60/68
マルちゃん
マルちゃんはパンダのような何かである。
すごくまるい。
すごくもふもふしている。
マルちゃんにだっこされるとすべての動物は幸せになる。
それだけにだっこを解かれるとすごく不安になる。
そしてそうやってまたマルちゃんを求めてさまようのである。
「だから言っただろう」
わんぱくは厳しい顔で言った。
「マルちゃんなんかに癒やしを求めるのは危険だ! 間違っている! 癒やしを求めるなら僕の経営するゼロ磁場を活用した『お湯なし温泉』へどうぞってな! 入浴料たったの800円だぞ!」
しかしマルちゃんに癒やしを求める者は後を絶たなかった。
こむも遂に、その毒牙にかかることになった。
「抱いてー」
「いいですよ。うふふふふっ」
マルちゃんのもふもふにこむは包まれた。
なんという安らぎ。
何も考えなくてもよかった。
とろけた。
何もなくなっていった。
もう離さない。
離したくない。
でもマルちゃんはひとりしかいなかった。
考えるまでもなかった。
こむはマルちゃんと結婚した。




