4.聖戦とシヴァルとハプニング
みたところバルンはシヴァルの事を忘れ去っているらしかった。
怒るなどを通り越して最早呆れてしまった。
この男の能天気ぶりには嫌という程に被害に遭っているからだ。
しかもそのバルンが小さい女の子を連れているものだから、遂にお前は、とも思ってしまった。
しかしその女の子が自分の背丈よりも大きい鎌を持っていることから久しぶりの防衛科への新入りだとすぐに考えついた。そのため勧誘科であるバルンが一緒に居るのも自然なことで、最悪の結果でなかったことに安堵する。
それほどにバルンは奇妙で関わりずらい存在だった。
シヴァルがバルンたちと他愛もない話をしている最中だった。
大きな爆発音がしたのは。
シヴァルは爆発音がある日を境にキライになっていた。
そうあの日から...。
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はじめてシヴァルが死神界に来たとき、孤独でいることへの恐怖心から常に怯えて過ごしてきた。
そんなシヴァルを気遣って声を掛けてくれる防衛科のみんなにも心を開くことはできなかった。
そんな時唯一彼の心を満たしたものがあった。それが『神に魅入られた人間』.......との戦いだった。
自らの体を血で染め上げる。
それこそがシヴァルにとって生きる道であり自らの肯定であった。
そしてシヴァルはたくさんの戦果を挙げていき、気がつくと他の誰よりも強い男。
『最強の死神』
そう呼ばれた。
同じような日々はもう消えてなくなり、毎日が危険で絶えず変化をし始めた。
いや、彼の時間が動き始めたのだった。
そして『始まりの聖戦』まで時は流れる。
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『始まりの聖戦』は『神に魅入られた人間』と死神達とで神の在り方について争った出来事だった。
きっかけは人間界に神と名乗る者が現れ、一部の人間達に神の力を与え始めた事件だった。
死神界でTOPの権力を持つ死神の集まりである『賢者の会』はこの事態を早急に終局するべく防衛科をフル稼働して叩き潰そうとした................................が、その結果は...............................................。
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シヴァルは叫んでいる。
目の前には赤い水溜りが。
シヴァルは手を赤く染めている。
手は震えてただ叫ぶだけ。
腕の中には腹部を赤く染めた憧れの男が。
最早息もしていない。
視界は歪んでいる。
これほどまでに自らの弱さを呪ったことはない。
これほど消滅の鎌を欲しいと願ったことはない。
あの忌むべき死神で自分があったらと思ったことはない。
これほど世界を呪ったことはない。
これほど自分の赤目を恨んだことはない。
眼の前の男を殺したい。
汗ひとつかかずに気味の悪い笑みを浮かべるあの男を。
殺したい。
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね...........................................................................死ねよ。
異形と呼ばれた翼が....................................放たれた。
絶えず絶えず絶えず絶えず絶えず絶えず............!!!!!!!
黒い霧が形を作り...鋭い針のような.........尻尾のような............。
『それ』を思い切り振り上げる.....................。
シヴァルの体は既に死んだも同然。
それでも戦う。
あいつを殺したい。
神を殺したい。
運命を殺したい。
くだらない世界を殺したい。
自分を殺したい。
引きちぎりたい。
ぐちゃぐちゃにしてしまいたい。
あの光る両目を抉り出したい...。
そうだ、そうしたい。
「殺したい」
人間界に舞い散る雪があなたへの弔いです。
最早、理性などない。
男が剣を抜く。
刹那、光と闇が静寂の街を塗り替えた。
轟音。
そんなもんじゃない。
文字どうり虚無だ。
虚ろで痛みすら感じない、完全なる無。
あいつは死んだだろうか?
もういい、やりきった。
拾った二個目の命もここまでだ。
最後の最後まで笑えなかった。
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人間万事塞翁が馬。
どんな不幸も幸運に、どんな幸運も不運になるという意味だっけか。
俺が知っている限りでは、そんな感じだっけか。
死神にとってあまりいい色でない白の天井を見上げる。
瞬間的に病院だ。と答えを出す。
独特な匂いがシヴァルは嫌いだったからだ。
思考が戻ってきて、さっきまで考えなかった想いが記憶の器を溢れ出してくる。
絶望...........................だった。
俺は生きてしまった。
それは、周りからしたらこれ以上にない幸運であり。
俺にとって、またと無い不運なのだ。
一人だった俺の話を聞いてくれた......あの団長はもういない。
自分だけ生き残った。
何故自分は死ななかった。
今までそういう風に言う奴が嫌いだった。
自分だけ不幸なのか?と。
でも違った。そんなことは...関係ない。
悲しいものは悲しい。
そしてそれをぶつける奴がいない。
そんなもどかしさを理解した。
そも結果が......................................................................。
「なんで俺が生き残った....?俺が何をした.................?」
という悲痛に満ちる呟きだった。
あいつは今どこにいる?
俺が生きているなら、あいつも生きているはずだ...。
早く見つけなきゃ...!!!
俺があいつを殺す。
誰かにやってもらうんじゃダメだ!!!
他の誰でもない!!俺が、俺が...俺が!!!!!!!!!
シヴァルの激情は看護婦や医者がやってきて、眠らされた所で落ち着いた。
シヴァルの『あいつ』を求めた復讐劇が幕をきった。
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それからシヴァルは無我夢中で日々を生きた。
いつしか激情は健在はしているが表に出なくなっていた。
今を...自分を団長と呼んでくれる仲間たちとの毎日を『楽しい』...。
そう思い始めていた。
あの日からどれくらいの時間が流れただろうか?
あれからシヴァルはあいつに会えずにいた。
いや、会わないことにホッとしている自分もいたが...。
その時、シヴァルは『異形』の名で呼べれておらず『赤眼』という名で呼ばれていた。
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死神は死神契約をすると『役職』『名前』の他に『武器』を渡される。
死神契約後にハクが鎌を持っていたがそれもそうだ。
一般には『鎌』や『剣』、その他に『弓矢』『大槌』...など沢山ある。
そしてもう一つ。
さっきまでのは死神によって違っていたが、『これ』は違う。
『死神の翼』
これは、死神の戦闘において最も大切な武器であり、盾でもある。
これには個体差も出てくるが。
ほぼ全員の死神が持っている。
詳しい話はまた今度にしよう。
シヴァルは契約時に武器はもらえなかった。
いや、正直に言うと...「もらっていたが、物ではなかった」、故にシヴァルはそれに気付くまで翼に頼りきるしかなかった。
またこれもあの日。あの時。団長が死んだ時。
その時に初めてシヴァルは自分の与えられた武器に気がついた。
『赤眼』
それは前例がなく特殊な武器?だったがシヴァルは徐々に使いこなしていった。
それの力は言えば『ワープ』であったり『神の力とのシンクロ』だったり...神の力を持つ人間キラーだった。その中で一つ唯一ありがたいと思う力であったのが。
『翼の覚醒』
であった。
それのおかげでシヴァルの翼は通常の死神の十倍以上にも膨れ上がった。
そして『異形』と呼ばれるようになった。
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爆発の後、シヴァルはこれは今まで何も巡ってこなかったあいつに会うチャンスなのでは、と思いついた。
バルンや少女達の安全確認を形だけ行い、シヴァルの心は完全に激情が表に出ていた。
二回目の爆発音が鳴り響いた瞬間...............赤眼を発動させた。
「あぁっ!!」
とバルンの声がする。
赤眼の探知能力でバルンが何者かに捕まったことはわかっていた。
しかし、少なからず接点のあったバルンだ......助けなくてはいけないだろう。
それに死神界に殴り込んで来る奴なんて神の力を持った人間以外にありえない。
そのことから、あいつに会えるのだと結論を出し自分にとってのメリットを計算した。
メリットが勝った。
考えるよりも先にバルンを担ぎ逃げようとする何者かが入り込んだワープと赤眼を『シンクロ』させる。
向こうに飛ぶ準備はできた。
シヴァルは、煙の中パニックになっている少女の手を取った。
これに変な意味は無い。
確かに向こうに行くのは危険だが、今までの奴らのやり口を考慮するとここで待たせる方が危険。という判断のもとでのシヴァルの優しさ故の行為だ。決して下心などない。断言する。
不安そうな少女の手をつないだまま赤眼を使う。
刹那、体が浮遊する感覚に襲われる。
が、すぐに地面に足が着く。
最近仕事の減少で全く来れてなかった人間界。
眼を開くと.................................................。
工事中のビルの下。
たくさんの死神が。
縛られて、放置されている。
新しくバルンを地面に置いた...。
シヴァルの知らない顔の人間の範疇をでない限りの大男が満面の狂人の様な笑みで..................。
二人を迎えた。
特殊語多くてすいません...........。




