第三話:星降る夜の降り立ち
ご覧いただきありがとうございます!第3話になります。
ついに異世界『星標の地』へと降り立った葵と航平。
トンネルを抜けた先に広がる美しい星空と、案内人から語られるこの世界の真実。
二人きりで踏み出す異世界での最初の一歩を、ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです!
目を開けると、そこには静寂が広がっていた。
ガタガタというコースターの振動も、遊園地の賑わいも消え去っている。
足元にあったはずの車両はなく、私たちはいつの間にか柔らかい草の上に立っていた。
「……葵、大丈夫?」
「うん……怪我はないよ。航平は?」
「俺も平気だ。でも、本当に……来ちゃったな」
顔を見合わせ、繋いだ手の温もりを確かめ合う。
見上げれば、息をのむような夜空。
幾千、幾万の星々が、まるで今にも降り注いでくるかのように眩しく輝いている。足元に広がるのは、淡く青い光を放つ草原と、その中央を緩やかに流れる透明な川。
空気はひんやりと心地よく、甘い花の香りが胸を満たした。
「よくぞ、決断されました」
穏やかな声に振り向くと、そこにはあの案内人が立っていた。
間近で見ても、その姿は異様だった。
紺青色の古い羽織のような衣を纏い、顔のあるべき場所は影に覆われて判別できない。けれど、不思議と恐怖感はなかった。
「ここは……どこなんですか?」
航平が葵をかばうように一歩前へ出て尋ねる。
案内人は静かに首を振った。
「ここは『星標の地』。異世界と貴方方の世界を繋ぐ、狭間の領域です。おふたりは自らの意志で、日常を捨ててこの世界の扉を開けました」
案内人は細く白い指先で、川の上流を指し示す。
その先には、星明かりに照らされた美しい街の灯りが、遠く揺れていた。
「あの街を目指しなさい。あそこには、貴方方と同じように『向こう側』から渡ってきた者たちも暮らしています。ただし——」
案内人の声が、ほんの少しだけ厳しさを帯びる。
「この世界には、あの街の外に『夜霧』と呼ばれる危険な魔物が棲んでいます。おふたりが手を取り合い、絆を絶やさない限り、道は拓けるでしょう」
「絆、ですか……」
私が呟くと、案内人は小さく頷き、すっと姿を薄くしていった。
「おふたりの旅に、星の導きがあらんことを」
風が吹き抜け、案内人の姿は夜の光の中に溶けて消えた。
あとに残されたのは、満天の星空と、見知らぬ世界にぽつんと取り残された私たちふたりだけだった。
「……行こうか、葵」
「うん。どこへ行っても、ふたり一緒なら大丈夫だよね」
不安がないと言えば嘘になる。
けれど、握りしめた航平の手からは、確かな熱が伝わっていた。
私たちは遠くに見える街の明かりを目指し、新しい世界への第一歩を踏み出した。
第3話までお読みいただき、本当にありがとうございました!
ついに異世界へ降り立ち、二人だけの冒険がスタートしました。
案内人が語った「同じように渡ってきた者たち」や「夜霧」の存在……
見知らぬ街で葵と航平を待ち受ける出会いとは?




