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僕は不死王じゃない!!  作者: ラノベゾンビ
第2章
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臆病者の死闘

タナカ視点からスタートですよ

 「タナカッしっかりしてッ!」


 リリアが僕をの肩を揺らしながら泣きじゃくっている。

 僕は確か広間にいたはずだ……。

 白王を見て怖くて何も考えられなくなって……あれミーナは?

 僕はリリアに尋ねる。


 「何言ってるの!? 私達を逃がすために広間に残ったんだよッ」


 ミーナが……?

 僕達とはそんなに親しい間柄じゃない……なのに何で。

 僕が俯いていると広間の入り口に光の網が貼られた。

 これは光檻(レオインブレル)か……?

 僕が呆けているとリリアが僕の腕を引っ張る。

 

 「逃げるよタナカッ! 私はミーナ姉にタナカを頼まれたのッ! 絶対にタナカを死なせられないッ」


 リリアは僕にそう言い放つと腕を引っ張る力を強める。

 

 なんだろう……なんでそうしたのかわからない……。

 でも僕はここで逃げちゃいけない気がした。

 ここで逃げたら生前と一緒になる気がした。

 ――僕はリリアの腕を振り払った。


 「タナカッ?」


 リリアは顔に焦りと疑問が浮かんでいる。

 ……まあ僕もよくわからないけど。

 僕は自分の気持ちをリリアに告げた。


 「……逃げちゃいけない気がするんだ」


 リリアは僕の顔を覗き込んだ。

 僕の気持ちを確認するようにリリアは口を開く。


 「ミーナ姉を助けたいの?」


 リリアは死んじゃうかもしれないんだよ? と言いたげな瞳で僕を見つめる。

 僕はそんなリリアの瞳を見つめ返して、ゆっくり頷いた。

 震えが止まらないな……。

 助けたいなんて言っても体は正直だ……怖い。

 

 そんな僕をリリアは優し気な瞳で見つめると僕の顔を胸に抱えるように抱き寄せる。

 そして僕を安心させるような優しい声で囁いた。


 「私じゃ足手まといにになっちゃうけど、一緒にいることぐらいはできるから……私も行く」


 なんだろう。

 やっぱり怖い。

 でもリリアの甘い優しい香りに包まれていたら震えは止まった。

 

 ――ミーナを助けよう。

 僕は決意する。

 僕はアイテムストレージから漆黒の剣を引き抜いた。


ーー


 けたたましい砂ぼこりが収まり、タナカの姿を確認したミーナが苦しそうに呻いた。


 「なんで……もどって……きた……バ……カヤロ……」


 タナカはミーナの問いに答えず黙りこむ。

 そんなタナカを嘲るように白王が口を開いた。


 「ハッハハ……助かる命を投げだしに来たか腰抜け。抜けているのは知能もか?」


 そんな言葉を無視するようにタナカは深く息を吐く。

 フゥーと。

 息を吐き終わると、落ち着いたのか漆黒の剣を白王に向け構える。


 そんなタナカを煩わしく感じたのか白王はタナカの方へゆっくりと歩み寄る。

 バカな奴だと言いたげな瞳で余裕癪癪といった様子だ。

 慢心しきっている白王にタナカは鋭く踏み込み一閃を放った。


 ザシュッ


 静寂に何かが噴き出た音が響いた。

 宙を舞う白王の白くたくましい腕。

 タナカが慢心して歩み寄ってきた白王の左腕を切り裂いた。


 「ガッ!」



 痛みを堪えるように白王が呻く。

 白王は切り裂かれ地面に転がっている自分の腕を見つめると、凄まじい形相に変化する。

 自らが臆病者と罵っていた相手に手傷を負わされ己の矜持が傷ついたのだろう。

 タナカへと向き直ると獰猛な牙を見せつけるように咆哮を上げた。


 「ガアアアアアアアッツ!!」


 咆哮に一瞬ビクリとするタナカ。

 その隙を白王は見逃すことなく素早く距離を詰めナタを振るう。

 咄嗟に受け止めるタナカ。

 震えで一瞬遅れをとったのだろう、体制を崩す。

 死に体のタナカへと白王はナタを振り下ろした。


 ザシュッ


 「アアアアアッ!!」


 悲鳴を上げるタナカ。

 痛みはゾンビになったことで抑制されたとは言え激痛には耐え切れない。

 タナカの左腕は白王の紅いナタにより切断され宙に舞った。

 ベシャッ

 気持ちの悪い音が広間に響く。


 「ククク……同じだ」


 痛みに耐えるように呻きながら立つタナカに対し白王は嘲笑いながら言い放つ。

 お前程度ができることが俺にできないわけないだろうとでも言いたげな顔だ。

 白王の好戦的な瞳とタナカの恐怖に耐える弱々しい瞳が見つめ合う。

 ゆっくりと相手へお互いの獲物を向けあう二人。

 そして壮絶な切り合いが始まった。


 「すげえ……」

 

 ポツリとこぼすミーナ。

 二人の切り合いを見て彼女は思っていた……白王は本気の欠片程度も出していなかったんだと。

 歴戦の猛者であるミーナですら目で追うのがやっとな二人の切り合い。

 武に触れたことがある者なら誰しもが感嘆の息を漏らすだろう駆け引きの掛け合いだった。


 『アアアアアアアアッ!!』


 二人の裂帛な気合が重なり響く。

 二回三回と軽いなで斬りを放ち変則的なタイミングで本気の一太刀を入れていくタナカ。

 その変則的な一太刀を確実に見極め大振りになったところをカウンターを放つ白王。

 両者の技量の高さは剣聖と呼ばれた過去の偉人達ですら霞んでしまうだろう。


 ガキンッ!ガキンッ!


 二人の激しい剣戟が広間に響く。

 どれくらいの時間が経ったのだろう。

 決して長くはない時間だがタナカは徐々徐々に窮地に追い込まれていた。


 二人には決定的な違いがあった。

 それは『防御力』。


 いくら不死王の剣を装備しているとはいえ白王のLv74、それに加えて固有進化したことによる強靭な肉体も兼ね備えていた。

 対するタナカは『不死王のローブ』がない。

 白王に比べて圧倒的に脆い。

 なで斬りではかすり傷程度しかダメージを与えられないタナカに対し、白王のなで斬りはタナカに確実にダメージを与えていく。

 速度はタナカが上、技量もタナカが若干上だろう。

 しかしあまりにも防御力に圧倒的な差があった。

 時間が経てばたつほどタナカと白王のダメージの差は開いていく。


 白王はそんな状況をしっかりと理解していた。

 白王はニヤリと嗤い、切り札を切る。


 『紅棘(ロッホコロムナ)

 

 紅いナタに自らの傷口から滴る血を塗りながら白王は呟く。

 そして紅いナタを地面に突き刺した。

 二人を中心に半径5m程度の円周上に紅い棘の網が咲き乱れた。

 棘から真っ赤なバラが一斉に咲き出した。

 一見すると美しバラだろうそのバラに物々しい牙が生えた口が付いていなければ……


 『ギャハハハハハハハ』


 バラたちはいっせいに嗤い始めた。その口からは唾液が滴り落ちている。

 白王は見抜いていた、長期戦のデスマッチなら確実に自分が勝つと。

 白王は勝利を確信し口を開く。


 「このバラ園からは出られない……そいつらは棘に触れた物を容赦なく喰らう」


 ニイィと獰猛な笑みを浮かべタナカを嘲笑う白王。

 お前は詰みだ。そう言っているようだった。


 白王の言葉を聞き終わると辺りを見渡すタナカ。

 棘の檻のスキマから泣き叫びながら自分の心配をする少女が見えた。

 棘の檻のスキマから満身創痍になりながら自分を逃がしてくれた乱暴な女が見えた。

 そんな二人を見つめながらタナカは思った。

 自分が死んだらこの二人も殺されるのだろうと……。


 タナカは命を賭すことを選んだ。

 防御力は圧倒的に向こうが上。

 技量と速度はこちらが上。

 ならやることは一つだ。

 先を制す。

 相手の攻撃の起こりを捉えて、急所に致命の一撃を叩きこむ。

 狙うは頸動脈。

 その瞳に恐怖はもうない。

 澄み切った綺麗な瞳で白王を見つめる。

 タナカは漆黒の剣を白王へと向けた。


 白王はタナカの瞳を見つめた。

 命を賭ける選択をした者の瞳。

 今までの数えきれない戦いの中でその瞳を持った者と何度か戦ったことがあった。

 ……非礼を詫びよう。

 白王は心の中でそう呟く。

 そして紅いナタをタナカへと向けた。


 静寂が二人を包む……

 白王は紅いナタを掴む自分の腕に力を込める。

 そして……


 黒い一閃と紅い一閃がすれ違った


 ドサッ


 静寂に支配された空間に何かが倒れる音が響き渡った。


 「タナカッ!!」

 「ゾンビッ!!」


 バラ園が解除され二人の目に飛び込んできたものは

 ――片膝を着き、地面に漆黒の剣を突き刺すタナカと首筋から袈裟切りにされ二つに分かれた白王だった。


 


 


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