠慮したためだ。

 先程の倍の量の彫刻品が受付嬢を襲う。


 (もう……勘弁してよッ!!)


 受付嬢は心の中で悲鳴を上げながら商品を全て受け取り、その後タナカ達をVIP会場へ案内するのだった。



 ーー

 

 「夢追い人」3階―VIP会場―

 その会場はズラリと赤い座席が並んでいた。

 『魔法灯(マジックランプ)』が薄く光り、まるで映画館の上映前の様な雰囲気を醸し出している。


 タナカとリリアは黒い高級ドレスコードに身を包んでいた。

 胸には44番と45番と書かれた小洒落たナンバプレートがキラリと光る。

 オリタナの誇る新進気鋭の服飾デザイナーコム・デ・パッション作だ。


 「リリア美しいよ、どんな服でも君の美貌には霞んでしまうよ」

 「タナカこそゾンビにも衣装ってぐらい似合っているわ」


 とハイソぶっているのだろうか……二人で茶番をしていると会場のステージに黒いシルクハットを被った全身黒づくめの小洒落た中年にスポットライトが当たった。


 「会場の皆様……大変おまんたせしましたッ! 皆々様のご協力のおかげで本日は最ッ高のエンターテインメンッをご用意することができました! では参りましょう! 『夢追い人』VIPエリアオークション開幕ですッ!」


 ハイになっているのだろうかと思わせるような大袈裟なリアクションを中年が取りつつ叫び終えると幕が上がっていった。


 ガラガラとステージ脇からバニースーツを着込んだセクシーな女性が風呂敷を掛けられた台車を押し、ステージ中央で止まる。

 バサッと風呂敷を取ると豪華な額縁に入った幼女の裸婦画が現れた。


 「トップバッターは何と有名な『魔法画家(マジックアーティスト) ヨウジョスキー』が描いた逸品――『おませな妹ちゃん』ですッ! この絵画のウリは……」


 シルクハットの中年が絵画に近づいていき、描かれている幼女の胸の部分をタッチすると……


 『バカバカお兄ちゃんの変態エッチ!』


 と絵画から音声が流れた。


 「おおッ! 何て素晴らしいんだ!」

 「さすがヨウジョスキーの作品だ! これぞ芸術だッ!」

 

 会場がざわつきボルテージが上がっていく。

 そして……


 「皆さんも好きですねぇ~。では参りましょう! 価格はドール金貨10枚からスタートですッ!」


 ――熱い漢達の戦いの火蓋が切られた。


 ……結局『おませな妹ちゃん』は金貨100枚で売れた。1000万エーンだ。

 その後、次々と商品が競りにかけられていきタナカの取り分も出品された。

 その結果何と金貨1000枚――1億エーンだった。

 

 放心するタナカ。

 「月給20万の僕が……」としきりに呟いてる。

 「良かったねタナカ」と喜びを分かち合うように嬉しそうに言うリリア。

  二人が騒いでいると新たな商品がステージに運ばれてくる。

 風呂敷が取られると会場がざわついた。


 「これは南方から来た行商人……カネハギトール様からの逸品――『相愛のピアス』。これを片方づつパートナーと分かち合うことで魔法の加護を発揮する魔法(マジック)アクセサリー。今回は何と二組の出品だあああああッ!」


 ……それは見事なピアスだった。

 一組は紅い魔法石をあしらった銀の十字架ピアス。

 もう一組は碧い魔法石をあしらった銀の十字架ピアス。

 魔法石が魔法灯の光をキラリと反射し美しく輝いている。

 それを見たリリアが……


 「あれ欲しいッ!」


 キラキラした瞳でピアスを見つめている。

 リリアは女の子だ綺麗な物に目がないのだろう……そうタナカは思った。

 リリアは「あれほしいなぁ~」と上目遣いでタナカの腕に抱き着きながらおねだりする。


 そんなリリアを見つめタナカは決意する。

 一億エーン手に入ったことで気が大きくなっているのだろう。

 獲物を狙う百獣の王の様な瞳でピアスを睨みながらタナカは言った。


 「ショウタイムだッ!」


 ……一億エーンだった。

 38番の男が最後まで競ってきた。

 金貨800枚(8000万エーン)辺りでもうどうにでもなれっといった気持ちで金貨1000枚を提示し、そのまま死合は終了した。

 うなだれるタナカ。

 全力を出し切ったボクサーの様に灰になっている。


 そんなタナカを見つめながら満面の笑みで「ありがとうタナカ」と嬉しそうに言うリリア。

 そんなリリアを見つめタナカは……


 ”いいじゃない リリアの笑顔は 一億エーン(字余り) 作タナカ”


 と一句詠んだ。


 タナカが一億エーン失った哀しみとリリアの笑顔が見れた嬉しさで複雑な気持ちになっているとリリアの取り分がステージに運ばれてきた。


 「さてさて皆様……お待ちかねの最後の品になりました。本日のメイン商品、オリタナでも屈指の名職人ミーナ様の友人であるリリア様の持ち込まれた逸品。数々の見事な彫刻は至高とも言えます……ではご賞味あれッ!」


 シルクハットの中年がそう言いつつ大きな大きな風呂敷を剥ぎ取るとそこに現れたのは見事な彫刻品や宝石の数々であった。

 ウワアアアッと巻き上がる歓声。

 会場は本日一の盛り上がりを見せる。

 ーーそして競りが始まった。


 「金貨2000枚ッ!」

 「おお84番の方金貨2000枚ですッ! 他の方いますか~?」

 「金貨2010枚ッ!」

 「おお103番の方金貨2010枚! 2010枚が出ました~。他の方いますか~?」


 激しい競り合い。

 だが最初の方と比べ段々と手を上げる客が少なくなってきていた。


 (このあたりだろうな……)


 熱気に包まれる会場とは裏腹にタナカは冷静に思った。


 (僕の取り分で金貨1000枚だったんだ。リリアの取り分は僕の2倍……いっても金貨2300枚ぐらいだろう)


 タナカはそう分析していた。

 もう少し伸びてくれるといいな~と希望的観測をするタナカ。

 会場の激しい競り合いは落ち着きを見せ、そろそろ雌雄が決定しようとしていた。

 

 「金貨2280枚! 現在2280枚ですッ! 他の方いませんか~?」


 静まりかえる会場。

 これで決まりか……とタナカが思った瞬間、静寂を打ち破るような一声が放たれた。


 「金貨3000枚ッ!!」


 おおッ! とざわめく会場。

 「えッ……」と驚くリリア。

 タナカも口がポカーンと開いている。

 シルクハットの中年も一瞬動揺するがそこはプロ意識なのだろう

 ――直ぐに職務に舞い戻る。


 「金貨3000枚出ましたッ!! 116番の方金貨3000枚ですッ!! 他の方いますかッ!?」


 静まり返る会場。

 どうやら後続はもういないようだ。

 ――そして雌雄が決した。


 カラーン、カラーン


 「金貨3000枚ッ!! 金貨3000枚で決定しましたぁ~!! 落札者の方おめでとうございますッ!!」


 夢の様な時間を体験し、受付で金と支払いを済ませた二人。

 タナカは1億エーンのピアスを失くさないようにアイテムストレージへと入れる。

 

 場外のロビーでやったぜっとガッツポーズを取るタナカ。

 金貨3000枚だよッ! とリリアも手を叩いて喜んでいる。

 二人が和気あいあいとはしゃいでいるとそこに一人の老人が忍び寄ってきた。


 「ホッホッホ。素晴らしい買い物をさせてもらいましたぞ」


 タナカ達が振り返るとそこには胸に116番と書かれたナンバープレートを付けた老人が立っていた。

 もっさりと白髪交じりの髭を蓄えたドワーフの老人――ボンズ武具店の店長ボンズだった。


タナカのかっこいい台詞②


「……お帰りお兄ちゃん1号店の経営が傾いている?すぐに投資だッ!!」

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