おまわりさん
「ぴんくしょん!」
おまわりさんがくしゃみをした。
「よっこいしょういち!」と、たまたま通りかかった茂吉さんが合いの手を入れた。
「ぴ……。ぴ……」
おまわりさんは痙攣したように鼻の穴と口をおおきく開ける。
「ぴんくしょん!」
ははは、と笑いながら虹色の蝶々が二羽、ふふふ、と並んで通っていった。
「こりは花粉症だじょ」
おまわりさんは鼻をこすりながら、空気を見つめた。
「けしからん花粉が目に見えない細かさで飛んでやがりゅ……」
おまわりさんは拳銃を抜いた。
「ぷりょ!」と言いながら一発撃った。
銃弾は正確に花粉を狙っていた。しかし花粉はピストルでは殺せないものだった。
ツキノワグマの肩に命中した。
ツキノワグマは不機嫌そうな声を出した。
「つきのわぐま」と、ツキノワグマは言った。
「ごめんなさい」と、おまわりさんは頭を下げた。
「つきのわぐま?」と、ツキノワグマは睨む。
「ごめんなさい」と、おまわりさんは土下座した。
「つきのわぐま!」と、ツキノワグマが拳を振り上げた。
「ばぶー」と、おまわりさんはお腹を見せて地面に転がった。
そのかわいさに、ツキノワグマは帰って行った。
その頃、ゼロ磁場を利用したお湯なし温泉では、温泉の空気に癒されながら、動物たちがおまわりさんの噂をしていた。
「あの暴れん坊を好きにさせておいていいのか?」と、猿が言った。
「猿語わからん」と、キツネが言った。
「キツネ語わからん」と、ヘビか言った。
「ぼくのこと見てよ、ねえ」と、かぶとむしが言った。「ねえねえ、ぼくのこと」




