ちびにゃんとチビちゃん
東のほうから艶のある毛並みの黒猫のちびにゃんが歩いて来た。
西のほうからはバサバサの黒いドブネズミのチビちゃんが歩いて来た。
同じ名前をもつ違う動物同士の二匹は森の真ん中でばったり出会うとチビちゃんはちびにゃんが大きすぎて気づかずに足の間を通り過ぎて行こうとした。
ちびにゃんはすぐにチビちゃんに気がつくと同時に手を出していた。
ばしっ。
「キー! びっくりした!」
チビちゃんは素早くちびにゃんの手を避けながら言った。
「ごきげんよう。こんにちは。失礼。私の手が勝手に動いてしまったようね」
ちびにゃんはお上品に口に手を当てて言った。
「あらちびにゃんじゃないの。相変わらず美人な猫さんね。どう? さかってる?」
「ご心配なく。あたしはいつでもさかってる。わあう。あうー。あなたはどう? 増やしてる? ネズミ算式に」
「あんたの猫語はわかんないけど増やしてるわよ。それにあんたがいいやつだってことだけはわかるわ。キー」
「うっふぅ。あなたのネズミ語はわからないけどおめでとう。それにあなたが敵じゃないってことはわかってしまうの。あうー」
「キーッ」
「あうーわー」
同じ名前をもつ違う動物同士の二匹は握手をするとちびにゃんはそのままチビちゃんの首の後ろを噛んでぶらんとぶら下げた。
傍から見ればそんなことを繰り返す二匹は喧嘩をしているか食物連鎖をしているかにしか見えない。
しかし同じ名前をもつ違う動物同士の彼女ら二匹にしかわからないものがその間にはあった。あるのだ。確かにあった。
その証拠にちびにゃんは少しチビちゃんを噛んでみた。
じゅわっと熱い何かが染み込んで来た。
「あら。美味しいわ」




