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僕は不死王じゃない!!  作者: ラノベゾンビ
第1章
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幕間 エミルの日記①

〇月×日 晴れ


 今日から日記をつけることにしました。

 何でと言われましても……私は将来大魔導士になってしまうから……としか答えられませんね。


 大魔導士になったら当然、英雄譚(サーガ)や伝記というものが出てしまいますよね?

 私がもし仮に書かなかったとしても吟遊詩人達がこぞって詩にしてしまうでしょう。

 私の半生を……。


 深淵なる魔力を持って生まれてしまった宿命とでもいうんでしょうかね。


 そういう時に日記をつけておけば、より鮮明により美しく私の英雄譚を書けるでしょうから。


 タナカがブログなる物の為に日記をつけていると言っていたので私もつけてみようかと……まあ、そんな感じですね。


 そのタナカなんですが、トイレに行ったきり帰ってきません……。

 もう夜です。何時間トイレに籠っているんでしょうか……。


 ミカリーナも心配しています。

 「タナカ君がいないと夕飯が自腹になっちゃう…エヘヘ」なんて言っていたので相当心配しているのでしょう。


 可哀そうなミカリーナ……。

 全くタナカの癖に私達に心配をさせるなんて100年早いですね。

 仕方ありません。


 今日は自腹で夕飯を取って眠ることにしましょう……。


ーー

〇月×日 雲り


 1日経ってもタナカが戻ってきません。

 一応街中のトイレというトイレを探したのですが……。

 途中からミカリーナが「こんなに心配させた罰に水を掛けてあげましょう」と言い出し、使用中のトイレというトイレの上から水を掛けていたら、モッズが入っていました。


 街中を死ぬほど走って逃げました。

 「てめえら殺して肥溜めにぶち込んでやるッ」と叫んでいたので相当トイレに愛着があるのでしょう……。

 困った男です。


 全くタナカのせいで飛んだひどい目に遭いました。

 戻ってきたらただじゃ置きません。

 我が深淵なる魔法で頭皮に終焉を顕現させてあげることにしましょう。


ーー

〇月×日 晴れ時々曇り


 今日はミカリーナと昼から大広場に先日の事件の被害者へと『花送り』に行ってきました。


 『花送り』とは死者を弔う儀式です。

 死者が死んだ場所に花を置き黙祷を捧げる儀式です。


 これをやらないと死者がその場所を離れられずに悪霊となってしまうという言い伝えがあるため、必ず死んだ場所で行います。


 勿論その後はちゃんとお墓に死体は埋葬するのですけどね。


『花送り』の最中に人神教信者は「不死王は血も涙もない鬼畜だッ!」と口々に叫んでいたのですが、本当にそうなのでしょうか……。


 私にはそうは思えません。

 あの大広場に集まっていた大半の観衆は人族でした。

 もし観衆が魔族だったら彼は英雄視されていたはずです。


 私は魔族です。

 正直人神教は過激だと思います。

 何もあんなに幼いサキュバスを処刑しなくても……。


 ですが流石にやり過ぎだと思ってしまった自分もいます。

 あんなに大量の人族を殺しつくすなんて……。


 でもなぜ、あんなに簡単に人族を殺せる方が私とミカリーナを助けたのでしょうか。

 ……わかりません。


 あの方に対して慕う気持ちがありますが……『花送り』の最中に母親の死を悼む小さな子供を見てしまってなんだかセンチな気分になってしまいました……。


 こんな時タナカがいてくれたら少しは気もまぎれるのですが……


 アワワワワワワ……今のは無しです……その仲間としてって意味ですよ勿論……。


 私はあの仮面の方を慕っているのですから、ちょっと剣が上手いだけで図に乗っているあの男を好きになるなんてありえません!


 まあこの前の歓迎会の時に粗相をしてしまった私をきずかって、部屋まで抱っこしてくれたり……歌劇の帰り道に髪飾りを私が見てたら買ってくれたり……まあちょっとは気が利くところもありますよね。

 ちょっとだけですが……


 あーもうッ!! 寝ます!! おやすみなさい。


ーー

〇月×日 雨


 今日は雨が降っているので部屋で一日自堕落に過ごすことにしました。

 幸いヨルムンガンド討伐の報酬がまだたくさん残っていますしね……。


 部屋でじっとしていると考えてしまいますね……私達を救ってくださった方が何であんなことをしてしまったのか…と。


 私は鬼熊と遭遇した時、肩を引き裂かれて意識が朦朧としていたのでうっすらとしか覚えていませんが、あの仮面の方が姿を現した時すごく安心したことを覚えています。

 ミカリーナやモッズ達は怖がっていましたが、なんだかやれやれだぜっといった感じで登場して、悪い感じは私はしませんでした。


 2回目に命を救われた時はつい見とれてしまいましたね……。

 なんだか戦っているというより舞を見ているような気さえしていました。

 そういえばあの時彼は言っていましたね……「君達に期待している…」と。


 期待……なんだか照れ臭いですね……エヘヘ。

 ちょっとミカリーナみたいになってしまいましたが……期待。


 ……もしかしてあの方は私達に何かをして欲しいということでしょうか?

 そういえば処刑台から立ち去る時にいっていましたね「我が深淵なる魔力で世界に終焉を……」と。

 期待、そして深淵なる魔力……世界に終焉……まさか!


 あの方の深淵なる魔力が暴走して、自身で制御できなくなっている。

 だから処刑台であんな様な暴挙に出てしまった……あんなに優しい方なのに。

 だから暴走している自分を止めて欲しい。

 君達の様な才能ある者にしかできないことだ……ということでしょうか。


 アワワワワワワワワ……そうです。

 きっとそうに違いありません!

 私も時々自身の深淵なる魔力が暴走して右腕が疼いてしまうことがありますから……きっと彼程の深淵なる魔力の持ち主ならその暴走は桁違いなものとなるでしょう。

 ――君達にしか止められない。だからこその「期待している」。つじつまが合います!

 これは……今すぐミカリーナに伝えなくては!!



 ……伝えてきました!

 ミカリーナも「間違いないですね!! 今すぐ準備しないとッ!!」と言い、旅支度を始めました。

 その通りです!! 今すぐ準備しなければ!! 

 今の私達では彼を止めることができませんが、私達には彼に匹敵する程の才能があると彼自身が言っていました!!

 彼を止められるぐらい強くならねば……。

 よし! こうしちゃいられません強くなる為に旅をしましょう!! すぐに旅支度を整えねば!


ーー

〇月×日 快晴


 今日はきれいな青空です。

 絶好の旅日和ですね。

 これから私達の英雄譚になってしまうような大冒険が始まってしまうのでしょう。

 フフフ右腕が疼きますね……。


 何でも、ここから遥か西。

 エルフの里の国境付近にある大森林の近くに魔術師の聖地なる都市があるようで引退した伝説の魔法使いやら、攻撃呪文から回復呪文まで使いこなす賢者なる者がいる都市があると吟遊詩人が歌っていることを聞いたことがあります。

 一先ずはそこに行って修行を積みましょう。

 大丈夫です。私達には何といっても才能が有りますからね。


 そういえばこのクリスタルティアに来て約三年程でしょうか。

 長いようで短い時間でしたね。感慨深いものがあります。

 私達が旅に出ることをどこからか聞きつけたのかモッズとヘッズが見送りに来てくれました。

 「とっとと死んじまえ。二度と戻ってくんなよ」なんて言っていましたが。

 これが噂に聞く”ツンデレ”というやつでしょうか……気持ち悪いですね。


 あれから結局タナカは戻って来ませんでした。

 どこで何をしているのやら……。

 ですが大丈夫です。私達も旅に出るのですから。

 私達の旅の目的は二つ。

 一つは強くなってあの方の暴走を食い止めること。

 そしてもう一つはタナカを見つけ出してまたこの街に戻ってくることです。


 ですので「さようなら」は言いません。

 私達はまたこの街に戻ってくるのですから。

 ――なのでこの言葉をいいましょう。




「いってきます!」


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