いけさんの謝罪
「許してくれ」
いけさんは腐葉土になすりつける勢いで頭を下げた。
「俺はお前を騙していた」
「ニャー?」
生後1ヶ月の子猫のとらたんは意味がわからず首を傾げた。
「俺は本当はお前の実の父親じゃない」
いけさんは涙に濡れた顔を上げると、タバコをくわえたまま謝った。
「お前は橋の下から拾って来たんだ」
「ニャー?」
とらたんは意味がわからず首を傾げた。
「それだけじゃない。俺はお前を育てて食うつもりだったんだ」
いけさんは愚かな自分の頭をポカポカ殴った。
「お前を丸々太らせてからネコカツにしてキャベツと一緒に食うつもりだったんだよ!」
「ンンー?」
とらたんは意味がわからず首を傾げた。
「でも俺達は親子でないどころか違う動物なんだ。実はお前は猫で、俺はハムスターだ!」
いけさんは神に謝罪するように手を組んで天を仰いだ。
「本当はお前が食う側で、父さんは食われる側だったんだよ!」
いけさんは地面に突っ伏して泣き始めた。
「……ニャッ?」
とらたんは何かに気づいたようにそう言うと、いけさんに近づいた。
「許してくれるかい? こんな父さんを……」
「ウニャニャニャニャーッ!」
とらたんは飛びかかると、いけさんが置いていた釣竿を引いた。
釣糸には魚がかかっていた。
それを針から外し、咥えると、とらたんはどこかへと帰って行った。
「そうだ。1人で歩いて行くんだ、これからは」
いけさんは尻尾をピンと立てたとらたんの後ろ姿を見送ると、言った。
そしてその魚を今夜の晩ごはんにしようと考えていたことを思い出した。
「あっ。どっ、泥棒!」




