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僕は不死王じゃない!!  作者: ラノベゾンビ
第2章
19/34

目論むタナカ

 「タナカッ!!」


 リリアは嬉しそうに叫ぶとタナカに走り寄って抱き着いた。

 タナカの生存に安堵するかのようにタナカの首筋に顔を埋める。

 そして泣きじゃくった。

 きつく抱きしめられると傷口から激痛が走るタナカであったがリリアの髪を優しく撫でた。

 泣きじゃくるリリアを右腕で抱き上げるとそのまま立ち上がりミーナの元へと向かう。


 「ミーナさんッ」


 タナカが心配そうに声を掛けるとミーナは苦しそうに返事する。


 「ゾンビ……てめ……そんなに強いなら……最初から本気だ……しやが……れ……」


 タナカはアイテムストレージから緑色の液体が入った小瓶を取り出す。

 クリスタルティアでエミルと一緒に万引きしたポーションだ。

 15歳の夜なら許されるかもしれないがタナカは25歳。

 しかも犯行時刻は昼だった。

 

 物に罪はない……そう自分に言い聞かせながらミーナにポーションを振りかける。

 盗んだバイ……ポーションで回復していくミーナ。

 淡い緑色の光が綺麗なのだがタナカにはどことなくくすんで見えた。


 「ふぅ。死にかけたぜ」


 常人なら死んでいただろう瀕死の状態から生還したとは思えない様な気軽さで首をコキコキしながらミーナは呟いた。

 そんなミーナを見て、リリアがミーナに抱き着く。


 「ミーナ姉ッ……逃げてごめんね……助けられなくてごめんね……グスッ」


 急に慌てだすミーナ。

 どうしていいかわからないようだ。

 「き、気にしてねぇよッ!」と言いながらリリアの頭を優しく撫でている。

 ミーナはリリアを抱き上げながらタナカに悪そうな顔で言う。


 「さてと……お宝でも探そうぜ?」


 お宝……?と訝しげに聞き返すタナカ。

 するとミーナはやれやれといった感じで口を開きだした。


 「こいつらは近隣の街から略奪しまくってたんだろ?ならその財宝がどこかにあるに決まってんじゃねーか」


 全くそんなこともわかんねーのか……と言いたげな顔でミーナはタナカを見つめる。

 返却義務があるのでは?とタナカが訪ねると……


 「盗られた物は私の物、私の物は私の物だ」

 

 と言うことだった。

 ……素晴らしい精神だとタナカは思う。

 『ゾンビーズ』時代で出会ったのなら迷うことなくスカウトする程の逸材だろう。

 

 そういうことなら……とタナカはアイテムストレージから『不死王の杭』を取り出した。千切れた左腕を拾い、腐食剤(ゾンビ用のポーション)で傷を治しながら白王の死体に近づいた。そして不死王の杭を突き刺す。


 グサッ


 黒いモヤが白王の死体を包むと同時に比較的死体の損傷が軽い公爵達の死体も黒いモヤに包まれていく。

 そして……

 

 「……ん?俺は死んだはずじゃ……?」


 黒いモヤが晴れると二つに割かれた白王が元通りに戻っていた。自分の手や体を見つめながら頭の上にはてなマークを浮かべている白王にタナカは話しかけた。


 「僕が生き返らせました……まあゾンビになってますけど……ハハッ」


 笑って誤魔化そうとするタナカ。白王は「そうか……」と呟いている。

 なんとなく気まずくなるタナカ。

 意を決したように口を開いた。


 「あのですね……近隣の街から略奪した財宝ってもらえません?」

 「…………」


 一瞬沈黙する白王。

 「そうか」と一言呟くとタナカの問いに答える。


 「構わん。俺はお前に負けた奪うのは勝者の権利だ。隠し場所まで案内しよう」


 話が分かるなこいつと思いニヤつくタナカ。

 そんなタナカを澄み切った目で白王は見つめながら口を開いた。


 「俺は敗北者だ。敗北者が勝者を差し置いて王とは名乗れん。勝者であるお前に頼みたい。俺に新しい名前をくれないか?」


 堂々と言い放つ白王。

 タナカは少し考えると思いついたように口を開いた。


 「……じゃあスズキで」


 そう告げると「ガオオオオオオッ」と白王改めスズキは嬉しそうに雄たけびをあげた。

 ゾンビ化した公爵達もスズキと喜びを分かち合うように雄たけびをあげる。

 そんな喜び様を見て胸が痛くなるタナカ。

 もう少し真面目に考えればよかったなと後悔する。

 後悔先に立たずとはまさにこのことだろう。

 気まずそうな顔をしているタナカにスズキは澄み切った瞳で言い放った。


 「これよりお前を主と定め、命をかけて使えようッ!」


 タナカの顔は更に気まずそうになった。


 ーー


 レリージア城跡―宝物庫の間―


 その後スズキはレリージア城跡の隠し部屋である宝物庫の間へとタナカ達一行を案内した。


 古ぼけた木製の扉に錆びついた金属錠が嵌められている。

 

 バキンッ


 その錠をスズキが叩き壊すとそこには部屋いっぱいに敷き詰められた金銀財宝の山脈がタナカ達を出迎えた。


 「「「オオッ!!」」」


 歓声をあげるタナカ達一行。

 それは見る者を感嘆させる財宝の数々だった。

 ――精巧な人物像が描かれている様々な国の金、銀、銅貨。

 碧い青玉(サファイヤ)で作られた神聖な天使像。

 蛋白石(オパール)で作られた一角馬(ユニコーン)の彫刻。

 血玉(ブラッドストーン)の瞳を持つ水晶でできた蛇の模型。

 菫青石(アイオライト)でできた頑強な小手。

 石英(クォーツ)でできた神々しい墓標……etc。


 息を吞む財宝の数々。

 その荘厳さにタナカ達一行は壊れた。

 ミーナは金貨の山へダイブしクロールを始める。

 リリアは「オ・カ・ネ!オ・カ・ネ!」と可愛い舞を披露する。

 タナカは両膝を着き天を仰ぎ見、その瞳から一滴の涙を流しながら「おぉ……神よ」と祈りを捧げ始める。


 そんなタナカ達一行に少々引きつつもスズキは頑張って口を開いた。


 「……主よ。大変言いにくいんだが、実は別動隊をオリタナへ派遣していてな。今頃オリタナは大惨事だぞ?」


 「「「えええええッ!?」」」


 タナカ達一行は奇行を取りやめ、驚愕の声を上げた。

 タナカはスズキに問いかける。


 「どうにかして止めらんないの?」

 

 スズキはトリュゴネス達の頂点だ。

 当然止められるだろうとタナカは頼む。

 するとスズキは申し訳なさそうに口を開いた。

  

 「悪いんだが俺達はテレパシー等通信手段を持っていない。基本は口頭伝達だ。俺が大規模の一団を編成して数体の公爵達に率いらせてオリタナへの攻撃指令を出した。その後に主達がやってきて俺は敗北したのだ」


 タナカは焦った。

 ここからオリタナまでは急いでも2日は掛かる。

 2日後に戻ったらオリタナが滅んでいましたということになりかねない……暫く考えるとタナカは名案を思い付いた。

 そして嫌らしい笑みでニヤリと嗤う。


 「僕に考えがある……」


 タナカは気持ちの悪い笑顔でそう告げオリタナへと急いで向かった。



ーー


 鍛冶と芸術の街オリタナーメインストリートー


 「トリュゴネス達よ静まれッ!!」

 

 メインストリートの一角にある小高い建物の屋根の上。

 そこには不気味な仮面を付けた男がいた。

 白き神々しい体毛を持つ一際立派なトリュゴネスの肩の上に腰掛けている。


 タナカ達が街へ着くと街のあちこちから火の手が上がり、門内には大量のトリュゴネス達が侵入し猛威を振るっていた。

 泣き叫ぶ街の住人達。

 あちこちから叫び声や泣き声が響き渡っており、オリタナは阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた。

 しかしオリタナが完全に敗北したわけではなく冒険者やオリタナ自警団を中心に何とか抵抗していた。

 

 (ベストタイミングだ!!)


 タナカこと仮面の男タナトスは仮面の下でいやらしく嗤う。

 

 タナカ達一行は馬車をスズキと公爵達に引っ張らせるという荒業で2日かかる道程を半日で移動することに成功した。

 公爵達は疲弊しきり、今はタナカのアイテムストレージの中で休ませている。


 オリタナに着いたタナカは素早く現状を確認すると、最も目立つと思われる街のメインストリートの小高い建物の屋根に上り、今に至るというわけだ。

 タナトスは泣き叫ぶ住人たちを見下ろすとニヤリと嗤い続きを話し出した。


 「トリュゴネス達よ今すぐに我が元へ集まれッ!!」


 その言葉に同調するようにスズキが「ガオオオオッ」と雄たけびを上げる。

 スズキは雄たけびでトリュゴネス達に指示を出せるようだ。

 トリュゴネス達が一斉にタナトスの元へ集まりだすと、タナトスは茶色のローブの両端を持ち上げバサリと広げた。

 そしてその中へと吸い込まれ消えていく。

 ――ローブの中でアイテムストレージを広げ回収しているだけだが。


 暫くその状態でいると、阿鼻叫喚は次第に収まっていった。

 トリュゴネス達を全て回収しきったのだろう。

 代わりに静寂が訪れる。


 (街を蹂躙するトリュゴネス達を鎮め、街の危機を救う……完璧だッ! これでタナトスは不死王ではなく英雄の称号を……)


 タナトスがそんなことを考えていると一人の幼い少年がタナトスに石を投げつけた。


 「お父さんを返せッ!」


 少年はタナトスを睨みながら叫ぶ。

 何故僕に石を投げるんだ……?と思ったタナトスであったが、父親を失い錯乱しているのだろうと考え、小高い建物からスタッと降りる。

 そして少年を慰める為、頭を撫でようと近づくと……


 「申し訳ありませんッ!! この子はまだ子供なんですッ!! 私が代わりに罰を受けますッ!! だからこの子は……この子だけは……どうかお許しをッ!」


 少年の母親だろうか。

 幼い我が子を守ろうと必死で少年をかばうように抱きしめ、泣きじゃくる。


 (なんなのこの状況……?)


 タナトスは疑問でいっぱいだった。

 なんで街を救った自分がこんなにも怯えられているのかと。


 タナトスが疑問で棒立ちになっていると、次々に罵声がタナトスへと浴びせられた。


 「トリュゴネス達をけしかけてこの街をめちゃくちゃにして……まだ俺達から奪おうってのかッ!!」


 「おかしいと思ったんだ! 公爵トリュゴネスにこんな大軍を率いる能力なんてないはずなのにッ……お前が黒幕だったんだなッ!」


 「この糞野郎がッ!! 殺したトリュゴネスがいきなりゾンビになって襲い掛かってきたのはてめえのせいだったのかッ!!」


 口々に罵りの言葉をタナトスに浴びせかける住人達。

 そして……


 「俺達の街を守れッ!! あの親子を救えッ!! 不死王の糞野郎からッ!!」


 冒険者の一人だろうか。

 屈強そうな男がそう叫ぶと、住人たちは奮起し、一斉にタナトスへと投石し始める。


 (ちょっ! やめッ! ええええええええ~)


 タナトスは心の中で絶叫をあげ、影移動(シャドウムーブ)でスズキと共に街から去っていくのであった。



 その晩、すすり泣くタナカをスズキが肩をポンポンしながら慰める姿があったとか……

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