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僕は不死王じゃない!!  作者: ラノベゾンビ
第2章
20/34

お帰り僕の不死王サヨナラ僕のファーストキス

 不気味な笑顔で嗤う三日月。


 その月明かりが窓から差し込み不気味に照らされる男。


 その手にもつ漆黒の剣に月明かりが反射し、その男の顔を下から照らしあげているのも不気味な要因の一つだろう。


 男は漆黒の剣を見つめながら呟いた。


 「成長している……?」


 不気味な男――タナカは答えを求めコンソールを開いた……


 ーー

 馬車ゾンビ”タナカ” Lv34


 ーステータスー

 HP 9321/9321

 MP 進化したところでお前の価値は変わらない

 攻撃力 31547

 防御力 30216

 素早さ 28452

 知力  アウストラロピテクス

 精神力 ガラス細工


 ーー


 コンソールに表示されているステータスにはレベル上昇で得られる以上の増加があることにタナカは気が付いた。


 (スズキとの一戦……最後の一太刀はおかしかった)


 タナカはスズキとの一戦を思い出しながら思った。

 スズキとの一戦……最後の一太刀でタナカは頸動脈を切り裂くことを選択した。

 それはスズキの防御力の高さを考えてのことだ。

 

 「……ん」

 

 タナカとスズキにはかなりのLv差があった。

 その為、頸動脈という部位を確実に切り裂こうと考えての一太刀だったが……結果的には胴体を真っ二つにすることができた。

 

 そんな攻撃力が自分に合ったのだろうか……そう考えタナカは疑問に思っていたのだが、ステータスを見て彼は一つの可能性に思い至っていた。


 ーー自分の成長に合わせて不死王の装備も成長しているのではないか……と


 (初期ステータスでも強いのにまだ伸びしろあるのかよ……とんだチートアイテムだ)


 「……うんっ」

 

 タナカはコンソールのステータス表記を見つめながら、そんなことを考えていると、もう一つおかしな部分に気づく。


 (……レベル上がり過ぎじゃね?)


 クリスタルティアでのあれこれで上がったLvは20……今回での白王戦だけで14も上がっていた。


 (無敵ゲーをやっている時と命を賭けた場合で得られる経験値は違う……?)


 「……んっ」


 うーむ……と首をかしげながら考えるタナカ。


 (そういえばリリアのレベルはどうなったんだ?)


 自分と比べる意味合いもあったのだろう、タナカはベッドで寝ているリリアを注視しようと振り返ると……


 「ブホッ」


 鼻血が噴き出た。

 そこにはリリアとミーナが下着姿で抱き合いながら寝ていた。

 寝返りを打ったのだろう……掛布が剥がれてミーナとリリアの艶やかな体が大分見えていた。


 「ありがとうございます」


 心の中……では感謝の気持ちが足りないと思ったのだろう、タナカは声に出して二人にお礼を言うとリリアを注視した。


 決して下心からではないと自分に言い聞かせながら。


 ーー

 ミニサキュバス”リリア” Lv27


 ーステータスー

 HP 426/426

 MP 240/240

 攻撃力 102

 防御力 107

 素早さ 121

 知力  384

 精神力 375

 

 ※このスケベ野郎


 ーー


 となっていた。

 

 (大分レベルが上がっているな。あれミニサキュバスって確か進化できなかったけ?)


 ※このスケベ野郎という表記にまるで動じないタナカ。

 コンソールとの付き合い方を大分学んだようだ。

 

 タナカは『ゾンビーズ』の設定集を思い出す。

 進化条件は書かれていなかったはずだが確かに進化先があったことを思い出した。


 (僕と同じ条件ならLv20になった時、条件を満たしているなら進化できるはず……)


 再びタナカは思考の渦に巻き込まれながらリリアとミーナの体をじっくり眺め出した。


 タナカの部屋になぜ理想郷が広がっているのかというと……


 ーー

 

 ―オリタナの酒場「芸術酒豪」個室VIPルーム―


 気品ある調度品に囲まれた一室。

 分厚い木製の壁によく見ると光沢が出ており、薄いフィルムが貼られていることがわかる。

 

 魔法アイテム『防音膜(インソノロメンブラナ)』――軽い防音効果を持っている透明のシートだ。

 壁や窓に貼り付けると効果を発揮する。

 値段はかなり高価だ。

 置かれている調度品や高価な魔法アイテムが貼られていることからその店のVIPルームを使う者に対してのホスピタリティの高さが窺える。


 タナカがグラスを割った店の奥にはそんな空間が存在していた。

 タナカがオリタナで借りていた宿で一晩白王に慰められながら泣き明かした翌夜、ミーナが部屋を訪ねてきた『不死王のローブ』を携えて。

 タナカに『不死王のローブ』を返すとミーナは楽し気に口を開いた

 ――飲みにいこーぜっ! と。

 

 「へえーお前があの悪名高い不死王だったんだなッ!」

 「ちょッ! ミーナさん声が大きいですってッ!!」

 

 タナカはミーナにクリスタルティアでリリアを助けたこと、不死王に勘違いされた経緯を説明していた。

 大声でからかうミーナに焦るタナカ。

 「大丈夫だって」と軽い感じで流しながらミーナはにこやかに笑う。


 「ところでミーナさんは悪魔族や不死王に対して嫌悪感とかないんですか……?」


 タナカは恐る恐る聞いた。

 するとミーナは少し酔っているのか頬を薄く朱色に染めながらタナカの疑問に答えた。


 「ここオリタナは悪魔族の往来が普通にある。悪魔ってのは芸術を好むんだ。中には鍛冶を芸術って考える奴なんかもいて私の顧客にも何人かいるぞ」


 ――ということだった。

 因みにミーナは鍛冶師として修業している最中、鍛冶に関する固有スキルが発現してオリタナでも有名な鍛冶師だった。

 その高名さと財力でこの「芸術酒豪」のVIP会員となっていたためタナカ達はVIPルームを使用している。


 「不死王に関しちゃどうでもいいな……1000年も前の話なんか興味ねぇし、私が実際なんかされたわけじゃねーからな。それにお前は偽者だろ?」


 何をそんなに焦ってんだか? と言いたげな顔でタナカにそう告げる。

 心配して損したなと思うタナカ。

 そんなタナカに「いいから飲めよっ!」とジョッキに入ったリンゴ酒を推し勧めてくるミーナ。

 するとジョッキがタナカの目の前から掻き消える。


 「グビグビグビ……プハー。おかわりっ」


 タナカの膝の上に座るリリアだった。

 店のメニューにリンゴ酒があり、甘く飲みやすいお酒だった為、「異世界だし年齢がどうとかいいか……」と軽い気持ちでリリアに勧めたタナカだったが、「おいしい! おいしい!」とリリアは嵌まり、呑兵衛と化してしまった。


 ゾンビと化したことで全く酔えない体質になってしまったタナカ。

 そんなタナカを置いてけぼりにしガンガンと飲み散らかすリリアとミーナ。

 そんな二人を見てタナカは呟いた。


 「この光景クリスタルティアでも見たことあるな……」


 素晴らしいフラグを立て、予想通り二人は撃沈した。

 ……会計はタナカになった。

 そしてリリアを抱えつつミーナをおぶるという高度な技を使いつつ宿に戻りベッドに寝かしつけた。


 ーー


 「頭いてぇ~」


 タナカがミーナとリリアの生態日記をつけるためじっくりと鑑賞しているとミーナがそんなことを言い出しながら急に起きた。

 すぐに視線を窓の外に向けるタナカ。

 「今夜は満月か……」と意味深に呟いている……三日月なのに。


 「あれ……何で私下着なんだ?」


 ミーナは自分の体を見ながら呟く。

 タナカは一切の邪気を感じさせない顔で言った。


 「ねぐ、寝苦しッ、からと言って、自分でにゅいでますたよ?」


 もちろんタナカが脱がせた。

 「これは介抱」と自分に言い聞かせながら。

 「そうか」と納得するミーナ。

 タナカはホッと胸を撫でおろす。

 そんなタナカを見つめながらミーナは話し出した。


 「その……なんだ……ありがとな」


 介抱していたことか? それならこちらこそありがとうだ! と思うタナカ。

 暗闇で分かりづらいがミーナは少し照れているようだ。

 若干照れながらミーナは話を続ける。

 

 「正直、戻ってこないと思ってたよ」


 白王についてか……とそこでタナカは理解した。

 「いや、気にしないでください」と言うタナカ。

 白王戦の前まで散々ミーナに泣きついたことを思い出したのか若干気まずそうだ。


 「私な、一度死んでるんだ」


 そう呟くと、ミーナは『戦乙女(ヴァルキリー)』の固有スキルや『聖獅子の神槍』が砕け散るまでの経緯をタナカに話し始めた。

 タナカは黙って聞いていた。

 ミーナの毒を受け止めるように。


 話し終えるとミーナはタナカを睨んだ。

 どこか怒っているようにも見える。


 「女が過去を語って落ち込んでいる時、慰めんのが男だろーが」


 そう言い放つと、ミーナはベッドから抜け出てタナカの胸倉を乱暴に掴む。

 ――そしてタナカに口付けした。


 「アッ」


 ベッドがバサッと音を立て一瞬ビクリとリリアが動く。

 その声に振り向くミーナ。

 そしてリリアを見て微笑むと寝ているリリアの額に口付けしてそのまま抱きしめる。

 リリアを抱き枕にしてそのままミーナは再び眠りに着いた。


 タナカは自分の唇に触れながら三日月を見つめ呟いた。


 「さようなら僕のファーストキス」


 タナカの頬に歓喜の涙が一粒零れ落ちた。


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