表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コムチャン森の住人たち  作者: ぱめ
4/68

いけさん

 パイナップルが空を飛んで来た。


「おお! これは珍しい」


 コムチャン森の中にある海へ釣糸を垂れていたいけさんは、思わず声を上げた。


「わくわくする! こんなにわくわくすることは滅多にないぞ!」


 タバコをくわえた口をモゴモゴ動かして、誰も聞いていないのに大声を上げる。


「来い! ここまで飛んで来い!」


 しかしパイナップルは飛ぶのに飽きたというように失速し、海に落ちてしまった。

 どぶしゅぁあん! と大きな音がし、少しだけ津波が押し寄せた。


「飽きたのか……?」

 いけさんはびしょ濡れになりながら固まった。

「つまらんパイナップルだ」


 くわえタバコはなんとか守った。

 咄嗟に口の中に入れて。

 海水にも唾液にも見事に濡らさず、渇ききったタバコをまたニュインと出す。

 34年間ずっとくわえているタバコだ。濡らすわけにも、火を点けるわけにもいかない。


 12月24日が2週間後に迫っている。

 その日はきっと忙しい。

 いけさんの2020回目の誕生日と24回目の誕生日が同時にやって来るのだ。


「釣れますか?」


 唐突に後ろから声をかけられ、いけさんは振り向いた。こむが立っていた。


「釣れるわけがないだろう」

 いけさんは、くわえタバコを動かして言った。

「ここは森の中だぜ? 海なんかどこにある?」


「そこに」と言って、こむは海を指差した。


「ハッハッハーッ! こむくん、てめえにはこいつが海に見えるのかよ?」

 いけさんは洋画の吹き替え語で言った。


「海でひょ?」


「うん。海だな」


 プテラノドンが空を飛んでやって来た。


「そんなの当たり前じゃないか」

「珍しくないよ」


 二人にそう批判され、プテラノドンは海に落ちて行った。


 平和な日々が続いていた。


「ところで何を釣ろうとしているの?」と、こむが聞いた。


「ハハハこむくん、これが釣りをしているように見えるのか?」

 いけさんはアーノルド・シュワルツェネッガーの吹き替えの声で言った。


 釣糸を引き上げると、いけさんはその糸の先にあるものを見せながら、言った。

「おれは釣りをしていたんじゃない。妻の水死体を作っていたのさ」


 こむは笑った。

「なんだー、あはは」


 平和な日々は壊れた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ